世界を救った伝説の勇者の次なる生は
十六歳の誕生日には勇者の記憶が蘇り、十七歳の誕生日には魔王と再会……こりゃあ一体なんの冗談なんだ。
ひとまず俺を助けてくれた魔王……今世ではマオルーグという名の旅の傭兵らしいそいつを連れて、城から離れた人気のない場所へ逃げ込んだ。
「おい、どういうことだよこりゃあ」
「それは我の台詞だ。どうして前世で我と戦った勇者がそんな姿をしている?」
「そんな美少女の姿で悪かったな。今はリンネ国のお姫様やってますごめんあそばせー」
「おっさんがか」
「やかましいわ!」
改めて前世の姿とのギャップを指摘されるとは思わなかったけどツラいなこれ。
「それであの構えか……納得がいった。というかユーシア姫だと? そのまんまか」
「なっ、マオルーグだって魔王割とまんまじゃねーか! マオたんって呼ぶぞこら!」
「誰がマオたんだ!」
鼻で笑うマオたんに反撃してやると意外と良い反応を返してくる。
しかし前世の姿で想像すると、実に見苦しい争いだな……
「……まあいいや。マオたんはたまたまこのリンネに来たのか? 国家転覆を狙ってるとかじゃなく?」
「ふん、今の我はこれといって野心を抱く理由もなければ人間に対する復讐心もない。そもそも今は人間だしな。本当にただの通りすがりだ」
「ふうん」
うーむ、さすがにもっかい魔王にはならないか。
「じゃあもういっこ。俺のこと、憎くないのか?」
「……決着なら前世できっちりつけた。魔王でなくなった今世で、勇者でなくなった貴様を前に蒸し返すのは違うだろう。複雑な気持ちにはなれど、憎しみはない」
あら潔い。
「そっかあ……うん。俺も、今のお前は憎くはないや。むしろちょっと懐かしかった」
「いい思い出とは言い難いがな」
じゃあ、ちょっとしみじみと昔を懐かしんだところで……
「姫!」
「ユーシア様!」
「げ」
達者で暮らせよ、とマオルーグに別れを告げるつもりだった俺は、自分を探しに来たファイとスカルグの声にびくりと肩を跳ねさせた。
そりゃあそうか、魔物に襲われただのいなくなっただの情報が入っただろうしな。
「あっ、いた! ユーシア様、こんな場所にお一人では危険で……その方は?」
「ファイ、目撃者からの情報によると姫を助けた男がいたという話だ」
俺を見つけた途端眉間に皺を寄せる、ファイのいつもの説教顔。
二人は俺とマオの間に入り、じっと見上げる。
「姫を助けてくださりありがとうございます。私は騎士団のスカルグと申します」
「ユーシア様の護衛役、ファイです」
「旅の傭兵、マオルーグだ。保護者が見つかったのなら俺はもう……」
あ、マオたんもすぐここを離れようとしてる。
けれどもファイが進み出て、逞しい傭兵の腕を両手で掴んだ。
「ユーシア様の恩人に礼もせず、そのまま行かせてしまっては王にあわせる顔がありません」
「王からも、夜に開かれる姫様の誕生日パーティーに是非と……」
「な、なに!?」
あー忘れてた、そういう流れになるよなこれ。
「ま、しょーがないか。せっかくだから城のうまい飯でも食ってけよ、マオたん?」
「うまい飯……」
その瞬間、マオの腹から元気な鳴き声が聴こえた。
「……ちっ! 今回だけだぞ勇者! ご馳走になったらすぐこんな国出ていってやるからな!」
「はいはい、行くぞー」
マオたん、それフラグだからな。
なんかろくでもない予感がしつつ、俺たちは城へと戻るのだった。
ひとまず俺を助けてくれた魔王……今世ではマオルーグという名の旅の傭兵らしいそいつを連れて、城から離れた人気のない場所へ逃げ込んだ。
「おい、どういうことだよこりゃあ」
「それは我の台詞だ。どうして前世で我と戦った勇者がそんな姿をしている?」
「そんな美少女の姿で悪かったな。今はリンネ国のお姫様やってますごめんあそばせー」
「おっさんがか」
「やかましいわ!」
改めて前世の姿とのギャップを指摘されるとは思わなかったけどツラいなこれ。
「それであの構えか……納得がいった。というかユーシア姫だと? そのまんまか」
「なっ、マオルーグだって魔王割とまんまじゃねーか! マオたんって呼ぶぞこら!」
「誰がマオたんだ!」
鼻で笑うマオたんに反撃してやると意外と良い反応を返してくる。
しかし前世の姿で想像すると、実に見苦しい争いだな……
「……まあいいや。マオたんはたまたまこのリンネに来たのか? 国家転覆を狙ってるとかじゃなく?」
「ふん、今の我はこれといって野心を抱く理由もなければ人間に対する復讐心もない。そもそも今は人間だしな。本当にただの通りすがりだ」
「ふうん」
うーむ、さすがにもっかい魔王にはならないか。
「じゃあもういっこ。俺のこと、憎くないのか?」
「……決着なら前世できっちりつけた。魔王でなくなった今世で、勇者でなくなった貴様を前に蒸し返すのは違うだろう。複雑な気持ちにはなれど、憎しみはない」
あら潔い。
「そっかあ……うん。俺も、今のお前は憎くはないや。むしろちょっと懐かしかった」
「いい思い出とは言い難いがな」
じゃあ、ちょっとしみじみと昔を懐かしんだところで……
「姫!」
「ユーシア様!」
「げ」
達者で暮らせよ、とマオルーグに別れを告げるつもりだった俺は、自分を探しに来たファイとスカルグの声にびくりと肩を跳ねさせた。
そりゃあそうか、魔物に襲われただのいなくなっただの情報が入っただろうしな。
「あっ、いた! ユーシア様、こんな場所にお一人では危険で……その方は?」
「ファイ、目撃者からの情報によると姫を助けた男がいたという話だ」
俺を見つけた途端眉間に皺を寄せる、ファイのいつもの説教顔。
二人は俺とマオの間に入り、じっと見上げる。
「姫を助けてくださりありがとうございます。私は騎士団のスカルグと申します」
「ユーシア様の護衛役、ファイです」
「旅の傭兵、マオルーグだ。保護者が見つかったのなら俺はもう……」
あ、マオたんもすぐここを離れようとしてる。
けれどもファイが進み出て、逞しい傭兵の腕を両手で掴んだ。
「ユーシア様の恩人に礼もせず、そのまま行かせてしまっては王にあわせる顔がありません」
「王からも、夜に開かれる姫様の誕生日パーティーに是非と……」
「な、なに!?」
あー忘れてた、そういう流れになるよなこれ。
「ま、しょーがないか。せっかくだから城のうまい飯でも食ってけよ、マオたん?」
「うまい飯……」
その瞬間、マオの腹から元気な鳴き声が聴こえた。
「……ちっ! 今回だけだぞ勇者! ご馳走になったらすぐこんな国出ていってやるからな!」
「はいはい、行くぞー」
マオたん、それフラグだからな。
なんかろくでもない予感がしつつ、俺たちは城へと戻るのだった。