世界を救った伝説の勇者の次なる生は
そんなこんなで、前世からの因縁まみれの今世だが俺は結構楽しくて。
そりゃあいろいろあったし思うところはない訳じゃないけど、今のあいつらには関係ないし、みんないいヤツだし。
「この剣、部屋に戻ったら素振りしてみよっかなー……夜は本を読みながらチータラつまんで、ってまたおっさんみたいだってファイに言われちまうな」
十七歳、花の乙女の誕生日の過ごし方じゃあないな。
などと考えながらもみんなからのプレゼントは嬉しくて、内心うきうきで城へ戻ろうとしたその時だった。
「魔物が暴走してるぞー!」
「へ?」
人々の悲鳴、けたたましい足音。
見れば猪に似た魔物がこちら目掛けて……もしかして、ひらひらのドレスに興奮してる?
「うわっと!」
突進をどうにか避けるとすかさず貰った剣を抜き、体勢を立て直す。
……まさか、こんな早くに出番が来るなんてな。
「女の子が襲われてっ……姫様!?」
「き、騎士団を呼べー!」
「危ない姫様、逃げてー!」
いや、逃げても無駄だろこれ。
幸いスカルグがくれた剣は本当に扱いやすくて、早速護身用の役に立ってくれそうだ。
「今の俺でも、身を守るくらいなら……」
もうひとつ幸いだったのは、魔物が俺を標的と見定めてくれたこと。
完全に怯えきったそこらの一般人よりはこの状況をなんとかできるはず……たぶん。
ええい、出たとこ勝負!
「来いよ、イノシシ野郎ォ!」
と、覚悟を決めた瞬間。
「さがっていろ!」
「はへ?」
今まさにこちらに突っ込もうとする魔物と立ち向かう俺との間に割って入る新たな人影。
騎士団の人間じゃあない、ファイでもない……誰だ?
「ふんっ!」
大柄な男は大剣のひと振りで暴走する魔物を地に沈めた。
後ろに撫でつけた葡萄色の髪が風になびき、鋭い眼光の紅が……やたらと脳裏に焼きつく。
「すっげぇ……」
「魔物相手に逃げずに立ち向かうとは……その格好、どこぞの姫様か?」
「えっ? あっ」
やべえ、口調、えーと……
「た、助けてくださりありがとうございます。わたくし、もう夢中で……とても怖かったですわ」
「? さっきと雰囲気が……それに、剣など握ったことのない者の構えではなかっ」
「お、おほほほ、気のせいですわ!」
あーもうメチャクチャだー!
と、慌てて誤魔化そうと動かした手がふいに男に当たってしまった。
「むっ?」
「あっ、ごめんなさ……」
――――ぶわっ、と景色が変わる。
雷光が照らす魔王城の最深部、玉座の間。
もはや勇者に仲間はなく、魔王も配下を失った。
『これが最後の戦いってヤツだな』
『クククッ……そうだな。どちらかが倒れればこの戦いは終わる。だが負けるつもりは毛頭ない!』
『奇遇だな……俺もだッ!』
僅かな光を反射して煌めく剣を掲げ、勇者は魔王に挑む。
勇者と魔王の戦いは、やがて伝説へ……――――
……って、え?
ちょっと待って……今の映像もしかして……そうなの?
「あ、あ、あ……」
わなわなと震えながら……恩人に対して失礼だとは思うが、反射的に後ずさりしてしまった俺は、ここでもうひとつ別のことに気づく。
「な、なっ……」
なんか相手も同じ反応してませんか……?
「なんだ今のは、何が視えてっ……」
「え、もしかして視えてる!?」
うそ、今まで俺にしか視えてなかった前世の映像が?
「……貴様、貴様はまさか……」
「じゃあお前はやっぱり……」
互いに指をさし、一言。
「勇者……!」
「魔王っ!」
ユーシア姫、十七歳の誕生日……なんと、前世の宿敵と運命の再会を果たしました、ってか。
あれ、これやばくないか……?
