ふしぎなくすり騒動記
外は危ないということで俺の部屋に戻ることに。
スカルグは自分一人で面倒を見るから大丈夫だなんて言うけど、お子様は予測不可能なんだぞ?
「姫様のお手をわずらわせる訳には……」
「いいんだよ、別に」
「いえ……お部屋の状態から察するにお勉強の途中だったのでは、と」
「ぎく!」
少しだけ低く厳しめなスカルグの声に、俺は肩を跳ねさせた。
サボる口実にしてるのばれてーら!
「あー、わかったよ……勉強は後でちゃんとするから、お前もちゃんと休日ゆっくり休むなり遊ぶなりしろよ!」
「は、はい……」
と、そこにドアを控え目に叩く音。
そういえばそろそろ休憩にファイがお茶とお菓子を持ってきてくれる時間だったな。
ドア越しに感じる焼き菓子の香りに、ちびルーグがぴくりと反応した。
「む、なんだ? いいニオイがするぞ」
「ああ、それは……ファイ、入れよ」
スカルグがドアを開けてやると、両手でトレイを持ったファイが目を丸くして師匠を見た。
部屋には俺が一人でこもってるはずだったから、スカルグがいることにびっくりしたようだ。
まあ、予想外の来訪はスカルグだけじゃないんだけど。
「え、スカルグさん……それに、その子は……?」
「えーと、これはその、いろいろあってだな……」
しどろもどろなスカルグが詳しい説明を始める前に、ファイはマオルーグをそのまま縮めたような子供を見て一言。
「マオルーグさん……隠し子がいたんですね……!」
「違ぁう!」
俺も最初思ったけど断定するなよ!
弟にしては歳の離れた、あまりにもそっくりな子供を前に、そう考えるのはまあ仕方ないのかもしれないが……
「これはかくかくしかじかで、マオルーグ本人なんだ」
「え、ええっ!?」
ふしぎなくすりで縮んで身も心もお子様になってしまったちびルーグを、ファイは改めてまじまじと見つめる。
「あのマオルーグさんに子供時代があったなんて……」
「なんだかよくわからぬがだいぶムカつくなキサマ」
無意識に辛辣なのは前世の因縁がゆえか、天然なのか……いやまあ俺もだいぶ似たようなこと思ってたから人のことは言えない。
「まあ我は魔王だからウツワがデカイのだ。見るからにシュッセしなさそうな小者のボーゲンなどゆるしてやる!」
「…………」
気持ちはわかるが堪えろ、ファイ。
「いけませんよ、魔王様。ファイはこう見えて姫様の護衛を立派につとめている男です。誰にでもできることではないのですから」
「む、そうなのか」
「師匠、フォローは嬉しいんですけどこう見えてって……」
成人男性なんだが童顔であまり背も高くないファイは割とよく侮られがちだ。
はあ、と溜息をつくと、童顔青年はちびルーグに向き直る。
「オレだって、ちびっこになめられてなんかいられませんよ。オレには必殺技がありますから」
「ほう? 見せてみろ」
ファイの必殺技って……そんなものあったっけ?
「おやつ、せっかく君の分も用意しようと思ったけど……ムカつく小者の作る物なんていらないよな?」
「なっ、なんだと!? ぐぬぬ、キサマひきょーなっ……お、おぼえていろー!」
眉間にシワをいっぱい集めものすごく悔しがると、定番みたいな捨て台詞を残して、ちびルーグは部屋を飛び出してしまった。
ってめちゃめちゃおとなげないやつじゃねーかよ!
「おこちゃま相手にお前……」
「ファイ……今のは私もどうかと思うぞ」
「うっ……オ、オレとしたことが……」
前世では自分を殺した魔王に、一矢報いたくなったのだろうか。
あの子の分のお菓子作ってきますと慌てて出ていったファイとは別に、俺もちびっこを探しに行った。
スカルグは自分一人で面倒を見るから大丈夫だなんて言うけど、お子様は予測不可能なんだぞ?
「姫様のお手をわずらわせる訳には……」
「いいんだよ、別に」
「いえ……お部屋の状態から察するにお勉強の途中だったのでは、と」
「ぎく!」
少しだけ低く厳しめなスカルグの声に、俺は肩を跳ねさせた。
サボる口実にしてるのばれてーら!
「あー、わかったよ……勉強は後でちゃんとするから、お前もちゃんと休日ゆっくり休むなり遊ぶなりしろよ!」
「は、はい……」
と、そこにドアを控え目に叩く音。
そういえばそろそろ休憩にファイがお茶とお菓子を持ってきてくれる時間だったな。
ドア越しに感じる焼き菓子の香りに、ちびルーグがぴくりと反応した。
「む、なんだ? いいニオイがするぞ」
「ああ、それは……ファイ、入れよ」
スカルグがドアを開けてやると、両手でトレイを持ったファイが目を丸くして師匠を見た。
部屋には俺が一人でこもってるはずだったから、スカルグがいることにびっくりしたようだ。
まあ、予想外の来訪はスカルグだけじゃないんだけど。
「え、スカルグさん……それに、その子は……?」
「えーと、これはその、いろいろあってだな……」
しどろもどろなスカルグが詳しい説明を始める前に、ファイはマオルーグをそのまま縮めたような子供を見て一言。
「マオルーグさん……隠し子がいたんですね……!」
「違ぁう!」
俺も最初思ったけど断定するなよ!
弟にしては歳の離れた、あまりにもそっくりな子供を前に、そう考えるのはまあ仕方ないのかもしれないが……
「これはかくかくしかじかで、マオルーグ本人なんだ」
「え、ええっ!?」
ふしぎなくすりで縮んで身も心もお子様になってしまったちびルーグを、ファイは改めてまじまじと見つめる。
「あのマオルーグさんに子供時代があったなんて……」
「なんだかよくわからぬがだいぶムカつくなキサマ」
無意識に辛辣なのは前世の因縁がゆえか、天然なのか……いやまあ俺もだいぶ似たようなこと思ってたから人のことは言えない。
「まあ我は魔王だからウツワがデカイのだ。見るからにシュッセしなさそうな小者のボーゲンなどゆるしてやる!」
「…………」
気持ちはわかるが堪えろ、ファイ。
「いけませんよ、魔王様。ファイはこう見えて姫様の護衛を立派につとめている男です。誰にでもできることではないのですから」
「む、そうなのか」
「師匠、フォローは嬉しいんですけどこう見えてって……」
成人男性なんだが童顔であまり背も高くないファイは割とよく侮られがちだ。
はあ、と溜息をつくと、童顔青年はちびルーグに向き直る。
「オレだって、ちびっこになめられてなんかいられませんよ。オレには必殺技がありますから」
「ほう? 見せてみろ」
ファイの必殺技って……そんなものあったっけ?
「おやつ、せっかく君の分も用意しようと思ったけど……ムカつく小者の作る物なんていらないよな?」
「なっ、なんだと!? ぐぬぬ、キサマひきょーなっ……お、おぼえていろー!」
眉間にシワをいっぱい集めものすごく悔しがると、定番みたいな捨て台詞を残して、ちびルーグは部屋を飛び出してしまった。
ってめちゃめちゃおとなげないやつじゃねーかよ!
「おこちゃま相手にお前……」
「ファイ……今のは私もどうかと思うぞ」
「うっ……オ、オレとしたことが……」
前世では自分を殺した魔王に、一矢報いたくなったのだろうか。
あの子の分のお菓子作ってきますと慌てて出ていったファイとは別に、俺もちびっこを探しに行った。