ラグード王子の魔物退治?

「……どうしてこうなったんだ……」

 いつもの敬語じゃなく素の口調でシワの寄った眉間を押さえるのは護衛のファイ。
 その声は洞窟内の岩壁に跳ね返り、僅かに響いて消えた。

「修行の一環だと思えばいいのさ、ファイ。ユーシア姫の護衛なんだから、ここでの経験がいつか役立つ時がくるかもしれないだろう?」
「まあ、荷物がひとつ増えたと思えば良いだろう」

 待てこら、誰かお荷物だマオ。

 そんな訳で、俺とラグード王子、それにマオとファイで国境の洞窟に来たワケなんだが……うーん、懐かしいなあこの感じ。
 もちろん俺はいつものドレスなんかじゃなく、動きやすくて可愛らしさも忘れない冒険者風の服に軽鎧と剣を装備している。
 トレードマークのポニーテールは広がらないよう三つ編みでまとめて……主に服装の違いだけど、やっぱ体が軽い。
 俺としてはこれが普段着でいいくらいなんだけど、一応これでもお姫様だからな。

「こないだみたいな魔物に襲われても、これならだいぶ動けるな……」
「まず魔物に襲われる状況を作らないでください」
「あ、あれはたまたま暴走した魔物が突っ込んできたからだし! 俺は悪くねえ!」

 いつものファイのお説教に抗議していたら、ラグード王子が微笑ましいものを見る目をこちらに向けていた。
 や、やべえ、お姫様お姫様!

「な、なにか?」
「いや、君たちは兄妹みたいだなと思って」
「はあ……」

 やだもう、爽やか眩しい。
 兄妹っていうかほんとは相棒だったんだけど、まあファイは覚えてないからな。

「兄妹? ユーシア様とオレが?」
「ファイはわたくしの五つ年上で、幼い頃からわたくしの護衛として傍にいましたからね。感覚的に少し近いものがあるのでしょう」

 と、いうことにしておこう……実際ファイから見たらそんな感じなんだろうし。
 するとラグード王子は少し考えるように俯き、口元に手を添えた。

「……ラグード王子?」
「ユーシア姫……できれば俺の前でも畏まらずに、ファイ達に接するように話してはくれないだろうか?」
「へっ!? そ、それはそのっ……」

 いいのか、素の口調おっさん丸出しだぞ!?
 めちゃめちゃ失礼を働いてしまいそうで、身内のマオやファイはともかくさすがに他所の国の王子様相手にそれは……

「……やっぱり、よそ者の俺相手じゃダメかい……?」

 うぐっ、捨てられた子犬みたいな目……!
 なんかよくわかんねーけど胸のあたりがきゅうんってするぞ、これ……

「無意識だろうが、貴様が使った手をやり返されたな」
「う、うるさいな……!」

 そこ、にやにやするんじゃない!

「ど、努力しま、す……」
「本当かい? ありがとう、ユーシア姫!」

 くそう、ちぎれんばかりにぶんぶん振ってる尻尾が見える。
 もしかして前世のクリムゾンドラゴンもわんこ系だったんだろうか……おそるべし、わんこ。
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