11~風雅の里の珍客~
―おまけスキット―
~ヒミツの通路~
カカオ「九頭竜の路……こんなでっけえ地下通路が、よくもずっと隠されていたもんだよなあ」
ランシッド『マンジュから世界中に張り巡らされる通路は正にいくつもの頭をもつ竜が首をのばすようだねえ』
メリーゼ「一体いつ、誰がどうやって造ったのかしら……」
ランシッド『俺の時代にはもうあったよ。造ったのはマンジュの民と、聖依獣じゃないかって言われてる』
ブオル「そんな昔からあったんすか……」
ランシッド『かつてマンジュの民はクローテのように人間と聖依獣の狭間の民の集まりだったから、彼らが各地からマンジュの島に集まれるようにって』
モカ「どうして島に集まったの?」
ランシッド『それは……まあ、人間と聖依獣どちらにも馴染めなかったとか』
クローテ「……そういう事も、ありますよね」
ランシッド『でも狭間の民でなくても、自分からそっちで暮らしたいって移っていった人達もいるんだよ。世界を見守る役目を担いたい、とか』
カカオ「まあマンジュに好きなヤツがいたらそっち行くよなー」
クローテ「そんな単純な……」
ランシッド『そういうこと。あとマンジュが気に入ったからとかね。物事は意外と単純に出来てることもある』
モカ「なんだかんだで出来上がったのが、この島なんだね」
ランシッド『そ。なんだかんだでね』
クローテ「……」
~新米精霊~
カカオ「二十年で新米って、精霊の世界はなんかすげえよな……」
清き風花『精霊の時間はゆったりしていますから』
ブオル「って事は、ランシッド様からしたら清き風花は大先輩にあたる訳だ」
ランシッド『まあそうなるね』
カカオ「風花が大先輩……」
メリーゼ「お父様の大先輩……」
モカ「ギャップにも程があるっていうか……」
清き風花『な、なんだか照れちゃいますね』
ブオル「全然偉そうとかじゃないもんなあ」
モカ「先輩命令とかしちゃえば?」
清き風花『めいれい?』
モカ「おう先輩精霊の言うことが聞けねーってのかコラァ、ってさ」
清き風花『お、おう、せんぱいせいれいのっ……』
ランシッド『変なこと教えないでくれる!?』
~マンジュの里の文化~
ブオル「あちこちこぢんまりしてて俺には窮屈なところもあるけど、マンジュって綺麗なとこだなあ」
モカ「それにタタミって床でごろごろすると超~キモチいい~♪」
メリーゼ「モ、モカちゃんっ」
クローテ「堕落の極みだな。はしたない……」
ランシッド『母親そっくりだなぁ……』
カカオ「すげえぞみんな! こいつを見てくれ!」
メリーゼ「カカオ君?」
カカオ「このコタツっていうテーブルに布団がついたやつ、天板の裏に魔学式温熱機がついてるんだけど布団が熱を逃がさなくてすっごく心地いい!」
モカ「なんだって!? そんな画期的なモノが……!」
カカオ「あ~あったけぇ……」
モカ「たまんないねぇ……」
メリーゼ「こ、これは……きもちいいです……」
クローテ「メリーゼまで!?」
モカ「クロ兄もおいでよー」
クローテ「わ、私はそんなモノの誘惑には屈しないぞ……!」
カカオ「委ねちまえば最高だぞー?」
ブオル「いいなあ……俺たぶん入れない……」
クローテ「……あ」
カカオ「ろ、露天風呂入ろうぜおっさん! みんなで一緒に!」
ブオル「カカオ……その心遣いがあったかいぜ……」
メリーゼ「みっ、みんなで、一緒に……?」
クローテ「メリーゼ……さすがに男女は別だ」
~イシェルナは只者じゃない?~
カカオ「気配が全っ然わからなかった……」
ブオル「たぶんあの人、ものすごく強いぞ……身のこなしに隙がない」
ランシッド『気功を纏わせた己の拳と鋭い蹴りが武器の、素早く身軽な格闘家だよ』
メリーゼ「戦ってもいないのに、未熟な私にもひしひしと強さが伝わってくる気がします」
クローテ「ああ、背後をとられた時に寒気がした」
イシェルナ「あら、敏感な子ねぇ」
クローテ「っ!?」
モカ「気配感じなかったんだから鈍感なんじゃ?」
ブオル「そうじゃないぞ、モカ。クローテはイシェルナがわざと発したほんの僅かな殺気を感じ取ったんだ。試したんだろう?」
イシェルナ「そっちのおじさまはお見通しみたいね」
ランシッド『イシェルナ、若者達で遊ばないの』
