マオルーグと手紙
報告……そう、報告だ。
最近の目新しいこと、友人の話……それと、父上も母上も期待しているのは、いわゆる“いいひと”の話。
ふらふらと旅をしていた根無し草がリンネへの定住を決めたのは、そういうことがあったからだろうかと妙な勘違いをしたらしく、最近の手紙にはやたらとそういった内容を聞き出そうとする空気が醸し出されている。
やれやれ、困ったことだ……
「その理屈で言ったらホーリス王子も気になる人を見つけたことになりますね」
「!?」
これまでの経緯をスカルグに話していたら、突然そんな言葉が飛び出すものだから、思わずむせてしまった。
き、貴様、不意討ちなどしない奴だったろう……と言いたいところだが、本人にそのつもりはない。
「ど、どうしてヤツが出てくる!」
「彼も旅人でしたから。リンネを気に入ってくださったようですけどね」
そうだそうだ、それ以上の理由などありはしない!
我だってリンネのこの、程よい空気とか……なんかそんな感じの……そこが気に入って定住を決めたのだ!
「それにしても、御両親の手紙の内容など……そんな大切なお話を、どうして私に?」
「相談相手が欲しかったのだ。貴様なら、茶化さず、余計な詮索もせず……なにより、信じられるからな」
「そ、それは随分と買われていますね……」
ああそうだ、前世から買っているからな。
前世の関わりがなくても、この話を聞かせるならば真面目で誠実なこいつしかいなかっただろうが。
「家族への手紙……私もよく書きますよ。実家には弟妹もいますし」
「そういえばそんなことを言っていたな」
ならば尚更、相談相手に選んだのは間違いではなかったということか。
「それで、相談とは……?」
「うむ。父上も母上も我に恋人や結婚相手がいるのかしきりに聞いてくるようになったからな……うまくかわして、無難な返事をしておきたいと思ってな」
と、ここまで言って、ふと気になった。
目の前のこの男だって、独身のはずだ。
「……貴様はそういうことは聞かれないのか?」
「結婚ですか? ふふ、とっくに諦められていますよ。どうせ剣が恋人だろうって。両親ももう弟妹の方に期待しています」
なるほど、そういう風になるのか……
そうやって諦めてもらえるのは楽だが、我にはそこまでの執着を持つものがない上に兄弟もなく……少々難しそうだ。
とはいえ魔王だった我に人間の娘との結婚など……いや今は同じ人間なのだが、なかなか考えられそうにない。
「ひとまず、手紙に書く内容を探してみてはいかがですか? 外に出れば自ずと見つかりましょう」
「それもそうだな……おい、付き合え」
「はい、ご随意に」
柔らかく笑って、後ろからついて来るスカルグ。
前世を思い出して落ち着くな……心許せる友人として、手紙に記しておこう。
最近の目新しいこと、友人の話……それと、父上も母上も期待しているのは、いわゆる“いいひと”の話。
ふらふらと旅をしていた根無し草がリンネへの定住を決めたのは、そういうことがあったからだろうかと妙な勘違いをしたらしく、最近の手紙にはやたらとそういった内容を聞き出そうとする空気が醸し出されている。
やれやれ、困ったことだ……
「その理屈で言ったらホーリス王子も気になる人を見つけたことになりますね」
「!?」
これまでの経緯をスカルグに話していたら、突然そんな言葉が飛び出すものだから、思わずむせてしまった。
き、貴様、不意討ちなどしない奴だったろう……と言いたいところだが、本人にそのつもりはない。
「ど、どうしてヤツが出てくる!」
「彼も旅人でしたから。リンネを気に入ってくださったようですけどね」
そうだそうだ、それ以上の理由などありはしない!
我だってリンネのこの、程よい空気とか……なんかそんな感じの……そこが気に入って定住を決めたのだ!
「それにしても、御両親の手紙の内容など……そんな大切なお話を、どうして私に?」
「相談相手が欲しかったのだ。貴様なら、茶化さず、余計な詮索もせず……なにより、信じられるからな」
「そ、それは随分と買われていますね……」
ああそうだ、前世から買っているからな。
前世の関わりがなくても、この話を聞かせるならば真面目で誠実なこいつしかいなかっただろうが。
「家族への手紙……私もよく書きますよ。実家には弟妹もいますし」
「そういえばそんなことを言っていたな」
ならば尚更、相談相手に選んだのは間違いではなかったということか。
「それで、相談とは……?」
「うむ。父上も母上も我に恋人や結婚相手がいるのかしきりに聞いてくるようになったからな……うまくかわして、無難な返事をしておきたいと思ってな」
と、ここまで言って、ふと気になった。
目の前のこの男だって、独身のはずだ。
「……貴様はそういうことは聞かれないのか?」
「結婚ですか? ふふ、とっくに諦められていますよ。どうせ剣が恋人だろうって。両親ももう弟妹の方に期待しています」
なるほど、そういう風になるのか……
そうやって諦めてもらえるのは楽だが、我にはそこまでの執着を持つものがない上に兄弟もなく……少々難しそうだ。
とはいえ魔王だった我に人間の娘との結婚など……いや今は同じ人間なのだが、なかなか考えられそうにない。
「ひとまず、手紙に書く内容を探してみてはいかがですか? 外に出れば自ずと見つかりましょう」
「それもそうだな……おい、付き合え」
「はい、ご随意に」
柔らかく笑って、後ろからついて来るスカルグ。
前世を思い出して落ち着くな……心許せる友人として、手紙に記しておこう。