ボリボリとおかきを食べる音と茶を啜る音が、静かな部屋に響く。

かつて海軍を率いた強き実力者たちも、歳をとった。
その白髪が、駆け抜けた時代の積み重ねと共に過ぎた年月を表していた。
若い人材にその座を譲り、新しい時代を見届ける存在となった。
そんな彼らは、昔のことを知る希少な存在でもある。

「“あの件”・・・本当なのか、ガープ」

言葉少なに訊ねても通じるのは、やはり長年 戦場を共にしたからこそなのだろう。

「上は隠しておるが、どうも本当らしい」

大変なことになるぞ、と言って、また茶を啜った。

「覚えているか。“あの日”の事を・・・」

遠い昔の出来事のはずなのに、昨日のことのように思い出される。


とある事件。
前線で戦ったセンゴクとガープ率いる海兵に告げられた言葉。

子供の言うことだと多くの海兵たちは笑い、本気にしていなかったが、センゴクとガープの記憶には深く刻まれていた。

数々の修羅場を潜り抜けてきたからこそ、解る。


ーあの眼は、本気だ。


あれから30年の時が過ぎていた。
センゴクとガープはあらゆる手段で調べを尽くしたが、何一つ情報が手に入らなかった。
深まる謎と、後味の悪さだけが残ったこの事件。
知っているからこそ、どうしても気がかりだった。



力がすべての、この時代。
強くなりたい、力が欲しい。
そう願うものは数知れず。

その力を手に入れた時、
人はそれを光への道標とするが、
それを闇への道標とした。
それは守るためにあるのか、
傷付けるためにあるのか。


机の上に置かれた新聞の見出しには、

“やはり海軍基地に襲撃か？海軍本部はいまだ否定”
と大きく書かれていた。


30年前。
厳重に管理され、立ち入り禁止となっている海軍のとある基地に、侵入してきた海賊がいた。

連絡を受けたセンゴクとガープは、すぐに現場へと向かう。
両者一歩も譲らず、激しい争いとなったが、最終的には海賊に逃げられてしまう。
ひとりも捕まれられることなく逃げられるなど屈辱的だったが、驚く事実が判明する。

そしてこの事件は、後にふたりの記憶に深く残るものとなる。