イシェルナ「未来の英雄さんだっていうから、どれほどのものか気になったのよ」
カカオ「す、すげぇ、次元が違うぜ……」
~カッセの息子~
モカ「あのちびにゃんこにホントに子供がいたなんて……」
ランシッド『聖依獣は見た目で年齢がわかりにくいからね。君のお母さんより年上だって言ったろ?』
メリーゼ「黒い猫耳に尻尾、それに猫の手足……」
クローテ「人間と聖依獣のハーフだな。私と違って、聖依獣の血が濃いのだろう」
メリーゼ「かわいい……!」
モカ「メリーゼ姉?」
メリーゼ「ふわふわの髪にぴこぴこ動く猫耳、長い尻尾……ああっ、肉球はあるのかしら……抱き締めて撫でてみたい……もふ、もふ……」
カカオ「あー、また始まった……」
ブオル「嬢ちゃん、もしかしてああいう子が好み? 年下好き?」
ランシッド『っていうか、可愛いものともふもふした動物が好きなんだよ』
モカ「もふもふ猫耳少年も守備範囲内かぁ……っていうか、それならクロ兄は?」
クローテ「昔さんざんなで回された」
ブオル「なんつーか、お疲れさん……」
~受け継がれる“ししょー”~
ランシッド『今はイシェルナが“ししょー”って呼ばれる側なんだねえ』
イシェルナ「うふふ、可愛い弟子でしょ?」
メリーゼ「師匠……ガレ君に稽古をつけているんですか?」
イシェルナ「父上みたいになりたいでござる、って頼み込まれちゃってね。厳しくしたらめげて諦めてくれると思ったのに、それがぜんぜん」
ランシッド『イシェルナの“厳しく”って……』
イシェルナ「それはご想像にお任せするわ★」
ブオル「ず、随分と魅力的な笑顔で……」
イシェルナ「いくら父親の影を追いかけたって、あの子はカッセにはなれないのよ」
モカ「見た感じもうだいぶ違うもんねえ」
イシェルナ「けどいくらぶちのめしても向かってくる。だから、あの子なりの強さを引き出していくつもりよ」
カカオ「自分なりの……」
イシェルナ「あなたにだって、きっとそういうものが見つかるわ」
カカオ「……!」
イシェルナ「影は何でも知っているのよ、職人見習い君」
クローテ「見透かされているな、カカオ」
カカオ「うー……」
~ヒミツの通路~
カカオ「九頭竜の路……こんなでっけえ地下通路が、よくもずっと隠されていたもんだよなあ」
ランシッド『マンジュから世界中に張り巡らされる通路は正にいくつもの頭をもつ竜が首をのばすようだねえ』
メリーゼ「一体いつ、誰がどうやって造ったのかしら……」
ランシッド『俺の時代にはもうあったよ。造ったのはマンジュの民と、聖依獣じゃないかって言われてる』
ブオル「そんな昔からあったんすか……」
ランシッド『かつてマンジュの民はクローテのように人間と聖依獣の狭間の民の集まりだったから、彼らが各地からマンジュの島に集まれるようにって』
モカ「どうして島に集まったの?」
ランシッド『それは……まあ、人間と聖依獣どちらにも馴染めなかったとか』
クローテ「……そういう事も、ありますよね」
ランシッド『でも狭間の民でなくても、自分からそっちで暮らしたいって移っていった人達もいるんだよ。世界を見守る役目を担いたい、とか』
カカオ「まあマンジュに好きなヤツがいたらそっち行くよなー」
クローテ「そんな単純な……」
ランシッド『そういうこと。あとマンジュが気に入ったからとかね。物事は意外と単純に出来てることもある』
モカ「なんだかんだで出来上がったのが、この島なんだね」
ランシッド『そ。なんだかんだでね』
クローテ「……」
~新米精霊~
カカオ「二十年で新米って、精霊の世界はなんかすげえよな……」
清き風花『精霊の時間はゆったりしていますから』
ブオル「って事は、ランシッド様からしたら清き風花は大先輩にあたる訳だ」
ランシッド『まあそうなるね』
カカオ「風花が大先輩……」
メリーゼ「お父様の大先輩……」
モカ「ギャップにも程があるっていうか……」
清き風花『な、なんだか照れちゃいますね』
ブオル「全然偉そうとかじゃないもんなあ」
モカ「先輩命令とかしちゃえば?」
清き風花『めいれい?』
モカ「おう先輩精霊の言うことが聞けねーってのかコラァ、ってさ」
清き風花『お、おう、せんぱいせいれいのっ……』
ランシッド『変なこと教えないでくれる!?』
