その他SS
私の名前はフレッサ。
小動物的で思わず守りたくなるような愛らしい少女だが、これといって尖った特徴のない外見をしている。
そして高貴な身分のイケメン揃いの学園にとある事情で転入してきた、いわゆる乙女ゲームのヒロイン……である。
「最近よく見る異世界転生……まさか私がそうなるなんて……」
本当にひょんなことから、呆気なく終わった私の人生。
永遠だと思っていた眠りから覚めた時、鏡に映った自分の姿を二度見したものだ。
学生時代よく遊んだ乙女ゲームの、まさかヒロインに生まれ変わっていたなんて……
(ちょっと意地悪なライバルの方じゃないなんて)
乙女ゲーム世界に転生するやつでよく見るシチュエーションは、悪役令嬢とかライバルキャラに転生して彼女が迎えるはずのバッドエンドを回避しようとするやつとか、本来のヒロインが現れてヒロインならではのチートっぷりで妨害してくるとか……なんかそんなやつだったと思う。
けれども“私”は悪役でもモブでもない、ヒロインになっていた。
(これはつまり、イケメンとめくるめくラブソースイート的な!?)
やったぁぁぁぁ推しの好感度上げにいくわよ!
私の推しは金髪碧眼正統派美形、光の王子アークライト様!
攻略難度は高いけど、このゲームはやりこんだんだから!
「君は確か、転入生のフレッサ……」
「あっ、アークライト様っ!」
さっそく出会いのイベントね!
ということは、この後わたしは王子を狙った刺客の襲撃に巻き込まれて怪我をして、王子に守られお姫様抱っこで保健室へ……そんな忘れられない鮮烈な体験をするの。
それが、王子との出会い……
「アークライト王子、覚悟ぉ!」
「!」
来た……って、こんなに怖かったっけ!?
「危ないっ!」
「ぐえぇっ!?」
あまりの恐ろしさに私は己の拳で反射的に刺客をブッ飛ばしていた。
刺客の体は宙を高々と舞い、ゴシャアっと嫌な音を立てて派手に落ちた。
そう、バトル漫画でやられるモブのように。
「フ、フレッサ……?」
あれっ、私は確か癒しの聖女の力を秘めてはいるけれど、非力なヒロインだったはず……
力や体力のパラメーターはあったし上げられもしたけど、限界まで上げてもイケメン達より高くなることはなかったはず……?
これじゃあ、まるで……
「すごいな君は。お陰で助けられてしまった。もしかして、私より強いのでは?」
うん、そんな気はしてた!
これ絶対力の数値カンストしてるよね!?
お姫様抱っこされるどころかできちゃうよねこれ……なんて思ったその時だった。
「アークライト様、足が……」
「あ、ああ。恥ずかしながら負傷してしまったようだ。けれどもこの程度……」
「いけません! 無理をすれば悪化してしまいます!」
推しのおみ足、だいじ!
私は咄嗟に王子の手を取り、そして。
「えっ……?」
ふわっ、と抱き上げてしまった。
(ま、間違えたーーーー!)
ていうか勢いでふわっとお姫様抱っこできちゃう乙女ゲームの男、羽根のように軽すぎません!?
「あ、あの、フレッサ、この体勢はちょっと……」
ああああでも赤面するアークライト様がかわいすぎる……!
ゲームじゃ見られない、見たこともない推しの表情に興奮し、新たな扉が開く音がした。
「……このまま行きましょう」
「え?」
「保健室まで行きましょう、早く! 私の理性が保つ間に!」
「り、理性?」
私はアークライト様を抱き上げたまま、保健室へと向かっていった。
だってもうこうするしかないしぶっちゃけ早いから!
