13~マンジュの夜~
時空干渉により消滅しかかったイシェルナは、カカオ達の活躍で無事元通りの姿になった。
自分が消えてしまわないように抱きついていてくれたガレを「もう大丈夫よ」と離し、イシェルナは改めて一同に向き直る。
「お陰で助かったわ。ありがとう、未来の英雄さん達」
「い、いえ……」
絶世の美女と言って差し支えないマンジュの里長に微笑みかけられ、カカオはぎこちなく頭を下げた。
メリーゼとモカにはない女の迫力というものが彼にはどうにも慣れないようで、時折落ち着かない様子で視線をさまよわせている。
『……けど、今回も何の手がかりも得られなかったな』
「ああ、テラ様って呼ばれてる人物のことね。そうねぇ……残念だけど今のところはこちらでも大した情報は掴んでないわ」
がっくり項垂れるランシッドに、でも、とイシェルナが続ける。
「目に見える情報がないなら、見えない手がかりを探してみたらどうかしら?」
見えない手がかり、という途方もなさそうな言葉にカカオ達に疑問符が浮かぶ。
「神子姫の里、パスティヤージュに行きなさい」
「みこひめ? あの未来が視えるっていう?」
東大陸に住む、神子姫と呼ばれる予知能力をもつ者達。
その名前は知っているが、実際に目にしたことはないカカオ達にはその能力に実感はなく、不確かなものに思えた。
「何の手がかりもないまま動くよりよっぽどいいかもよ。何せあそこにはあたし達の旅を予知した、すっごい神子姫様がいるんだから」
『フィノか……確かに彼女に会ってみるのもアリだね』
「!」
イシェルナとランシッドが共通して思い浮かべた女性の名に最初に反応したのはモカだった。
「フィノ……って、アンのママだよね? ってか、パスティヤージュに行くならアンにも会えるじゃん!」
「ああ、モカはパスティヤージュに友達がいるんだったな」
『そのフィノは二十年前の英雄の一人だよ。時空干渉を受けてないか、確かめに行く必要もありそうだ』
途端に元気になったモカを見て、ガレが不思議そうに首を傾げた。
目的地も決まり、今すぐにでも飛び出しそうな一行を「待った」とイシェルナが引き留める。
「今日はもう疲れたでしょう? この里で休んでから出発なさい」
「え、けど……」
「焦ったらうまくいくものもいかなくなるわ。何が起こるかわからないからこそ、休息はしっかりとること!」
彼女の剣幕に圧され、静かになってしまったところに「返事は?」というだめ押し。
「やっぱすごい人だな、あんた」
ブオルはぽかんとする若者達の中で、笑いを堪えながらそう言うのだった。
自分が消えてしまわないように抱きついていてくれたガレを「もう大丈夫よ」と離し、イシェルナは改めて一同に向き直る。
「お陰で助かったわ。ありがとう、未来の英雄さん達」
「い、いえ……」
絶世の美女と言って差し支えないマンジュの里長に微笑みかけられ、カカオはぎこちなく頭を下げた。
メリーゼとモカにはない女の迫力というものが彼にはどうにも慣れないようで、時折落ち着かない様子で視線をさまよわせている。
『……けど、今回も何の手がかりも得られなかったな』
「ああ、テラ様って呼ばれてる人物のことね。そうねぇ……残念だけど今のところはこちらでも大した情報は掴んでないわ」
がっくり項垂れるランシッドに、でも、とイシェルナが続ける。
「目に見える情報がないなら、見えない手がかりを探してみたらどうかしら?」
見えない手がかり、という途方もなさそうな言葉にカカオ達に疑問符が浮かぶ。
「神子姫の里、パスティヤージュに行きなさい」
「みこひめ? あの未来が視えるっていう?」
東大陸に住む、神子姫と呼ばれる予知能力をもつ者達。
その名前は知っているが、実際に目にしたことはないカカオ達にはその能力に実感はなく、不確かなものに思えた。
「何の手がかりもないまま動くよりよっぽどいいかもよ。何せあそこにはあたし達の旅を予知した、すっごい神子姫様がいるんだから」
『フィノか……確かに彼女に会ってみるのもアリだね』
「!」
イシェルナとランシッドが共通して思い浮かべた女性の名に最初に反応したのはモカだった。
「フィノ……って、アンのママだよね? ってか、パスティヤージュに行くならアンにも会えるじゃん!」
「ああ、モカはパスティヤージュに友達がいるんだったな」
『そのフィノは二十年前の英雄の一人だよ。時空干渉を受けてないか、確かめに行く必要もありそうだ』
途端に元気になったモカを見て、ガレが不思議そうに首を傾げた。
目的地も決まり、今すぐにでも飛び出しそうな一行を「待った」とイシェルナが引き留める。
「今日はもう疲れたでしょう? この里で休んでから出発なさい」
「え、けど……」
「焦ったらうまくいくものもいかなくなるわ。何が起こるかわからないからこそ、休息はしっかりとること!」
彼女の剣幕に圧され、静かになってしまったところに「返事は?」というだめ押し。
「やっぱすごい人だな、あんた」
ブオルはぽかんとする若者達の中で、笑いを堪えながらそう言うのだった。