ラスボスはつらいよ

「魔王の城は薄暗くて趣味が悪いですね……」
「そう思うならさっさと帰ればよろしいでしょう、セーラ姫」
「貴方は確か、魔王の側近の胡散臭い美形!」
「落として上げるコメントありがとうございます」
「それで何か御用ですか?」
「気配を消して近づいたはずなのに驚きもしませんね貴女」
「王族たる者、暗殺者の気配にも敏感でなくてはなりませんから」
「そこ護衛とかに任せません?」
「なかなか優秀な護衛が入らなくて……」
「そりゃあ貴女と比べたら……いえ、そういう話をしに来たのではありません!」
「なんでしょう?」
「魔王様を返せこの泥棒猫ー!」
「どっ、どろぼうねこー!?」
「いつの間にか城内を自由に歩き回るようになってまったく図々しい小娘ですね! 貴女が来てから魔王様は人間界への侵略も忘れスイーツおじさん一直線……!」
「それは元からでは」
「だまらっしゃい! 最近魔王様は練習だと言って人間に化けた姿でばかり過ごしておいでなのですよ!」
「私はどちらの姿でも好みストライクですが……」
「えっ」
「えっ?」
「とにかく! 魔王様を惑わすなこの泥棒猫!」
「ぬ、濡れ衣もいいところです! そもそもヴィクトー様は私が来る前からググリシャスの宝珠で人間界のスイーツをググってばかりでしょう?」
「キィーッなにがヴィクトー様ですか馴れ馴れしい! そもそも微妙に口調が被って紛らわしいのですよ!」
「な、なんと理不尽な……というか、そもそも目障りなら自ら始末するべく向かってくれば良いでしょう!?」
「これだから思考が戦闘民族の小娘は……魔王様がやらなきゃ意味ないでしょう!」
「それを無茶振りと言うのですが」
「人間の小娘、それも一国の姫を始末することで人間界への宣戦布告を兼ねつつ魔王様の残虐性を開花させる!」
「あの、私が言うのも何ですけど……ない花は咲かないと思います」
「魔王様ならできるもん! 魔王様は邪悪に輝きながら空を飛び何か物凄い特殊能力を持った魔眼から放つビームで人間界を焼き払いながら不気味に高笑いする!」
「……まったくイメージできませんね」
「考えるな感じろ!」
「念願のスイーツを前に子供のように目を輝かせながら口元にクリームつけたまま「おいしいねぇ」って幸せいっぱいの蕩けそうな笑顔ならグハッ」
「消せー! そんな間違ったイメージ消せー!」
「そちらこそ間違っていましてよ!」



「……ワシさっきからいるんだけど、出づらい……」
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