「サンジ、しっかりしろ！」

なまえの嫌な予感は、的中してしまった。
いくら呼びかけても、サンジから反応はない。
チョッパーは急いでサンジをおぶると、サニー号へと走り出した。

「お、サンジいた、のか・・・」

足音が聞こえて出迎えたウソップは、帰って来た２人の鬼気迫った表情と、チョッパーの背中でぐったりしているサンジの姿を見た瞬時に表情が青ざめた。

「みんな手伝ってくれ！サンジが大怪我だ！」

チョッパーの叫び声を聞きつけ、仲間たちが部屋の中からバタバタと走って駆けつける。
ぐったりとしているサンジを見て、緊張感が一気に高まった。

「ナミ、すぐにお湯の準備を頼む！ゾロ、倉庫からガーゼを持ってきてくれ！」

ナミとゾロは、チョッパーの的確な指示に黙って従う。

「なまえ、ロビン、手伝ってくれ！」

「了解」

「サンジ、もう少しだから頑張れ！」

その声が、サンジに届いたのかはわからない。

チョッパーたちが医務室から出てくるまでの時間は静かで、とんでもなく長く感じた。
手当てを終えてキッチンへと戻ってきたチョッパー、ロビン、なまえの顔に浮かぶ疲れの色を見て、何か飲み物を用意するわ、とナミが立ち上がった。


「サンジさんがやられるって事は相当な手練れか、よほどの大人数で襲ってきたということでしょうか」

サンジの怪我は本当にひどく、１人や２人にやられたようなものではなかった。
傷の状態から、出航は止めた方がいいとチョッパーとナミが判断をした。
次の島まではかなり遠い。
万が一の事を考えれば、それが安全だ。
ある程度落ち着いてから、ロビンが冷静に状況を判断し始める。
賞金首のサンジを海軍に引き渡していない事を考えれば、賞金稼ぎの可能性は低い
場所はかなり人通りも少なかった上、襲われてもわからないような場所だ。
そうなれば、ひとつ疑問が残る。

「何で彼がそんな場所に行ったのかが疑問だわ」

サンジが買い物中に襲われたのは間違いがない。
しかし、いくら大人数に囲まれたのだとしても、彼がそんな場所まで移動する必要があったのか。
ロビンの疑問に、皆が頭を悩ませた。
確かに彼女の言う通りだ。

人質を取られたのか？
連れて行かれたのか？
自分から移動したのか？


サンジは礼儀正しいし、常識外れな行動はしない。
他の誰かを巻き込まないように、ひとりで何とかしようとしたのだろうか。

『サンジ君が出掛ける前・・・嫌な予感がしたの。まさか当たるなんて・・・』

無理にでも止めておけば良かった、となまえの目から涙が零れ落ちた。

「だ、大丈夫だなまえ！サンジはそんな簡単にやられるような奴じゃねぇしっ！」

「そうだよなまえ！サンジならすぐに元気になるよ！」

慌てたウソップとチョッパーが一生懸命なまえに慰めの言葉をかけるが、なまえの涙は止まることはなかった。

「詳しいことは本人にしかわからねぇだろ。ただ・・・この状況を黙って見てる訳にはいかねぇな。そうだろルフィ」

今まで黙っていたゾロが口を開く。
冷静ではあるが、明らかに苛立ちの色が伺えた。

「当たり前だ」

一言そう言ったあと、ナミの止める声も聞かず、ふたりは町へと走り出した。

「なまえの件も解決したわけじゃない。関連性はわからないが・・・この状況だと、誰かが狙われる可能性は０とは言えねぇな」

フランキーの意見は、間違ってはいなかった。

しばらくこの島にいるなら、早めに対処した方がいいのは確かだ。
再びサンジを狙い、襲撃される可能性も捨てきれない。
情報を集めるために、ロビンとフランキーも船を降りて行った。