ラグード王子の魔物退治?

 チサナ村近くの洞窟での騒動から一週間が過ぎ、リンネに帰った俺には穏やかな日々が待っていた。

「やあ、ユーシア姫」
「ラグード王子!」

 ラグード王子はあの後メフィオに付き添ってチサナ村に向かい、しばらく戻って来なかったため、この爽やかフェイスを見るのは一週間ぶりになる。

「今帰ってきたのか?」
「ああ。メフィオもすっかり村に馴染んで、もう大丈夫だと思ったからね……リオナットの父上にも報告してきたよ」

 だから、今度はこっちに報告だよ、とラグード王子は笑う。

 王子の話によると、メフィオは力仕事や村を襲う魔物の退治を引き受けてくれているらしい。
 おっとりしているが彼女は高位のドラゴンでその辺の魔物より断然強く、村の立派な守り神になれそうだ。

「新しい居場所を見つけられて良かったなあ」
「そうだね。村の人達もよくしてくれてるよ」

 新しい居場所、か……そういう意味だと俺も、ちょっと思うところがある。
 戦いに明け暮れて最後には独りだった勇者としての人生と、今の人生……前世が不幸だったとは思わないけど、今はとっても幸せだと、それははっきり思う。

 ここが、俺の居場所なんだなって。

「…………」

 ん?

 なーんか視線を感じるような……

「な、なに?」
「やっぱりユーシア姫は飾らない方が素敵だなって」
「うぇ!?」

 ちょ、ちょっと、ムダにきらめき振り撒くなよ、眩しい!
 なんて俺が怯んでいると、ぐい、と押される感覚がした。

「失礼」
「うおっ、マオ?」

 マオルーグが俺とラグード王子の間に割って入ったらしい。
 どうしてわざわざ狭いところに入って王子を押し退けたんだ、こいつ?

「なんだよ、ホントに失礼だぞお前」
「別に」

 別にってお前そんな不機嫌丸出しで?

「ははあ、なるほど!」

 俺たちのやりとりを眺めていたラグード王子が、突然何かに納得したように声をあげた。

「マオルーグはユーシア姫の隣に来たかったんだね。大丈夫だよ、そこはあなたの場所だから」
「っ!?」

 あまりにもストレートな言葉にマオだけじゃなく俺まで赤面する。
 いやその、護衛だし間違っちゃいないのかもしれないけど言い方が……

「……隣が良かったのか?」
「違う!」

 ですよねー。
 ラグード王子には言い返せないでいるあたり、さてはマオも王子のキラキラオーラちょっと苦手だな?

「あはは、やっぱりいいなあ」
「何が?」
「いろいろと、ね」

 うーむ、王子は俺たちに何を見ているんだろう。

 リンネは今日も穏やかで賑やかで、優しい陽が降り注ぐ。

 勇者に魔王、それに魔王のペットのドラゴン。
 前世の縁が集うこのちょっと不思議な空間が、今の俺の居場所なのだった。
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