ぶらり冒険、夢紀行
俺はユーシアだけど勇者で、魔王のマオルーグが暴れていて。
見慣れたリンネの景色は俺が勇者だった時代にはなかったものだったりして、なんだか混乱する世界だ。
夢ならそのうち覚めるだろうけど、せっかく冒険に出られるチャンスだし……何よりこういう時真っ先に反対しそうなファイが、今は勇者の相棒として旅を促している。
「じっとしてるのも何だ。とりあえず魔王倒しに行ってみるか!」
「な、なんか軽いな……」
あとあれ、夢の中の世界やみんな……何より、魔王マオルーグがどうなってるかめっちゃ気になる。
「今、魔王様倒す、言ったのか?」
「へ?」
と、突然周りの景色が変わった。
リンネにいたはずの俺たちは、いきなり薄暗くて悪趣味な城……生まれ変わろうと忘れはしない、魔王の居城の真っ只中に。
「え、展開早くね……?」
いや、夢だからこそか。
リンネの外をもっと歩き回ってみたかった気もするけど、箱入りお姫様になっちまった今の俺が知っている“外”ってつまりは“勇者として旅をしてきたところ”になるだろうし……それにしても、いきなり魔王城にワープはないだろと思うが。
で、魔王を様づけで呼ぶヤツということは……
「ラグード王子……いや、クリムゾンドラゴン?」
燃えるような赤髪と金茶の目をしたイケメン、ラグード王子が、じっとこちらを睨んでいる。
元の顔がいいだけに迫力があるなあ、なんて呑気なことを考えると同時に、前世で戦ったあのドラゴンは問答無用で火を噴いてきたことを思い出す。
「魔王マオルーグ様倒す、勇者か?」
「お……おう」
あれ、カタコト?
クリムゾンドラゴンと言葉を交わしたことはなかったし、喋れるかどうかなんてわからなかった。
でも前にチサナ村近くの洞窟で会ったドラゴンの女の子は流暢だったし、そこは個人差……個竜差だろうか。
「勇者倒す! 魔王様に頭なでなでしてもらう!」
「うわーシンプルに襲ってきた!」
これは絶対絶命かと思った瞬間、ラグード王子は自分の長い脚をもう片方の脚に引っ掛けて派手に転んでしまった。
「あ」
「あれ……?」
きょとんとする三人。
俺とファイも思わず顔を見合わせ、一瞬時が止まる。
「うまく走れない……なんだこの細長い手足……火も吐けない! なんで!?」
「今更かよ!」
ああそうか、コイツだけ巨大なドラゴンから人間でだいぶ勝手が違うのかなー……って、そういう話なのか?
「……なあファイ、これ倒しちゃうのかわいそうじゃね?」
「オレもなんかそんな気がしてきた……」
倒すのはかわいそう、でも鼻息荒く迫るドラゴンくん(見た目イケメン)はスルーして進ませてはくれないだろう。
ならば、とる行動はひとつ。
「やめろ勇者ー! わーんまおうさまー!」
「うわああ罪悪感がすげえ!」
「なあこれ傍から見たらオレ達が悪役じゃないか!?」
暴れるラグード王子を無理矢理縛って、追いかけられないようにしておくこと。
二人がかりで捕縛したお陰でほぼ無傷で捕らえられたが、子供のように喚く声に何か胸のあたりがものすげえ痛くなった。
見慣れたリンネの景色は俺が勇者だった時代にはなかったものだったりして、なんだか混乱する世界だ。
夢ならそのうち覚めるだろうけど、せっかく冒険に出られるチャンスだし……何よりこういう時真っ先に反対しそうなファイが、今は勇者の相棒として旅を促している。
「じっとしてるのも何だ。とりあえず魔王倒しに行ってみるか!」
「な、なんか軽いな……」
あとあれ、夢の中の世界やみんな……何より、魔王マオルーグがどうなってるかめっちゃ気になる。
「今、魔王様倒す、言ったのか?」
「へ?」
と、突然周りの景色が変わった。
リンネにいたはずの俺たちは、いきなり薄暗くて悪趣味な城……生まれ変わろうと忘れはしない、魔王の居城の真っ只中に。
「え、展開早くね……?」
いや、夢だからこそか。
リンネの外をもっと歩き回ってみたかった気もするけど、箱入りお姫様になっちまった今の俺が知っている“外”ってつまりは“勇者として旅をしてきたところ”になるだろうし……それにしても、いきなり魔王城にワープはないだろと思うが。
で、魔王を様づけで呼ぶヤツということは……
「ラグード王子……いや、クリムゾンドラゴン?」
燃えるような赤髪と金茶の目をしたイケメン、ラグード王子が、じっとこちらを睨んでいる。
元の顔がいいだけに迫力があるなあ、なんて呑気なことを考えると同時に、前世で戦ったあのドラゴンは問答無用で火を噴いてきたことを思い出す。
「魔王マオルーグ様倒す、勇者か?」
「お……おう」
あれ、カタコト?
クリムゾンドラゴンと言葉を交わしたことはなかったし、喋れるかどうかなんてわからなかった。
でも前にチサナ村近くの洞窟で会ったドラゴンの女の子は流暢だったし、そこは個人差……個竜差だろうか。
「勇者倒す! 魔王様に頭なでなでしてもらう!」
「うわーシンプルに襲ってきた!」
これは絶対絶命かと思った瞬間、ラグード王子は自分の長い脚をもう片方の脚に引っ掛けて派手に転んでしまった。
「あ」
「あれ……?」
きょとんとする三人。
俺とファイも思わず顔を見合わせ、一瞬時が止まる。
「うまく走れない……なんだこの細長い手足……火も吐けない! なんで!?」
「今更かよ!」
ああそうか、コイツだけ巨大なドラゴンから人間でだいぶ勝手が違うのかなー……って、そういう話なのか?
「……なあファイ、これ倒しちゃうのかわいそうじゃね?」
「オレもなんかそんな気がしてきた……」
倒すのはかわいそう、でも鼻息荒く迫るドラゴンくん(見た目イケメン)はスルーして進ませてはくれないだろう。
ならば、とる行動はひとつ。
「やめろ勇者ー! わーんまおうさまー!」
「うわああ罪悪感がすげえ!」
「なあこれ傍から見たらオレ達が悪役じゃないか!?」
暴れるラグード王子を無理矢理縛って、追いかけられないようにしておくこと。
二人がかりで捕縛したお陰でほぼ無傷で捕らえられたが、子供のように喚く声に何か胸のあたりがものすげえ痛くなった。