城下町に幽霊は踊る

 深夜のリンネ城下町、そこに現れる幽霊の噂。
 真相を確かめに来た俺とマオルーグは、幽霊の仮装をしたカノド国の王子マージェスにすっかり緊張感を奪われてしまった。

 以上、これまでのあらすじ!

(俺が言うのもアレだけど一気に遠足みたいな雰囲気になったぞ、どうする?)
(どうもこうも、万が一があれば外交問題にも発展しかねないだろうな……)

 友好国カノドの王子が不審者に襲われでもしたら……俺たちはヒヤリとした汗を垂らす。
 どうやらマージェス王子は好奇心旺盛らしく、夜の城下町にウキウキしながら辺りを見回していた。

「出ませんね、幽霊さん……私ももっと幽霊らしくした方がいいでしょうか?」
「幽霊らしく、とは……?」

 マオルーグに尋ねられると、王子は白い布を深く被り、すう、と息を吸う。

 そして。

「……おお、うらめしや……赦さぬ、決して赦さぬぞ……!」

 普段とはまるで違う、地を這うような声と心底憎しみのこもった表情で……アッ俺これ前世で見たわ。

「や、やけに堂に入る演技ですわね……?」
「えへへ、そうですか? 貴方に贈った勇者物語の、魔王様に心酔する部下の気持ちになってみました」

 それアンタのことじゃね?
 後ろでマオルーグがノーコメントとばかりに目をそらしている。

 あの小説、だいぶカッコよく華やかに脚色されてるけど魔王を倒すまでの道のりが割と俺の前世まんまなんだよなあ……

「魔王様に魅力を感じる読者としては、己が身を捧げて彼に仕えるあの部下に感情移入してしまってですね……」
「王子、しばしお静かに」
「え?」

 うっとりと語り始めたマージェスを、マオルーグがそっと制止する。
 ある意味ナイスタイミングだ、幽霊……もしくは不審者か酔っぱらい。

「誰かおりますわね。噂通りぼうっと白くてふらふらして……まだ遠くてよくわかりませんわ」
「何にせよ、こんな深夜に出歩く者には注意せねばな」
「危ないですしね」

 えー、ただいま思いっきり巨大ブーメランが突き刺さっております。
 それはさておき、あれが噂の“幽霊”とやらなんだろうか?

「よく見ると足があるな……それに色白だけど血色が悪いって訳じゃない。全体的に色素の薄いヒョロっとした……どっかで見たことあるような……?」
「待て、あいつは……!」

 次第に近づいてきた幽霊の正体に、俺たちは目を見張った。

 いや、普段ならそこまで驚くことじゃないんだが……

「おや、隊長さん?」
「スカルグ……それも、」

 しっかりと降ろした瞼に、微かに聴こえる寝息。

 俺たちの前に現れたスカルグは、よく眠っているようだった。
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