ラスボスはつらいよ

「魔王様、勇者共の撃退おめでとうございます」
「何がおめでとうだ、勝手に姫を攫ってきて人間共に宣戦布告などした奴が」
「魔王様のためを思って……」
「出た、信用できないセリフ筆頭! 仮に思っていたとしてもタチ悪いわ!」
「ですが魔王様、嫌がっていた割には随分あっさり勇者共を倒しましたね?」
「問答無用で斬りかかられたからびっくりして、つい反射で……悪いことをしてしまったな」
「まあ、勇者共は教会ですぐ復活しますから」
「そこ! そこなんかズルいよなあいつら!」
「魔王様だって追い詰められた時の変身があるじゃないですか」
「でも命はひとつだ。尊いぞ」
「普通はそうなんですよねえ」
「やっぱあいつらズルくない? あっ、ズルいと言えばお前!」
「はい?」
「先に勇者を迎え撃ってくるって行ってきたんだよな? 勇者こっち来ちゃったけどお前無事だよな?」
「魔王様……いち部下に過ぎない私めの無事を喜んでくださるとは……」
「いやまあ無事に越したことはないけど! ちゃっかり生きててピンピンしててお前ワシが倒されたらどうするつもりだったんだよ!?」
「亡き魔王様の跡を継ぎ、涙を飲んで人間どもに復讐をしようかと」
「火種が復讐とか言ってんじゃない! というか魔王になりたいならなれば良いだろう!」
「魔王に生まれたのは貴方様、私は側近に過ぎません」
「生まれで全てが決まると思うな! ワシは薄暗い城の玉座を尻で温め続けるだけの不健康極まりない魔王生活なんかやめて人間界スイーツ巡りの旅に出たいんだ!」
「運命を受け入れましょう?」
「ワシは運命を切り拓く!」
「言ってることが勇者じみてきましたね」
「とにかく今度こそジマリッハ王国に姫をかえしてきてごめんなさいしなさい! ワシも一緒に頭下げてあげるから!」
「えー」
「えーじゃない!」
「あ、魔王様。勇者また来ましたよ」
「嘘だろ!? ついさっき送り返したところだぞ!」
「魔王城に移動魔法のマーキングされてますねこれ。復活から再戦までサクサクですよ」
「そんな便利なモノあるのずるい!」
「それでは私はこれにて。さっさと逃げ……追い返してきましょう」
「今逃げるって言ったあ!」
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