「この島、やけに静かじゃない・・・？」

新しく島に降り立った麦わらの一味が真っ先に感じたのは、違和感。

サンジの大怪我から、なんとか島に到着出来て一安心したのもつかの間。
人気のない場所へ船を停泊させ、全員で買い出しに出掛けたものの、島全体を包む静けさに動揺する。

「何で、誰もいねぇんだ・・・？」

人が全く歩いていない。
家や店がたくさん並んではいるが、ほぼ全部が閉まっていて人がいる気配がない。

この異様な風景に、何も言葉が出ないままひたすら足を進めるものの、どこも同じ光景が広がっていた。
これでは買い出しも出来ない。
まるでゴーストタウンだ。
当てもなくただ歩き続けていると、ガチャ、と小さな音が聞こえてきた。
思わず全員が音の方へ視線を向けると、ゆっくりと民家のドアが開き、中から年配の女性が出てきた。
その表情は暗く、疲れ切っているようにも見える。
あの、と遠慮がちに声をかけたナミに驚いたのか、女性は目を見開いて一瞬固まった。

「旅の方。ここには見ての通り何もないよ。悪いことは言わない。・・・早く出て行ったほうがいい」

この島は消える運命なんだ、と視線を落として力なく呟いた。

「何かあったのね。それも、最近に」

ロビンの言葉に、女性は目を丸くした。
もちろん、ロビンも適当なことを言ったわけではない。
歩いている最中、周りをよく観察していた彼女は、あることに気が付いていた。
漁に使うであろう漁船や、店の看板。
建ち並ぶ家や建物も、そこまで古びてはいなかった。
草木もそこまで荒れ放題というわけでもない。
つまり、最近まで使われていたことになる。
漁船や家、店の数を考えれば、かなり栄えていた島だったはずだ。


「ここで立ち話も何だから、よかったら中に入りなさい。何もないけど・・・」

ロビンの言葉に何かを感じ取ったのか、女性は一味を家に招いてくれた。

言葉に甘えて中に入ると、家族の写真がたくさん飾られていた。
幼い子供も写っている。
それは孫だよ、とお茶を出しながら教えてくれた。

「ちょうど２ヶ月前になるかねえ・・・」


この島はリーフ島といった。
漁や農業がさかんで、飲食店や洋服屋などたくさんの店が並ぶ、活気に溢れた島だった。
そんな平和な島に、異変が起こる。

島民が、次々と倒れだしたのだ。
医者にも原因がわからず、何の対処も出来ないまま時間が過ぎ、たくさんの人が帰らぬ人となってしまった。
今は、ほんの数人しか島に住んでいないという。

「私は無事だったけれど、今でも原因はわからず・・・この島は不気味がられて誰も近寄らないよ。近くの島にいる子供や孫は一緒に住もうと言ってくれるけど、こんなになっても生まれ故郷、どうしても離れがたいものでね・・・」


寂しそうに告げられたその言葉に、一味は何と言葉を返せばいいのかわからず、何も言葉をかけることが出来なかった。