世界を救った伝説の勇者の次なる生は
今夜はリンネ国に咲く小さな一輪の花、ユーシア姫……俺の十七歳の誕生日パーティー。
まあパーティーにかこつけてどんちゃん騒ぎたいだけなんだろーけど……平和だなあ。
「こんな平和な世界に生まれて、幸せなこった」
「そうだな」
いきなり華やかな場に連れてこられたマオルーグは、落ち着かないのか俺の隣で盃を傾けている。
ある意味お互いよく知った仲だからか、まだここにいる方がマシらしい。
「やあ、今日の主役とヒーローがお揃いで」
「こんばんは。良い夜ですねユーシア姫」
出た、キラキラ王子と淑やか王子。
きょとんとしているマオルーグに「あれお前の元ペットと部下だぞ」と教えたら口を半開きにして二度見していた。
「クリムゾンドラゴンとダークマージ……?」
「そ。ついでにさっき会ったスカルグもお前の部下の骸骨騎士だしファイは俺の仲間の戦士な。みんな前世の記憶ないけど」
「なん、だと……」
わかる、驚愕だよな。
「主よりイケメンに生まれ変わるとは何事か……!」
「いやそこかよ!」
と、
「「…………」」
気づけば二人の王子が俺たちのやりとりをしばらくぽかんと眺めていた。
二人からすれば訳わかんない話してるもんな、と俺は今更な咳払いでごまかす。
「ラグード王子、マージェス王子……い、いかがなさいました?」
「なんだか……短い間に随分仲良くなったんだなと思ってさ」
「そうそう、妬けちゃうくらいにですね」
は?
「「は?」」
あ、声にも出ちまった。
これはボロを出す前に逃げるべし!
「き、気のせいですよ。それではわたくしはこれでっ!」
「し、失礼します!」
マオルーグも同様の考えだったらしく、俺たちはスタコラとバルコニーへ退散する。
熱気や賑やかな声が遠のいて、薄暗さにホッと一息ついた。
「あー夜風が気持ちいい……ここでちょっと落ち着くか」
「おお、ユーシアか」
げげっ、もっとヤバい先客がいた。
いつもならどんちゃん騒ぎの中心にいそうな父上……リンネ国王がはしゃぎ過ぎた酔いをさましに来ていたようだ。
「マオルーグ殿、楽しんどるか?」
「えっ、ああ……はあ、まあ」
「そうか、それなら良かった」
父上はそう言いながらじろじろとマオルーグに視線を送る。
これは何か良くないことを考えてる目……な気がする。
「ユーシアが世話になった。礼を言うぞ」
「た、たまたま通りすがっただけですので……」
「マオルーグ殿……このままリンネに留まり、ユーシアの護衛になるつもりはないか?」
……は?
本日二回目の「は?」だよ父上!
さすがに前世で殺し合う仲だったとか言えないけど、よりによって護衛とか!
「ち、父上、それはっ……ほら、護衛にはもうファイがいますし!」
「そ、そうです! 流れ者の私など姫の護衛には相応しくありません!」
「ははは、二人とも息ピッタリだな。会って間もなくそれならきっと良い護衛役になれよう」
父上の中ではもう決定らしく、満足したのか笑いながら明るい場へと戻っていく。
ちょっと強引なとこあるんだよな、あのおっさん……
「どうするのだ……」
「どう、って……俺の寝首かくつもりがないなら、別にいいけど……」
「非力な小娘相手に誰がそんなことするか!」
だよな、マオたんプライド高いもんな。
「……じゃあ、寝込みを襲う気は?」
ちょっとからかってやろうと意味ありげにたっぷり含めた口調で、姫生活十七年で習得した奥義『上目遣い』を炸裂させてみる。
今朝ファイにも似たようなこと言ったけどな。
「んなっ!?」
効くのかよ。
「ジョーダンだよ、ジョーダン」
「きっ、き、貴様っ……ふざけるな! そもそも中身おっさんだろうが!」
明らかに動揺して耳まで真っ赤なマオたん、意外と純情でいらした。
「ごめんごめん。これからよろしくな、マーオたんっ」
「マオたん言うなあ!」
