聖巨人と導きの妖精

 異世界召喚された青年・咲間晴人は導きの妖精を名乗る小さなおっさん・セツハと聖巨人とかいう巨大ロボットと出会い、この世界を救うことになったらしい。

 以上、前回までのあらすじ!

「なあおっさん、あのロボットさあ」
『聖巨人“魂血機将”だろ。いい加減覚えろ、相棒』

 そのコンチキショーって冗談みたいな名前を俺が呼ぶとどこからともなくあいつ飛んでくるんだから迂闊に名前言えないんだよ。

「音声入力方式で動いてくれるのは楽そうだなって思ったけど、いちいち指定して喋らなきゃいけないの地味に大変なんだな」
『あー、確かになあ……お前の独り言にまで反応するからエラい大変だったな。まだ巨人とお前がちゃんと繋がってない証拠だ』

 え、繋がってない?
 なんかよくわかんないけど、シンクロ率みたいなのがあるのか?

『そのうち「見える……そこっ!」とか、ただうぉーって叫ぶだけでもお前の思考イメージを読み取ってなんかいい感じに動いてくれるようになるぞ』
「なんだそれすげえな」

 ファンタジー世界のロボットは操縦‎方法もファンタジーだった。
 初回起動時はうまく動けなくて「そうじゃなくって……!」とか「あー違う待って!」って口走る度にわたわたして、最終的には派手に転んじまったけど。

『ま、今の聖巨人はうまれたての赤子みたいなもんだ』
「そのうちいろいろ学習します、ってか?」

 今の状態を考えたら、その前にやられちまわないか心配だ。
 そうしたら俺の最期は、誰も自分を知らない異世界でおっさんフェアリーに看取られるか運命を共にするかな訳で……

「くそー! なんでお前可愛い女の子フェアリーじゃないんだよ!」
『な、なんだよいきなり! その話は前回終わったろ!?』
「うるせえ、返す返すも納得いかねーんだよ!」

 異世界で最初に出会い俺の運命を告げて導くのが可愛いヒロインとかでなくまあイケオジの部類に入るかもしれないけど胡散臭いおっさんフェアリーなの、まだ認めた訳じゃないんだからな!
 と、びっくりしたらしいおっさんが背中の羽から小さな光の粒をバッと撒き散らす。

「うわっぷ、なんだこれ!」
『おまっ、脅かすから出ちまったじゃねーか! これ絶対吸うなよ!?』
「えっ、ど、毒の鱗粉とか……?」

 やべえちょっと吸ったかもしれない、と俺の顔から血の気が引く。

『……俺達妖精は小さくてか弱いから、外敵から身を守るために羽から特殊な鱗粉を出すことがあるんだよ。普段は出ないから、側にいても平気だが……』

 ヤバい毒だったらどうしよう……そういやコイツ得体の知れないファンタジーな妖精だし、そのくらいあっても不思議じゃないよな……?

「そ、それで、その粉の効果は?」
『み……魅了……』
「…………は?」
『だ・か・ら・魅了だよ! メロメロにして一時的に敵意や戦意を削いだり思考能力を奪うの! ちゃんと妖精らしい能力だろ!?』

 ある意味毒よりヤバいやつだったーーーー!

 まあ確かにこれが可愛い女の子妖精ならストンと納得できる能力だけど!

「おっさん妖精にメロメロにされるとかどんなアレだよ……」
『しかたねーだろ、おっさんでも妖精なんだから!』
「……そうだな……それによく見たらアンタ結構可愛」
『ぎゃーお前鱗粉吸いやがったな!? 離れろしばらく近づくな!』

 そこから先のことはあまりよく覚えていない。

 ただ、それから数日ほどおっさんが微妙によそよそしくなり俺との距離を保つようになったんだけど……何もしていないと信じたい。
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