68~反撃、そして~
『メリーゼ……お願いがあります』
魔物の群れの最奥のテラを目指し、風を受けて流星のように空を駆けるメリーゼに、彼女の中でこれまで口を噤んでいた時の女神が声をかける。
「女神さま?」
『剣を、貴女に託した“剣”をテラに……』
中継地点の氷塊を蹴り、方向転換しながらメリーゼは何ごとだろうかと耳を傾ける。
時の女神はメリーゼとの契約時にその身を剣の姿に変えて見せたが、それをテラに突き立てろと言うのだ。
『私との契約によって貴女の刃には時空修正の力が働くようになっています。ですが、私そのものであるあの剣ならば私の力を直接テラにぶつけられる……終わらせられるのです』
「それは……そうかもしれませんが」
地上では仲間たちの声が、戦いの音が聴こえる。
全てを終わらせるために迷っている時間などないはずなのだが……
「やるしかねーだろ、メリーゼ!」
「カカオ君!」
仲間が拓いた道を、メリーゼと並走する形で駆け抜けながらカカオが叫ぶ。
「みんなの想いと、オレも一緒だ! 一緒に未来を、過去を、現在 を取り戻そうぜ!」
まだ残っていたのか四方八方から飛び掛かる魔物を薙ぎ払い、駆ける足は力強く。
道は拡がり、テラへの距離はぐんぐん縮んでいく。
『行こう、メリーゼ。時の女神の願いを叶えるんだ』
「お父様……」
まるで敵わない圧倒的な存在だったテラをついに追い詰め、異世界の時空を司る者が力を貸してくれている……こんな好機、二度とないだろう。
「いっけぇー! カカオ、メリーゼ!」
「あたし達の希望を乗せて!」
「ブッ倒せぇぇぇ!」
あちこちから叫ぶ声がする。
そして風の翼で駆けていたメリーゼも、ついにテラの姿を捉え……
「テラっ!」
抉るような鋭い着地と同時に、愛用の双剣でテラの取り巻きを、最後の壁を斬り裂いた。
「来るなァ!」
黒く硬化し凶器と化したテラの腕が力任せに払われ、メリーゼを襲うが、それを受け止めたのは……
「宿れ、地精の力! 堅牢たる霊鎧、我が身に護るための力を!」
ガキィンと響く、硬い物が激しくぶつかる音。
カカオが、今度は地のマナを己の身に纏い、手にした槌で二人の間に割って入ったのだ。
「今だ!」
「グッ……!」
大地の力で頑強さを手に入れたカカオがテラを怯ませ、生じた隙を逃さずにメリーゼがすかさず飛び込む。
そして。
『終わりです、テラ!』
「たあああああっ!」
双剣からひと振りの“剣”……時の女神が姿を変えたそれに持ち替え、テラの懐へ。
「ガァ……ッ」
肉を抉るような感覚も、音もなく、けれども確かに感じる手応え。
全員が見守る中で、女神の剣の切っ先が吸い込まれるようにテラを深々と刺し貫いた。
魔物の群れの最奥のテラを目指し、風を受けて流星のように空を駆けるメリーゼに、彼女の中でこれまで口を噤んでいた時の女神が声をかける。
「女神さま?」
『剣を、貴女に託した“剣”をテラに……』
中継地点の氷塊を蹴り、方向転換しながらメリーゼは何ごとだろうかと耳を傾ける。
時の女神はメリーゼとの契約時にその身を剣の姿に変えて見せたが、それをテラに突き立てろと言うのだ。
『私との契約によって貴女の刃には時空修正の力が働くようになっています。ですが、私そのものであるあの剣ならば私の力を直接テラにぶつけられる……終わらせられるのです』
「それは……そうかもしれませんが」
地上では仲間たちの声が、戦いの音が聴こえる。
全てを終わらせるために迷っている時間などないはずなのだが……
「やるしかねーだろ、メリーゼ!」
「カカオ君!」
仲間が拓いた道を、メリーゼと並走する形で駆け抜けながらカカオが叫ぶ。
「みんなの想いと、オレも一緒だ! 一緒に未来を、過去を、
まだ残っていたのか四方八方から飛び掛かる魔物を薙ぎ払い、駆ける足は力強く。
道は拡がり、テラへの距離はぐんぐん縮んでいく。
『行こう、メリーゼ。時の女神の願いを叶えるんだ』
「お父様……」
まるで敵わない圧倒的な存在だったテラをついに追い詰め、異世界の時空を司る者が力を貸してくれている……こんな好機、二度とないだろう。
「いっけぇー! カカオ、メリーゼ!」
「あたし達の希望を乗せて!」
「ブッ倒せぇぇぇ!」
あちこちから叫ぶ声がする。
そして風の翼で駆けていたメリーゼも、ついにテラの姿を捉え……
「テラっ!」
抉るような鋭い着地と同時に、愛用の双剣でテラの取り巻きを、最後の壁を斬り裂いた。
「来るなァ!」
黒く硬化し凶器と化したテラの腕が力任せに払われ、メリーゼを襲うが、それを受け止めたのは……
「宿れ、地精の力! 堅牢たる霊鎧、我が身に護るための力を!」
ガキィンと響く、硬い物が激しくぶつかる音。
カカオが、今度は地のマナを己の身に纏い、手にした槌で二人の間に割って入ったのだ。
「今だ!」
「グッ……!」
大地の力で頑強さを手に入れたカカオがテラを怯ませ、生じた隙を逃さずにメリーゼがすかさず飛び込む。
そして。
『終わりです、テラ!』
「たあああああっ!」
双剣からひと振りの“剣”……時の女神が姿を変えたそれに持ち替え、テラの懐へ。
「ガァ……ッ」
肉を抉るような感覚も、音もなく、けれども確かに感じる手応え。
全員が見守る中で、女神の剣の切っ先が吸い込まれるようにテラを深々と刺し貫いた。