こうして、俺の十七歳の誕生日は賑やかに締め括られた。
まあパーティーにかこつけてどんちゃん騒ぎたいだけなんだろーけど……平和だなあ。
「こんな平和な世界に生まれて、幸せなこった」
「そうだな」
いきなり華やかな場に連れてこられたマオルーグは、落ち着かないのか俺の隣で盃を傾けている。
ある意味お互いよく知った仲だからか、まだここにいる方がマシらしい。
「やあ、今日の主役とヒーローがお揃いで」
「こんばんは。良い夜ですねユーシア姫」
出た、キラキラ王子と淑やか王子。
きょとんとしているマオルーグに「あれお前の元ペットと部下だぞ」と教えたら口を半開きにして二度見していた。
「クリムゾンドラゴンとダークマージ……?」
「そ。ついでにさっき会ったスカルグもお前の部下の骸骨騎士だしファイは俺の仲間の戦士な。みんな前世の記憶ないけど」
「なん、だと……」
わかる、驚愕だよな。
「主よりイケメンに生まれ変わるとは何事か……!」
「いやそこかよ!」
と、
「「…………」」
気づけば二人の王子が俺たちのやりとりをしばらくぽかんと眺めていた。
二人からすれば訳わかんない話してるもんな、と俺は今更な咳払いでごまかす。
「ラグード王子、マージェス王子……い、いかがなさいました?」
「なんだか……短い間に随分仲良くなったんだなと思ってさ」
「そうそう、妬けちゃうくらいにですね」
は?
「「は?」」
あ、声にも出ちまった。
これはボロを出す前に逃げるべし!
「き、気のせいですよ。それではわたくしはこれでっ!」
「し、失礼します!」
マオルーグも同様の考えだったらしく、俺たちはスタコラとバルコニーへ退散する。
熱気や賑やかな声が遠のいて、薄暗さにホッと一息ついた。
「あー夜風が気持ちいい……ここでちょっと落ち着くか」
「おお、ユーシアか」
げげっ、もっとヤバい先客がいた。
いつもならどんちゃん騒ぎの中心にいそうな父上……リンネ国王がはしゃぎ過ぎた酔いをさましに来ていたようだ。
「マオルーグ殿、楽しんどるか?」
「えっ、ああ……はあ、まあ」
「そうか、それなら良かった」
父上はそう言いながらじろじろとマオルーグに視線を送る。
これは何か良くないことを考えてる目……な気がする。
「ユーシアが世話になった。礼を言うぞ」
「た、たまたま通りすがっただけですので……」
「マオルーグ殿……このままリンネに留まり、ユーシアの護衛になるつもりはないか?」
……は?
本日二回目の「は?」だよ父上!
さすがに前世で殺し合う仲だったとか言えないけど、よりによって護衛とか!
「ち、父上、それはっ……ほら、護衛にはもうファイがいますし!」
「そ、そうです! 流れ者の私など姫の護衛には相応しくありません!」
「ははは、二人とも息ピッタリだな。会って間もなくそれならきっと良い護衛役になれよう」
父上の中ではもう決定らしく、満足したのか笑いながら明るい場へと戻っていく。
ちょっと強引なとこあるんだよな、あのおっさん……
「どうするのだ……」
「どう、って……俺の寝首かくつもりがないなら、別にいいけど……」
「非力な小娘相手に誰がそんなことするか!」
だよな、マオたんプライド高いもんな。
「……じゃあ、寝込みを襲う気は?」
ちょっとからかってやろうと意味ありげにたっぷり含めた口調で、姫生活十七年で習得した奥義『上目遣い』を炸裂させてみる。
今朝ファイにも似たようなこと言ったけどな。
「んなっ!?」
効くのかよ。
「ジョーダンだよ、ジョーダン」
「きっ、き、貴様っ……ふざけるな! そもそも中身おっさんだろうが!」
明らかに動揺して耳まで真っ赤なマオたん、意外と純情でいらした。
「ごめんごめん。これからよろしくな、マーオたんっ」
「マオたん言うなあ!」
こうして、俺の十七歳の誕生日は賑やかに締め括られた。