2~白き王都の英雄王~

―おまけスキット―


~便利な精霊通話機~

ガトー「しっかしまあ、この精霊通話機ってなあ便利だなあ」
モラセス《そうだろうそうだろう。お前のような出不精にはぴったりだ》
ガトー「……ちょっと顔が見たくなった、ってやたらと城飛び出してたおめえにもな」
モラセス《なにを言うか、まだこいつは顔までは見られんぞ》
ガトー「そのうちできるようになるのかよ?」
モラセス《考えてみる、とは言っていたな》
ガトー「こんな大発明しちまって、自慢の息子だなあ、モラセスよお」
モラセス《あいつの才能は昔から知っている》
ガトー「そっか」
モラセス《とはいえ直に会うのが一番だ。そのうちまたそちらに行くぞ》
ガトー「元気なじいさんだなあ」


~省エネモード~

メリーゼ「お父様、そんな姿にもなれたんですね」
ランシッド『もともと精霊はある程度好きな姿をとってるだけだからね。生前の姿まんまだったらおじいちゃんだし』
カカオ「そう言われるとなんか不思議だなあ」
クローテ「ところで……これはなんという動物の姿を模したのですか?」
ランシッド『え、テキトーだけど?』
メリーゼ「テキトー、って……」
カカオ「新種の動物だーって騒がれたら、それはそれで目立つんじゃ?」
ランシッド『あ』
カカオ「とりあえずなんか変身しときゃいいやーってノリだったか……」
メリーゼ「そういうゆるくテキトーなところが、いつもお母様に窘められるんじゃありませんか」
ランシッド『しょぼーん……』


~発明少女、モカ~

カカオ「発明少女、ねぇ……」
モカ「なんだよ、その疑いの眼はー」
カカオ「いや、オレももの作りは好きだし、どんなもん作るのかなーって」
クローテ「やめろ、興味を示すな」
モカ「クロ兄ぃはいっつもくだらないって言うもんね。ゲージュツがわからないんだよ」
クローテ「発明家気取りも結構だが、周囲の迷惑も考えろと言っているんだ」
メリーゼ「ク、クローテ君……」
クローテ「だってそうだろう。モカがいる魔学研究所はしょっちゅう爆発が起きて、黒い煙があがってる。モカ自身もその度に真っ黒になって出てくるんだぞ?」
カカオ「クローテ、お前それ毎回見に行ってんのか?」
モカ「いっつも最初に駆けつけて、お小言いいながら治癒術かけてくれるんだよ」
ランシッド『……素直じゃないねぇ』
メリーゼ「クローテ君、なんだかんだ優しいですから」
カカオ「だから貧乏クジ引かされるんだよな」
モカ「損な体質だよねー」
クローテ「う、うるさい! あとお前が言うな!」


~女装コンテストの思い出~

ランシッド『騎士団の女装コンテストかぁ……楽しそうだな。俺の時代でもやれば良かった』
カカオ「ゴツい騎士の女装姿がそんなに見たいのか?」
ランシッド『わかってないなあ、祭というのがいいんだよ』
メリーゼ「それなら別のお祭りを考案すればいいだけでは……」
クローテ「まったくだ……この悪習のせいで私はコンテストのあとやたらとエントリー名で呼ばれ、あちこちから妙な視線を感じるようになったんだ。新人は強制参加だし……」
カカオ「エントリー名?」
メリーゼ「コンテストでは女性の名前でエントリーされるんです。クローテ君はフルネームをもじってテティスって呼ばれてましたよ」
トランシュ「僕はトリッシュ、デュランはデライアといった感じにね」
カカオ「やたらと本格的……ですね」
トランシュ「僕達の年はその二人の一騎討ち状態でね、本気で競ったんだけど結局引き分けだった」
カカオ「本気で競った!?」
トランシュ「だってせっかくの祭は楽しまなきゃだし、何事も負けるのは嫌だからね」
ランシッド『君達らしいね』
カカオ「わ、わからねぇ……これが、英雄って奴か……」
モカ「ふたりともバカなだけだよ」


~ブオルの肖像~

カカオ「すげえ迫力だよなあ、ブオル子さん……」
クローテ「最初のコンテストは七十年ほど昔だったらしい。それがいつまでもこうやって絵にして飾られるとはな……」
ランシッド『しかも一人だけ特大サイズで』
トランシュ「すごい騎士だったんだってスタード教官から聞かされたよ。強くて優しいみんなの憧れだって」
モカ「いいなぁ、実物はかっこいいんだろーなぁー」
トランシュ「おじさん好きなところはミレニアそっくりだね、モカ」
カカオ「けど実物に会ったらこの絵のことがよぎらずにはいられないだろうな……」
メリーゼ「ちょっと思い出しちゃいそうですね……」
モカ「あ、でもこれはこれで可愛く見えてきたよ」
ランシッド『しゅ、守備範囲広いねぇ……』
トランシュ「ほんとそっくりだ。おじさま好きなら僕なんかどうだい?」
モカ「トラおじちゃんは渋さが足りない」
ランシッド『わぁ、ばっさり』
トランシュ「あはは、手厳しいなぁ」
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