~マンジュの里の文化~
ブオル「あちこちこぢんまりしてて俺には窮屈なところもあるけど、マンジュって綺麗なとこだなあ」
モカ「それにタタミって床でごろごろすると超~キモチいい~♪」
メリーゼ「モ、モカちゃんっ」
クローテ「堕落の極みだな。はしたない……」
ランシッド『母親そっくりだなぁ……』
カカオ「すげえぞみんな! こいつを見てくれ!」
メリーゼ「カカオ君?」
カカオ「このコタツっていうテーブルに布団がついたやつ、天板の裏に魔学式温熱機がついてるんだけど布団が熱を逃がさなくてすっごく心地いい!」
モカ「なんだって!? そんな画期的なモノが……!」
カカオ「あ~あったけぇ……」
モカ「たまんないねぇ……」
メリーゼ「こ、これは……きもちいいです……」
クローテ「メリーゼまで!?」
モカ「クロ兄もおいでよー」
クローテ「わ、私はそんなモノの誘惑には屈しないぞ……!」
カカオ「委ねちまえば最高だぞー?」
ブオル「いいなあ……俺たぶん入れない……」
クローテ「……あ」
カカオ「ろ、露天風呂入ろうぜおっさん! みんなで一緒に!」
ブオル「カカオ……その心遣いがあったかいぜ……」
メリーゼ「みっ、みんなで、一緒に……?」
クローテ「メリーゼ……さすがに男女は別だ」
~イシェルナは只者じゃない?~
カカオ「気配が全っ然わからなかった……」
ブオル「たぶんあの人、ものすごく強いぞ……身のこなしに隙がない」
ランシッド『気功を纏わせた己の拳と鋭い蹴りが武器の、素早く身軽な格闘家だよ』
メリーゼ「戦ってもいないのに、未熟な私にもひしひしと強さが伝わってくる気がします」
クローテ「ああ、背後をとられた時に寒気がした」
イシェルナ「あら、敏感な子ねぇ」
クローテ「っ!?」
モカ「気配感じなかったんだから鈍感なんじゃ?」
ブオル「そうじゃないぞ、モカ。クローテはイシェルナがわざと発したほんの僅かな殺気を感じ取ったんだ。試したんだろう?」
イシェルナ「そっちのおじさまはお見通しみたいね」
ランシッド『イシェルナ、若者達で遊ばないの』
イシェルナ「未来の英雄さんだっていうから、どれほどのものか気になったのよ」
カカオ「す、すげぇ、次元が違うぜ……」
~カッセの息子~
モカ「あのちびにゃんこにホントに子供がいたなんて……」
ランシッド『聖依獣は見た目で年齢がわかりにくいからね。君のお母さんより年上だって言ったろ?』
メリーゼ「黒い猫耳に尻尾、それに猫の手足……」
クローテ「人間と聖依獣のハーフだな。私と違って、聖依獣の血が濃いのだろう」
メリーゼ「かわいい……!」
モカ「メリーゼ姉?」
メリーゼ「ふわふわの髪にぴこぴこ動く猫耳、長い尻尾……ああっ、肉球はあるのかしら……抱き締めて撫でてみたい……もふ、もふ……」
カカオ「あー、また始まった……」
ブオル「嬢ちゃん、もしかしてああいう子が好み? 年下好き?」
ランシッド『っていうか、可愛いものともふもふした動物が好きなんだよ』
モカ「もふもふ猫耳少年も守備範囲内かぁ……っていうか、それならクロ兄は?」
クローテ「昔さんざんなで回された」
ブオル「なんつーか、お疲れさん……」
~受け継がれる“ししょー”~
ランシッド『今はイシェルナが“ししょー”って呼ばれる側なんだねえ』
イシェルナ「うふふ、可愛い弟子でしょ?」
メリーゼ「師匠……ガレ君に稽古をつけているんですか?」
イシェルナ「父上みたいになりたいでござる、って頼み込まれちゃってね。厳しくしたらめげて諦めてくれると思ったのに、それがぜんぜん」
ランシッド『イシェルナの“厳しく”って……』
イシェルナ「それはご想像にお任せするわ★」
ブオル「ず、随分と魅力的な笑顔で……」
イシェルナ「いくら父親の影を追いかけたって、あの子はカッセにはなれないのよ」
モカ「見た感じもうだいぶ違うもんねえ」
イシェルナ「けどいくらぶちのめしても向かってくる。だから、あの子なりの強さを引き出していくつもりよ」
カカオ「自分なりの……」
イシェルナ「あなたにだって、きっとそういうものが見つかるわ」
カカオ「……!」
イシェルナ「影は何でも知っているのよ、職人見習い君」
クローテ「見透かされているな、カカオ」
カカオ「うー……」