予想していなかった事態を目の前に、レイスの身体を懸命に調べるチョッパーをただ見つめることしか出来ない。

「チョッパー、その人・・・どうしたの・・・？」

恐る恐る訊くナミの声は、震えている。

「病気だったんだよ・・・それも、かなり重い・・・」

チョッパーは、少し見ただけでその身体の状態をすぐに理解した。
まさか、ここまで来て自分の身体の状態を知らないなんてことはあり得ない。
ルフィに殴られ、サンジの足技を受けても、レイスは抵抗する様子を一切見せなかった。
そうなれば、たどり着く答えはことはひとつしかない。

「もう身体が動かなかったんだ・・・それを知ってておれ達と戦ったんだよ・・・！！勝てるわけないのに！！」

これだけ弱り切った身体では、立っていることさえ難しかったはずだ。
抵抗しなかったのではない、出来なかったのだ。
限界を迎えた身体は、自由に動くことを許さなかった。

どんな理由であっても、このような形で最期を迎えることになってしまったことに対しては、いくら敵とはいえども納得がいかない。
これでは、あまりにも浮かばれない。
最悪の事態を目の当たりにしたことで、多少なりとも動揺を隠せなくなった一味の士気は明らかに落ちてしまった。

「でも、これではっきりしたわ。今回の事件の本当の黒幕は彼ではないということが」


思い返せば、なまえが海へ出ることになったのも、海軍が彼女を狙っていたのがすべての始まりだった。
その海軍の中でも、不可思議な事件が起こっていた。
そしてガープが長年追い続けた、ある海賊の存在。
記憶から消すことが出来なかった、天使の模様。

それが、すべて繋がっているのだとしたら。


「・・・行こう」


“あいつだけは、何をするかわからん！！”

家族であるルフィでさえ、祖父のあんな表情は記憶になかった。
それほどまでの存在であることを、出会う前からすでに物語っているのだ。

「なまえを連れ戻すんだ、・・・絶対に」

これ以上、相手に好き勝手を許すわけにはいかない。
上へと続く階段は静かに、確実に、ルフィたちの来訪を待っていた。
本当の、黒幕が。