まだ朝早い時間だというのに、いきなり叩き起こされたことに文句を言いながらも、全員が甲板に集まった。

「全員よく聞け。・・・かなりまずい状況かもしれない」

サンジの切り出しに何かただならぬ雰囲気を感じ取ったのか、寝起きでだらだらとしていた空気に、瞬時に緊張感が漂った。

先ほどまでパニックになっていたのが嘘のように、チョッパーとウソップは自分たちが見聞きしたものを、しっかりとわかりやすく皆に説明をした。

ふたりの話を黙って聞いていた仲間たちは、顔を見合わせる。

昨日のやりとりを見ていた時点で、はっきりとした確証こそないものの、ゾロやナミやブルックも、それぞれが何かしらの違和感を感じていたようだった。

仮にそう言っていたとなれば、海兵があれほど強調していた《元帥命令》が本当のものなのかどうかも怪しい。
そうなれば、保護する理由をなかなか教えなかったことにも納得がいく。

ふたりが見たという連絡を取っていた人間がどんな存在かはわからないが、少なくともあれだけの人数の海兵を動かせる力を持っている人物、ということになる。

「話を聞いてる限りじゃ、ただの保護じゃないのは間違いなさそうだな」

「ええ、そうね」

本当に保護するだけなのに、そもそもあんな数の海兵が必要だろうか。
しかも、保護の対象はひとりだけだ。
しかしその目的が保護ではなく、“拉致監禁”だとしたら。
島に砲撃をするために、あれだけの人数を集めているのだとしたら。
すべて辻褄が合う話だ。
表向きでは、なまえを《海軍が保護する》ということで聞こえがいい話になっているが、
実際は彼女を誘拐し、さらに島に危害を加えるつもりでいるということだ。

相手の意図はわからない。
どうして彼女を狙うのかもわからない。
しかし、彼女ひとりだけではなく、この島の住民全員が危険に晒されていることだけは、確かな事実だ。

しかも、もう時間は残されていない。
一刻の猶予もない。


とにかくなまえのところへ急ごう、とルフィが告げると、一味はなまえとマーサが住む家へと向かって走り出した。