城下町に幽霊は踊る
「おい、あれは本当に寝ているのか? 立って歩いているのだが……」
「聞いたことがあります。本人は眠っていて完全に意識がないのですが、体が勝手に出歩いてしまう状態があると」
なるほど、その状態のスカルグを幽霊と見間違えたのか。
原因がわかったところで、こいつをどうにかしないとだけど……
「……みまわり、しないと……」
肝心のスカルグはというと、起きる様子もないどころか寝言でそんなことを呟いていて。
「眠っていても仕事か、こやつめ……この状態が続くのは方方に迷惑がかかる。無理矢理叩き起こしてしまっても構わんな?」
マオルーグはフラグっぽいセリフを言いながら剣を構えた。
「敵……!」
眠っていてもやはり剣士なのか、スカルグも同様に構える。
いや待て、なんで寝てるのに帯剣してるんだアイツ。
「お、おいマオルーグ、あんま油断してると……」
「ふん、寝惚けた元部下なんぞに我が後れをとると思うか?」
はい、フラグ追加!
「でぇいっ!」
「……!」
踏み込んだ足に力をこめて振るわれたマオルーグ渾身の一撃は、足元も覚束ないはずのスカルグにひらりと避けられる。
「な、なんだこの動きは?」
さすがのマオルーグも心得ているようで、初撃を外したとわかれば深入りせず一旦退いて様子を窺う。
「気配を察知して最低限の動きでかわす……意識がない分、無駄な雑念もないのでしょうか?」
「厄介ですわね……如何に強力なマオルーグのひと振りでも、当たらなければどうということはない、ですものね」
特にこれといってできることがなさそうな俺たちは実況と解説担当で。
前世ならともかく今の俺がこの二人の間に割って入るのはたぶん無茶だろう。
「ぐぬっ、くそっ、当たらぬ!」
「ほーれがんばれがんばれマーオーたんっ」
「やかましいわ! 何もせぬならせめて静かにしていろ!」
と、マオルーグが余所見をした瞬間にスカルグの姿勢が低くなり、月光に照らされた剣が鋭さを増す。
「マオ、あぶねえ!」
「!」
あれは何かヤバイのが来る前触れだ。
だが咄嗟に叫んだ俺の声に反応して、スカルグが動きを止めた。
「隙ありだ!」
「うあっ!?」
すかさずマオルーグの手がスカルグの細い首を掴み、地面に叩きつける。
「おお、決まった!」
「お見事です!」
衝撃で大きく咳き込んだスカルグはようやく目を開け、そして不思議そうにきょろきょろ見回した。
「あ、れ? 私はどうしてこんな……姫様?」
「スカルグ……何も覚えていないんだな」
部屋で寝ていたはずのこいつにとっては、夜の城下町にいることも、今自分を囲んでいるメンバーにも、全く心当たりがないだろう。
「幽霊騒ぎ……一件落着、でしょうか?」
「人騒がせなヤツだ……」
とりあえず、スカルグに説明してやらないとな。
そういう訳で、俺たちは城に帰ることにした。
「聞いたことがあります。本人は眠っていて完全に意識がないのですが、体が勝手に出歩いてしまう状態があると」
なるほど、その状態のスカルグを幽霊と見間違えたのか。
原因がわかったところで、こいつをどうにかしないとだけど……
「……みまわり、しないと……」
肝心のスカルグはというと、起きる様子もないどころか寝言でそんなことを呟いていて。
「眠っていても仕事か、こやつめ……この状態が続くのは方方に迷惑がかかる。無理矢理叩き起こしてしまっても構わんな?」
マオルーグはフラグっぽいセリフを言いながら剣を構えた。
「敵……!」
眠っていてもやはり剣士なのか、スカルグも同様に構える。
いや待て、なんで寝てるのに帯剣してるんだアイツ。
「お、おいマオルーグ、あんま油断してると……」
「ふん、寝惚けた元部下なんぞに我が後れをとると思うか?」
はい、フラグ追加!
「でぇいっ!」
「……!」
踏み込んだ足に力をこめて振るわれたマオルーグ渾身の一撃は、足元も覚束ないはずのスカルグにひらりと避けられる。
「な、なんだこの動きは?」
さすがのマオルーグも心得ているようで、初撃を外したとわかれば深入りせず一旦退いて様子を窺う。
「気配を察知して最低限の動きでかわす……意識がない分、無駄な雑念もないのでしょうか?」
「厄介ですわね……如何に強力なマオルーグのひと振りでも、当たらなければどうということはない、ですものね」
特にこれといってできることがなさそうな俺たちは実況と解説担当で。
前世ならともかく今の俺がこの二人の間に割って入るのはたぶん無茶だろう。
「ぐぬっ、くそっ、当たらぬ!」
「ほーれがんばれがんばれマーオーたんっ」
「やかましいわ! 何もせぬならせめて静かにしていろ!」
と、マオルーグが余所見をした瞬間にスカルグの姿勢が低くなり、月光に照らされた剣が鋭さを増す。
「マオ、あぶねえ!」
「!」
あれは何かヤバイのが来る前触れだ。
だが咄嗟に叫んだ俺の声に反応して、スカルグが動きを止めた。
「隙ありだ!」
「うあっ!?」
すかさずマオルーグの手がスカルグの細い首を掴み、地面に叩きつける。
「おお、決まった!」
「お見事です!」
衝撃で大きく咳き込んだスカルグはようやく目を開け、そして不思議そうにきょろきょろ見回した。
「あ、れ? 私はどうしてこんな……姫様?」
「スカルグ……何も覚えていないんだな」
部屋で寝ていたはずのこいつにとっては、夜の城下町にいることも、今自分を囲んでいるメンバーにも、全く心当たりがないだろう。
「幽霊騒ぎ……一件落着、でしょうか?」
「人騒がせなヤツだ……」
とりあえず、スカルグに説明してやらないとな。
そういう訳で、俺たちは城に帰ることにした。