出掛けていた仲間たちも次々と船に戻り、それぞれが翌朝の出航に向けて準備を始めていた。

だんだんと空が茜色から紺色へと誘われていく中、サニー号には、サンジの姿だけがなかった。
遅いわね、とナミがつぶやく。
それもそのはず、サンジは食料品の買い出しの時は、ほとんど寄り道をすることがない。
食べ物が傷んでしまわないよう、最新の注意を払っているからだ。
買い出しに出たきり夜まで帰って来ないことなど、記憶の限りではほとんどなかった。

なまえの表情がだんだんと曇っていく。
不思議とこういうときの勘は、良くも悪くも騒ぐものなのだ。

『私・・・探しに行ってくる』

そう言って、なまえは走って船を降りていく。

「なまえ！？ひとりじゃ危ないよ！」

ひとりで船を降りたなまえの後を、チョッパーが急いで追いかける。
なまえのその慌てぶりに何かを感じ、仲間たちは自分たちも行った方がいいのかと心配になったが、行き違いになったら逆に混乱を招くと船に留まることを選択したロビンに合わせて、夜明けと共に出発できるように出航準備に取り掛かった。


「なまえ、こっちだ！」

人間と違って嗅覚に優れたチョッパーの鼻は、微かにサンジの匂いを探り当てたが、同時に異変にも気付いた。

「なまえ、おれに乗って」

なまえの問いかけには答えず、チョッパーはなまえを背に乗せると、急いで走り出した。

「なまえ・・・サンジ、今日ひとりで出掛けた？」

『え、うん・・・・・』

その返事を聞いたきり、黙ったままで脚を進めるチョッパーの様子に不安が募る。


“行ってくるよ”


そう言って船を降りて行ったサンジの後ろ姿が、なまえの頭を過った。


「この辺だ！」


チョッパーが足を止めた場所は、町の中心から少し外れた林のような場所だった。
何件か店はあるが、長く使われていない廃屋のような外見で、営業しているのかも怪しい。
当然、人通りがあるわけもない。
こんなところに来る理由があるのか疑問に思うほどの場所を、ふたりは急いで探し始める。

『ねえ、これ・・・！！』

なまえが見つけたのは、薄暗い道に無造作に散らばる大量の食料品。
それを見た瞬間、チョッパーの表情が青ざめていく。

無事でいてほしい。

ただそう願うなまえとチョッパーを嘲笑うかのように待ち構えていたのは、ぐったりと倒れているサンジの姿だった。

「サンジ！！！」

『サンジ君っ！！』

ふたりの悲鳴に近い叫び声が、静かな空に響く。
彼の側には、粉々になった青い石が月明かりに反射して、まるで星のように美しくきらめいていた。