そりゃあいろいろあったし思うところはない訳じゃないけど、今のあいつらには関係ないし、みんないいヤツだし。
「この剣、部屋に戻ったら素振りしてみよっかなー……夜は本を読みながらチータラつまんで、ってまたおっさんみたいだってファイに言われちまうな」
十七歳、花の乙女の誕生日の過ごし方じゃあないな。
などと考えながらもみんなからのプレゼントは嬉しくて、内心うきうきで城へ戻ろうとしたその時だった。
「魔物が暴走してるぞー!」
「へ?」
人々の悲鳴、けたたましい足音。
見れば猪に似た魔物がこちら目掛けて……もしかして、ひらひらのドレスに興奮してる?
「うわっと!」
突進をどうにか避けるとすかさず貰った剣を抜き、体勢を立て直す。
……まさか、こんな早くに出番が来るなんてな。
「女の子が襲われてっ……姫様!?」
「き、騎士団を呼べー!」
「危ない姫様、逃げてー!」
いや、逃げても無駄だろこれ。
幸いスカルグがくれた剣は本当に扱いやすくて、早速護身用の役に立ってくれそうだ。
「今の俺でも、身を守るくらいなら……」
もうひとつ幸いだったのは、魔物が俺を標的と見定めてくれたこと。
完全に怯えきったそこらの一般人よりはこの状況をなんとかできるはず……たぶん。
ええい、出たとこ勝負!
「来いよ、イノシシ野郎ォ!」
と、覚悟を決めた瞬間。
「さがっていろ!」
「はへ?」
今まさにこちらに突っ込もうとする魔物と立ち向かう俺との間に割って入る新たな人影。
騎士団の人間じゃあない、ファイでもない……誰だ?
「ふんっ!」
大柄な男は大剣のひと振りで暴走する魔物を地に沈めた。
後ろに撫でつけた葡萄色の髪が風になびき、鋭い眼光の紅が……やたらと脳裏に焼きつく。
「すっげぇ……」
「魔物相手に逃げずに立ち向かうとは……その格好、どこぞの姫様か?」
「えっ? あっ」
やべえ、口調、えーと……
「た、助けてくださりありがとうございます。わたくし、もう夢中で……とても怖かったですわ」
「? さっきと雰囲気が……それに、剣など握ったことのない者の構えではなかっ」
「お、おほほほ、気のせいですわ!」
あーもうメチャクチャだー!
と、慌てて誤魔化そうと動かした手がふいに男に当たってしまった。
「むっ?」
「あっ、ごめんなさ……」
――――ぶわっ、と景色が変わる。
雷光が照らす魔王城の最深部、玉座の間。
もはや勇者に仲間はなく、魔王も配下を失った。
『これが最後の戦いってヤツだな』
『クククッ……そうだな。どちらかが倒れればこの戦いは終わる。だが負けるつもりは毛頭ない!』
『奇遇だな……俺もだッ!』
僅かな光を反射して煌めく剣を掲げ、勇者は魔王に挑む。
勇者と魔王の戦いは、やがて伝説へ……――――
……って、え?
ちょっと待って……今の映像もしかして……そうなの?
「あ、あ、あ……」
わなわなと震えながら……恩人に対して失礼だとは思うが、反射的に後ずさりしてしまった俺は、ここでもうひとつ別のことに気づく。
「な、なっ……」
なんか相手も同じ反応してませんか……?
「なんだ今のは、何が視えてっ……」
「え、もしかして視えてる!?」
うそ、今まで俺にしか視えてなかった前世の映像が?
「……貴様、貴様はまさか……」
「じゃあお前はやっぱり……」
互いに指をさし、一言。
「勇者……!」
「魔王っ!」
ユーシア姫、十七歳の誕生日……なんと、前世の宿敵と運命の再会を果たしました、ってか。
あれ、これやばくないか……?