(この私を、だ、抱き上げるなんて……っ)
これがアークライト王子にとって忘れられない、鮮烈な体験となったのだけど、この時の私はそれどころじゃなくて。
(フレッサ……なんて強くたくましい女性なんだ……)
王子の中で妙なフラグが立ってしまったことなど、知る由もなかった。
小動物的で思わず守りたくなるような愛らしい少女だが、これといって尖った特徴のない外見をしている。
そして高貴な身分のイケメン揃いの学園にとある事情で転入してきた、いわゆる乙女ゲームのヒロイン……である。
「最近よく見る異世界転生……まさか私がそうなるなんて……」
本当にひょんなことから、呆気なく終わった私の人生。
永遠だと思っていた眠りから覚めた時、鏡に映った自分の姿を二度見したものだ。
学生時代よく遊んだ乙女ゲームの、まさかヒロインに生まれ変わっていたなんて……
(ちょっと意地悪なライバルの方じゃないなんて)
乙女ゲーム世界に転生するやつでよく見るシチュエーションは、悪役令嬢とかライバルキャラに転生して彼女が迎えるはずのバッドエンドを回避しようとするやつとか、本来のヒロインが現れてヒロインならではのチートっぷりで妨害してくるとか……なんかそんなやつだったと思う。
けれども“私”は悪役でもモブでもない、ヒロインになっていた。
(これはつまり、イケメンとめくるめくラブソースイート的な!?)
やったぁぁぁぁ推しの好感度上げにいくわよ!
私の推しは金髪碧眼正統派美形、光の王子アークライト様!
攻略難度は高いけど、このゲームはやりこんだんだから!
「君は確か、転入生のフレッサ……」
「あっ、アークライト様っ!」
さっそく出会いのイベントね!
ということは、この後わたしは王子を狙った刺客の襲撃に巻き込まれて怪我をして、王子に守られお姫様抱っこで保健室へ……そんな忘れられない鮮烈な体験をするの。
それが、王子との出会い……
「アークライト王子、覚悟ぉ!」
「!」
来た……って、こんなに怖かったっけ!?
「危ないっ!」
「ぐえぇっ!?」
あまりの恐ろしさに私は己の拳で反射的に刺客をブッ飛ばしていた。
刺客の体は宙を高々と舞い、ゴシャアっと嫌な音を立てて派手に落ちた。
そう、バトル漫画でやられるモブのように。
「フ、フレッサ……?」
あれっ、私は確か癒しの聖女の力を秘めてはいるけれど、非力なヒロインだったはず……
力や体力のパラメーターはあったし上げられもしたけど、限界まで上げてもイケメン達より高くなることはなかったはず……?
これじゃあ、まるで……
「すごいな君は。お陰で助けられてしまった。もしかして、私より強いのでは?」
うん、そんな気はしてた!
これ絶対力の数値カンストしてるよね!?
お姫様抱っこされるどころかできちゃうよねこれ……なんて思ったその時だった。
「アークライト様、足が……」
「あ、ああ。恥ずかしながら負傷してしまったようだ。けれどもこの程度……」
「いけません! 無理をすれば悪化してしまいます!」
推しのおみ足、だいじ!
私は咄嗟に王子の手を取り、そして。
「えっ……?」
ふわっ、と抱き上げてしまった。
(ま、間違えたーーーー!)
ていうか勢いでふわっとお姫様抱っこできちゃう乙女ゲームの男、羽根のように軽すぎません!?
「あ、あの、フレッサ、この体勢はちょっと……」
ああああでも赤面するアークライト様がかわいすぎる……!
ゲームじゃ見られない、見たこともない推しの表情に興奮し、新たな扉が開く音がした。
「……このまま行きましょう」
「え?」
「保健室まで行きましょう、早く! 私の理性が保つ間に!」
「り、理性?」
私はアークライト様を抱き上げたまま、保健室へと向かっていった。
だってもうこうするしかないしぶっちゃけ早いから!
(この私を、だ、抱き上げるなんて……っ)
これがアークライト王子にとって忘れられない、鮮烈な体験となったのだけど、この時の私はそれどころじゃなくて。
(フレッサ……なんて強くたくましい女性なんだ……)
王子の中で妙なフラグが立ってしまったことなど、知る由もなかった。