マオルーグの休日
人間に転生した我はこのリンネに流れ着いて勇者と再会するまでは、旅の傭兵として特に決まった仕事や休暇のない生活をしていた。
こんな降って湧いた休みに何をして良いのか、正直我にはわからぬ。
……だからっ!
「そう、これはほんの暇潰しなのだ……」
そうでなければこの我が、勇者への誕生日プレゼントを買いに行くなど……
とはいえ下手なものを贈ればセンスのない奴だと思われてしまう、か。
他の者達との内容被りも避けたいところだ……むう。
「やあ、あなたはユーシア姫の……マオルーグ、だったね」
「クリム……ラグード王子」
うっかり前世の名で呼びかけたがその気質を表したような紅蓮の髪は隣国の王子ラグード・リムソ・リオナット。
どうでもいいがその言い方だと我が勇者のものみたいに聞こえて微妙に嫌だな……
「今日はあなたが休暇を?」
「はい。といっても急な話で、どう過ごしたものか……」
「それで女性用のアクセサリーの店に?」
はっ!
し、しまった、これではどこからどう見ても……
「マオルーグもユーシア姫にプレゼントをするんだね! そうか、初対面が彼女の誕生日だったからタイミングを逃して今……なるほど!」
ぐああやはり妙な方向に納得された!
ここで下手に言い訳をしても面倒な流れになりそうだと思った我は観念して、金茶の目を輝かせるラグードに話を合わせることにした。
「……確か、ラグード王子はチータラを贈ったのでしたね」
「彼女の好物だって聞いたからね。きっと喜んでもらえると思って」
そういえば、クリムゾンドラゴンも初めて火のブレスを吐けるようになった時に褒めてやったら城が火事にならんばかりに火炎を吐きまくったな……
今思えばあれは、我に喜んでもらえると……おっと、思考が前世に飛んでしまった。
「喜んでもらえる、か……」
「まあ、それも俺のためなんだけど。彼女が喜べば、笑顔が見られる。笑顔が見られたら、俺が嬉しい。ただそれだけさ」
ぐっ、ま、まぶしい!
これがっ……これが爽やか美形の放つ気というものなのかっ……!
「……確かに、昨日も勇者……姫は皆からの誕生日プレゼントを眺めて幸せそうな顔をしていました」
「そうか、それは嬉しいな!」
頼むからそのキラキラをこちらに向けないでくれ……溶ける。
しかしなんだかんだ前世の本質が残っているようで、少しばかりの安心も覚えた。
というか、全力でぶんぶんと嬉しそうに振る竜の尾が見えた気がするぞ……
「俺はマオルーグの笑う顔も見てみたいな。あなたは何が好きなんだい?」
「なっ……我は、いや、私は、その……」
ぐおお、他意はないのだろうが美形に真正面から見つめられるのは辛い!
この真っ直ぐ過ぎる男のキラキラオーラがちょっと苦手だと言っていた勇者の気持ちが、今ならよくわかるように思えた。
「よ、用事を思い出しました! 失礼します!」
「えっ、あ、マオルーグ!?」
逃げよう。
魔王がペットのドラゴンに背を向けるなど、前世では有り得なかったことだが……美形に転生したわんこ王子様、怖い。
「今日は撫でてくれなかったな……はっ、何を期待していたんだ俺は」
ぽつりと呟いたラグードの言葉は、幸い我の耳には届かなかった。
こんな降って湧いた休みに何をして良いのか、正直我にはわからぬ。
……だからっ!
「そう、これはほんの暇潰しなのだ……」
そうでなければこの我が、勇者への誕生日プレゼントを買いに行くなど……
とはいえ下手なものを贈ればセンスのない奴だと思われてしまう、か。
他の者達との内容被りも避けたいところだ……むう。
「やあ、あなたはユーシア姫の……マオルーグ、だったね」
「クリム……ラグード王子」
うっかり前世の名で呼びかけたがその気質を表したような紅蓮の髪は隣国の王子ラグード・リムソ・リオナット。
どうでもいいがその言い方だと我が勇者のものみたいに聞こえて微妙に嫌だな……
「今日はあなたが休暇を?」
「はい。といっても急な話で、どう過ごしたものか……」
「それで女性用のアクセサリーの店に?」
はっ!
し、しまった、これではどこからどう見ても……
「マオルーグもユーシア姫にプレゼントをするんだね! そうか、初対面が彼女の誕生日だったからタイミングを逃して今……なるほど!」
ぐああやはり妙な方向に納得された!
ここで下手に言い訳をしても面倒な流れになりそうだと思った我は観念して、金茶の目を輝かせるラグードに話を合わせることにした。
「……確か、ラグード王子はチータラを贈ったのでしたね」
「彼女の好物だって聞いたからね。きっと喜んでもらえると思って」
そういえば、クリムゾンドラゴンも初めて火のブレスを吐けるようになった時に褒めてやったら城が火事にならんばかりに火炎を吐きまくったな……
今思えばあれは、我に喜んでもらえると……おっと、思考が前世に飛んでしまった。
「喜んでもらえる、か……」
「まあ、それも俺のためなんだけど。彼女が喜べば、笑顔が見られる。笑顔が見られたら、俺が嬉しい。ただそれだけさ」
ぐっ、ま、まぶしい!
これがっ……これが爽やか美形の放つ気というものなのかっ……!
「……確かに、昨日も勇者……姫は皆からの誕生日プレゼントを眺めて幸せそうな顔をしていました」
「そうか、それは嬉しいな!」
頼むからそのキラキラをこちらに向けないでくれ……溶ける。
しかしなんだかんだ前世の本質が残っているようで、少しばかりの安心も覚えた。
というか、全力でぶんぶんと嬉しそうに振る竜の尾が見えた気がするぞ……
「俺はマオルーグの笑う顔も見てみたいな。あなたは何が好きなんだい?」
「なっ……我は、いや、私は、その……」
ぐおお、他意はないのだろうが美形に真正面から見つめられるのは辛い!
この真っ直ぐ過ぎる男のキラキラオーラがちょっと苦手だと言っていた勇者の気持ちが、今ならよくわかるように思えた。
「よ、用事を思い出しました! 失礼します!」
「えっ、あ、マオルーグ!?」
逃げよう。
魔王がペットのドラゴンに背を向けるなど、前世では有り得なかったことだが……美形に転生したわんこ王子様、怖い。
「今日は撫でてくれなかったな……はっ、何を期待していたんだ俺は」
ぽつりと呟いたラグードの言葉は、幸い我の耳には届かなかった。