19~葛藤、そして~
マナスポットで目を覚ましたランシッドに、一行はこれまでの道のり、彼が眠っている間に何があったかを簡単に説明した。
詳しい話は落ち着けるところで……という訳で、遺跡を出てすぐの場所にあるオアシスにアングレーズが案内をする。
「ここなら簡易結界があって魔物は近付かないし、通りすがりの旅人でもいなければ話を聞かれる心配もないと思うわ」
「ならここで話をまとめつつ一晩休んで、それからパスティヤージュに戻るとするか」
カカオがそう言って野宿の準備を始めた時には、日は既に傾き始めていた。
そして、夜……
『大人になったアングレーズにガレ、俺が眠りについた直後に現れた未来の人間か……どうやら時空の壁はどんどん不安定になってるみたいだね』
焚き火を囲み、メリーゼ達から一通り話を聞いたランシッドは、顎に手を添えて眉間に皺を寄せる。
時空を司る精霊である彼にとっては、自分の預かり知らぬところで過去から魔物が現れたことも、別の時代からやって来た者がいることも大きな問題であった。
「あ、でもランシッドおじちゃんが目覚めたってことは、二人とも元の時代に帰っちゃうの?」
せっかくちょっと馴染んできたのになあ、と残念そうにモカが呟く。
ランシッドは『そうだね……』と未来人達に視線をやった。
『……いや、やっぱり彼らにもしばらく同行して貰おう』
「え? だっていつもボク達が過去に行く時は……」
時空干渉を阻止するため過去の時代に転移した時は、自分達は違う時代の異物だと言われ、必要以上に過去のものとの接触を避けさせられた。
その考えでいけばアングレーズやガレにとって、この現代はあまり長く留まってはいけないのではないだろうか、とモカ以外にも疑問を浮かべるが、
『俺にもいろいろ考えてることがあるの。それじゃ、二人には後で個人的に話があるから』
ランシッドは多くを語らず、さっさと話を切り上げた。
「それは……我々が知ってはいけない内容の話、ですか」
クローテが青藍の瞳を真っ直ぐに時精霊に向ける。
『その可能性はないとは言えない。彼らはみんなにとっての未来を知っているからね……何気ないことでも、もしかしたら影響を与えてしまうかもしれない』
「……わかりました」
ランシッドにそう答えられると、クローテはそれ以上は食い下がらずにテントの方へと歩いていく。
「なんだぁ? クローテのヤツ、なんか意味深っつーか……」
「あいつはあいつなりに、仲間を心配してるってことだよ」
首を捻るカカオに「ちょっと不器用だけどな」と付け足して、ブオルは笑うのだった。
詳しい話は落ち着けるところで……という訳で、遺跡を出てすぐの場所にあるオアシスにアングレーズが案内をする。
「ここなら簡易結界があって魔物は近付かないし、通りすがりの旅人でもいなければ話を聞かれる心配もないと思うわ」
「ならここで話をまとめつつ一晩休んで、それからパスティヤージュに戻るとするか」
カカオがそう言って野宿の準備を始めた時には、日は既に傾き始めていた。
そして、夜……
『大人になったアングレーズにガレ、俺が眠りについた直後に現れた未来の人間か……どうやら時空の壁はどんどん不安定になってるみたいだね』
焚き火を囲み、メリーゼ達から一通り話を聞いたランシッドは、顎に手を添えて眉間に皺を寄せる。
時空を司る精霊である彼にとっては、自分の預かり知らぬところで過去から魔物が現れたことも、別の時代からやって来た者がいることも大きな問題であった。
「あ、でもランシッドおじちゃんが目覚めたってことは、二人とも元の時代に帰っちゃうの?」
せっかくちょっと馴染んできたのになあ、と残念そうにモカが呟く。
ランシッドは『そうだね……』と未来人達に視線をやった。
『……いや、やっぱり彼らにもしばらく同行して貰おう』
「え? だっていつもボク達が過去に行く時は……」
時空干渉を阻止するため過去の時代に転移した時は、自分達は違う時代の異物だと言われ、必要以上に過去のものとの接触を避けさせられた。
その考えでいけばアングレーズやガレにとって、この現代はあまり長く留まってはいけないのではないだろうか、とモカ以外にも疑問を浮かべるが、
『俺にもいろいろ考えてることがあるの。それじゃ、二人には後で個人的に話があるから』
ランシッドは多くを語らず、さっさと話を切り上げた。
「それは……我々が知ってはいけない内容の話、ですか」
クローテが青藍の瞳を真っ直ぐに時精霊に向ける。
『その可能性はないとは言えない。彼らはみんなにとっての未来を知っているからね……何気ないことでも、もしかしたら影響を与えてしまうかもしれない』
「……わかりました」
ランシッドにそう答えられると、クローテはそれ以上は食い下がらずにテントの方へと歩いていく。
「なんだぁ? クローテのヤツ、なんか意味深っつーか……」
「あいつはあいつなりに、仲間を心配してるってことだよ」
首を捻るカカオに「ちょっと不器用だけどな」と付け足して、ブオルは笑うのだった。