新たに到着した島は、人気のリゾート地だった。
たくさんの観光客でにぎわい、プールに入ったり、ショーレストランで食事を楽しんだり、バーでゆっくりお酒を楽しんだり、思い思いに楽しんでいる。

「なまえ！！これ美味いぞ！！」

大きな声で叫びながら、ルフィがはなまえに屋台で買ってきた串焼きを差し出す。
一瞬戸惑ったなまえの姿を見て、彼女の今の状況を分かっているのかとサンジとナミが怒るが、ルフィは悪びれる様子もなく、いつもの調子で 食ってみないとわからないだろ？と答えた。
確かに、ルフィの言っていることは間違いではない。
試しに食べてみて、ダメなら仕方がない。
なまえは少し覚悟を決めて、控えめに串焼きを口に運んだ。

「美味しい・・・」

何の変わりもない、普通に美味しい串焼きだ。
無理しなくてもいいんだぞ、とチョッパーが心配そうに声を掛けるが、別に気を遣って言っているわけではなかった。
ゆっくり食べ進めるなまえの姿に、少しずつ回復の兆しを見た仲間たちは安堵の表情を見せた。

「ママ、たぬきがしゃべってるよ！」

チョッパーとなまえのやり取りを見ていた小さな女の子が、大きな声で母親に告げる。

たぬきじゃない！といつものように否定するが、女の子はよほどチョッパーが人間の言葉を話すのが面白いのか、喜んでいる。
わいわいとにぎやかな一味に近付く人影があった。

「相変わらずだな、ルフィ」

その声に思わずルフィが振り向くと、オレンジ色のテンガロンハットから、黒髪と笑顔が見えた。

「え、・・・エース！？」

それはルフィが慕う兄、エースだった。

こんなところで会えるなんて と驚くルフィに、エースは元気そうで何よりだと笑った。
そして一味には、いつも弟が迷惑かけてすまねえな、と頭を下げる。
ルフィにはまったくといっていいほど備わっていない礼儀正しさと常識に改めて驚かされるばかりだ。

「あれ、お前は・・・」

そんなエースが、なまえの姿を見て動きを止めた。

「あ、そっか。エースは知らないんだよな」

紹介するよ と言ったルフィの言葉を遮るように、もしかして、と言葉を紡ぐ。

「なまえか？」

「エース？」

お互いに顔を見合わせて驚くふたりに、知り合いなのか？とゾロがと訊ねると、ふたりは大きく頷いた。

昔、ジュエル島が海賊に襲われたことがあった。
その時に応戦し、島を守ったのは白ひげ海賊団だったのだ。
ルフィの船に乗ってたのか！と重ねて驚くエースに、なまえは笑って頷いた。

「白ひげのおじさまやマルコさんたちはお元気？」

「ああ、きっとオヤジも驚くぜ」

船に戻ったら自慢しないとな、と笑ったエースに一緒に宴をやろうとルフィは誘うが、彼は意外にも弟の申し出を断った。
それに納得がいかなかったのか、何でだよ、とルフィは口を尖らせて子供のように駄々をこねるが、彼は白ひげからの指示でこの島に調査に来たらしい。
すぐに次の島に向かわなければならないのだという。

「また近いうちに会おうぜ、ルフィ」

約束だぞ！と叫んだ弟に手を振って、エースはストライカーへと飛び乗った。