ミスティーブルーのきらめき
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水平線が赤く染まり出す頃。
なまえの美しい歌声が、サニー号を包んでいた。
その歌声に皆が耳を傾け、聞き惚れる。
“ジュエル島の歌姫”と呼ばれていた彼女は、音楽家であるブルックを驚かせるほどの美しい声と、天才的な歌の才能を持っていた。
突然故郷を離れることとなってから、早くも10日が過ぎようとしていた。
彼女は悲しむ様子はまったく見せずに、ブルックと曲を作ったり、ロビンとガーデニングを楽しんだり、ナミと雑誌を読んだり、ルフィやウソップと魚を釣ったりと、この生活を楽しんでいるようで、最初は心配していた仲間たちも安堵の色を見せていた。
警戒していた追っ手の追跡もなく、海賊船とは思えないほどの穏やかな日常を過ごしていた。
歌が終わったタイミングをしっかりと見計らって、紅茶を持ったサンジがなまえに近付く。
豪華なティーカップに紅茶を注ぎ、優雅に差し出すサンジの仕草は、まるで貴族に仕える執事のようだ。
「今の歌は有名な曲なのかい?どこかで聞いたことがある気がするんだ」
紅茶を渡しながら、サンジはそう尋ねた。
彼女が今歌っていた曲は、詳しくは知らないものの、初めて聴く歌ではなかった。
確かに、どこかで聞いたことがあるのだ。
『本当ですか?この歌は、ノースブルーの歌なんです』
そう言って優しく微笑んだなまえはとても可愛らしかったが、“ノースブルー”という言葉に、同時に複雑な気持ちが沸き起こったのも事実だった。
ノースブルーにいい思い出はない。
彼にとって、忘れたい過去であることは違いがない。
どこでこの歌を聞いたのかはわからないが、おそらく子供の時であることは間違いがないだろう。
記憶というものは、自分が思っているよりも、そう簡単には薄れてくれないものなのだろうか。
急に黙り込んでしまったサンジの様子に気付いたのか、そう言えば、となまえは話を切り替えた。
『今、新しい曲を作っているんです。完成したら、聴いてくれますか?』
どこか不安げに訊く彼女に、育ちの良さを感じ取った。
断るわけがないのに。
その謙虚な性格が、島のみんなからも愛されていたのだろう。
サニー号の舵を取っていたフランキーが、前方に島が見えたことを告げたのと、サンジが彼女にもちろん、と答えた声が重なったのは、偶然なのか、時のいたずらだったのだろうか。