18~頼れる仲間~
それからどのぐらい進んだだろうか、枝分かれした通路を抜けて広間に出たところで、清き風花から『もうそろそろ合流地点ですよ』と伝えられた。
カカオ達のもとへ戻っていく小さな背中が今はみちしるべであり、頼もしい彼らの命綱だ。
「進む先を照らしてくれるのはありがたいなあ」
「はい。もうちょっとでみんなに……あっ!」
和やかな空気はそこで終わり、各々の瞳に鋭い光が宿る。
部屋の天井からぼたぼたと落ちてきた黒い塊……恐らくは転移してきたのか、或いは元から住み着いていたのか“総てに餓えし者”の眷属達がメリーゼ達を待ち構えていた。
「こいつらっ……!」
「わたし達が前衛で魔物を食い止めるので、アングレーズさんは後方から術支援をお願いします!」
「ええ、わかったわ!」
三人の切り替えは早く、さっさと態勢を立て直してそれぞれ武器を構える。
一番頑丈な自分が盾になるべく、ブオルが我先にと魔物に突撃してその勢いのままに斧を振り回した。
「レディ達にゃ触れさせねえぞ!」
衣装は変わって身分を隠している彼だがやはり騎士であることにはかわりなく、巨体を存分に暴れさせ魔物を蹴散らしていく。
そんな後ろ姿を見たメリーゼは、胸に熱いものが流れるのを感じた。
「わたしだって騎士です!」
ブオルが討ち漏らした魔物が後方のアングレーズに届かないように、双剣を閃かせ鋭く斬り込む。
豪快で力任せなブオルと素早く一撃が正確なメリーゼは背中合わせに互いを補い合って立ち回った。
(この感じ、ホイップの若い頃を思い出すなあ……)
彼女はもっときつい性格だったけど、などと笑みをこぼしながら飛び掛かってきた魔物を丸太のような足で蹴り飛ばし、斧のひと振りで追撃。
本来なら精霊の助けなしには有り得ない時空転移を身一つでしてしまった影響で一時的に力の一部を失ったブオルだったが、積み重ねられた経験と技量、そして旅で芽生えた仲間への信頼が余裕を生んでいた。
「いいわよ、まとめてお相手するわ!」
と、アングレーズの両手のバトンが踊り、鈴の音が遺跡の内部に鳴り響く。
「地を這う者よ、その足許は危うきもの。気まぐれなる女神の戯れに踊り……」
詠唱と共に魔物達をぐるりと囲む光の円陣が地面に生じ、黒い異形が重力などないようにふわりと浮き上がる。
突然のことに混乱して手足をばたつかせるも空中では自由がきかず、何の抵抗にもならないまま高度ばかりが上がっていく。
「墜ちなさい!」
シャン、と強く鈴を鳴らしてアングレーズが指し示した先で、吊り上げていた糸が切れたように魔物達が床に叩きつけられた。
「すごい……」
「えっぐい術だなあ、おい……」
既にふたりがある程度ダメージを与えていたため、群れの大半はアングレーズの術によって消滅し、残りもほぼ虫の息で消えかかっていた。
「ふう……」
「これでカカオ君達と合流できますね。急ぎましょう!」
しかしメリーゼが立ち去ろうとした、瞬間。
「メリーゼ、危ない!」
「えっ……!?」
それは恐ろしいまでの執念だった。
もはや消滅まで秒読みだったであろう魔物の一体がメリーゼに飛び掛かり、彼女の細い身体に消えかけた四肢でがっちりと絡みついた。
「うぁ……っ!」
「メリーゼちゃんっ!」
ブオルがすかさず駆け寄って魔物を引き剥がし、今度こそ力尽きるのを見届けるが、
「メリーゼ! しっかりしろ、メリーゼっ!」
その一瞬で何かされたのだろうか、ぐったりとブオルに寄り掛かる少女の瞼は重く閉じられていた。
カカオ達のもとへ戻っていく小さな背中が今はみちしるべであり、頼もしい彼らの命綱だ。
「進む先を照らしてくれるのはありがたいなあ」
「はい。もうちょっとでみんなに……あっ!」
和やかな空気はそこで終わり、各々の瞳に鋭い光が宿る。
部屋の天井からぼたぼたと落ちてきた黒い塊……恐らくは転移してきたのか、或いは元から住み着いていたのか“総てに餓えし者”の眷属達がメリーゼ達を待ち構えていた。
「こいつらっ……!」
「わたし達が前衛で魔物を食い止めるので、アングレーズさんは後方から術支援をお願いします!」
「ええ、わかったわ!」
三人の切り替えは早く、さっさと態勢を立て直してそれぞれ武器を構える。
一番頑丈な自分が盾になるべく、ブオルが我先にと魔物に突撃してその勢いのままに斧を振り回した。
「レディ達にゃ触れさせねえぞ!」
衣装は変わって身分を隠している彼だがやはり騎士であることにはかわりなく、巨体を存分に暴れさせ魔物を蹴散らしていく。
そんな後ろ姿を見たメリーゼは、胸に熱いものが流れるのを感じた。
「わたしだって騎士です!」
ブオルが討ち漏らした魔物が後方のアングレーズに届かないように、双剣を閃かせ鋭く斬り込む。
豪快で力任せなブオルと素早く一撃が正確なメリーゼは背中合わせに互いを補い合って立ち回った。
(この感じ、ホイップの若い頃を思い出すなあ……)
彼女はもっときつい性格だったけど、などと笑みをこぼしながら飛び掛かってきた魔物を丸太のような足で蹴り飛ばし、斧のひと振りで追撃。
本来なら精霊の助けなしには有り得ない時空転移を身一つでしてしまった影響で一時的に力の一部を失ったブオルだったが、積み重ねられた経験と技量、そして旅で芽生えた仲間への信頼が余裕を生んでいた。
「いいわよ、まとめてお相手するわ!」
と、アングレーズの両手のバトンが踊り、鈴の音が遺跡の内部に鳴り響く。
「地を這う者よ、その足許は危うきもの。気まぐれなる女神の戯れに踊り……」
詠唱と共に魔物達をぐるりと囲む光の円陣が地面に生じ、黒い異形が重力などないようにふわりと浮き上がる。
突然のことに混乱して手足をばたつかせるも空中では自由がきかず、何の抵抗にもならないまま高度ばかりが上がっていく。
「墜ちなさい!」
シャン、と強く鈴を鳴らしてアングレーズが指し示した先で、吊り上げていた糸が切れたように魔物達が床に叩きつけられた。
「すごい……」
「えっぐい術だなあ、おい……」
既にふたりがある程度ダメージを与えていたため、群れの大半はアングレーズの術によって消滅し、残りもほぼ虫の息で消えかかっていた。
「ふう……」
「これでカカオ君達と合流できますね。急ぎましょう!」
しかしメリーゼが立ち去ろうとした、瞬間。
「メリーゼ、危ない!」
「えっ……!?」
それは恐ろしいまでの執念だった。
もはや消滅まで秒読みだったであろう魔物の一体がメリーゼに飛び掛かり、彼女の細い身体に消えかけた四肢でがっちりと絡みついた。
「うぁ……っ!」
「メリーゼちゃんっ!」
ブオルがすかさず駆け寄って魔物を引き剥がし、今度こそ力尽きるのを見届けるが、
「メリーゼ! しっかりしろ、メリーゼっ!」
その一瞬で何かされたのだろうか、ぐったりとブオルに寄り掛かる少女の瞼は重く閉じられていた。