62~暗闇の中で~

~祖父の心~

ガトー「カカオ……無事に帰ってこいよ」
モラセス「やはり心配だな」
ガトー「それもあるんだけどな」
モラセス「?」
ガトー「アイツには帰って来たら伝えてえことがあるんだよ」
モラセス「伝えたいこと、か……だがそれは、」
ガトー「歴史が修正されたら叶わねえかもしれない、だろ?」
モラセス「……」
ガトー「そん時はきっと、向こうの俺が伝えてくれるさ」
モラセス「向こうの?」
ガトー「カカオならいずれきっと“そこ”に辿り着けるはずだ」
モラセス「信じているのだな」
ガトー「おう。自慢の孫だからな!」


~逃げつつ進め~

モカ「いきなり一人ぼっちになるのは正直カンベンしてほしいよねぇ。ボクは一対一じゃ不利な上に、クロ兄みたいな身軽さもアンみたいに守ってくれるゴーレムだってないんだからさ……」

モカ「とりあえず、敵と遭遇したらどうやって逃げるかだけ考えながらみんなを探そう!」

モカ「うーん……“ぶーすとダッシュ”は扱いやすく改良したけど、ちょっとうるさいからなあ……静音は考えてなかったや」

モカ「……音を探りながら抜き足差し足、これしかないね。よし、ふぁいおー!」


~戦いの呼吸~

パンキッド「シーフォン、だいぶ戦い慣れてきたね」
シーフォン「僕はもともと騎士団の人間だよ。一般人よりはよほど慣れているさ」
パンキッド「そうじゃなくて、呼吸っていうか……うん。一緒にやっててやりやすい」
シーフォン「連携かい?」
パンキッド「そ。アタシも前は個人プレーだったからヒトのこと言えないんだけどさ」
シーフォン「闘技場で一人で戦っていれば連携も必要ない、か」
パンキッド「そうそう」
シーフォン「そうだね……僕も昔は周りなんて見えていなかったからね。戦闘でもそれが出てたかもしれない」
パンキッド「恋愛だけの話じゃなかったのかい」
シーフォン「恥ずかしながらね」
パンキッド「けど、今はすっごく動きやすいよ。息をするように戦える」
シーフォン「君の隣に並んでもお邪魔じゃないかい?」
パンキッド「ああ、もちろん」
シーフォン「ふふ、それは光栄だね」


~なんとかなるっしょ~

モカ「あー、ひとまず誰かと合流できて良かったよー」
シーフォン「人数が増えるのは心強いし、前衛と後衛が揃ってると安心感が違うよね」
モカ「これで後方から魔術ぶっ放すだけの簡単なお仕事ができる……」
パンキッド「アタシたちだけだとまだ回復手段がないけどね」
モカ「んー、まあなんとかなるっしょ」
シーフォン「広範囲の敵を魔術で蹴散らしてくれれば一回あたりの戦闘時間も短縮できて僕らが受ける傷も減るよ」
パンキッド「そのための詠唱時間をアタシたちが稼ぐ、か。うん、なんとかなりそう!」
モカ「なんとかなるなる!」
シーフォン「行こう。なんとしてもみんなと合流するんだ!」
パンキッド「おう!」


~下心大活躍?~

シーフォン「ヌスミギくん、ねぇ……」
パンキッド「動機と最初の用途はともかく、ちゃんと活躍して良かったんじゃない?」
モカ「備えがあれば何でもできるってね!」
パンキッド「それはなんか違うような……」
シーフォン「下心丸出しの野次馬根性でも、現にこうして僕たちを引き合わせて命を繋いでくれたんだ。感謝しておいた方がいいよ、パンキッド」
モカ「なんか引っかかるケド、一応遠くの情報収集とかこっちが本来の用途だからね。別に最初から盗み聞き目当てに作ってないからね!」
パンキッド「はいはい、そういう事にしておくよ」
シーフォン「何にせよ、ふたりの会話を盗聴していた時点でアウトだけどね」
モカ「うぐっ……」


~言えるワケないだろ!~

シーフォン「パンキッド、無事かい……?」
パンキッド「あ、ああ……えっ、わ、悪い、下敷きにしてたのか!? 重かっただろ!」
シーフォン「なに、淑女を守るのは紳士の誉れさ。このくらい重いうちには入らないよ。もう少しこのままでもいいくらいさ」
パンキッド「ぐっ、だからそういう歯の浮くようなセリフをサラッと言うんじゃないよ!」
シーフォン「僕はいつだって本心しか口にするつもりはないんだけどな?」
パンキッド「へ?」
シーフォン「……おっと、名残惜しいけど敵はこちらを見逃してはくれないか。戦えるかい?」
パンキッド「あ、当たり前だろっ!」


パンキッド「……なーんてことがあったなんて、言えるワケないだろ……ううう」
シーフォン「僕としてもあまり言いふらすのはちょっと勿体無いかな……ふふふ」
モカ「だから気になるってぇー!」
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