63~見出した光~
一方その頃、別の場所では。
「おじさま、みぃつけた」
「アングレーズ! 良かった、無事だったんだな!」
こんな陰気な場所におよそ似つかわしくない美貌の神子姫が、シャランと装飾品の音をさせてブオルの前に現れた。
踊り子のような衣装もあいまって、ブオルを見つけて微笑むアングレーズの美しさは、この暗闇の中では天の使いが助けに来てくれたような錯覚さえ起こすだろう。
「こんな状況でずいぶん余裕だなあ。もしかして、占いで俺の居場所を見つけたとか?」
「ええ、そうよ」
アングレーズのゆったりした足取りは、まるでこうなることを予知しているようだった。
実際、彼女は抽象的かつ断片的にだが未来を視ることができる一族の生まれであり、旅の中でも幾度かその能力を見せている。
「大きくて、丸くて、ダンディで可愛いくまさんがしょんぼりしてるって……ね?」
「おいおい、そりゃ随分なあれだな」
「うふふ、ちょっとウソ。ホントは光が視えただけよ」
ぴと、と大樹のような大男に身を寄せるアングレーズ。
彼女ほどの魅力的な肢体をもつ美女がどれだけ触れても、親子ほど歳の離れた妻一筋のこの男には全く意味がなく……
(わかってはいたけど……ちょっとだけ、面白くないわね)
アングレーズはそんなことを思いながら、苦笑するのだった。
「さて、アングレーズ。それじゃあ残りのメンバーの居場所はわかりそうか?」
「ああ、ええ。なんとなくだけど……」
ブオルの言葉に目を閉じると、アングレーズの瞼の裏に光が……暗闇に散った、希望の光が輝き始める。
「バラバラだった光がふたつかみっつずつ固まってきているから、何組か合流しているみたい。方向からして全員このまま進んでいけば、どこかで道は交わるでしょうね」
「そうか。そりゃ良かった」
純粋な戦闘能力は高くてもこれといった特殊能力を持たないブオルには、彼女との合流はありがたいことだった。
先の見えない闇の中で、この言葉がどれだけの安堵をもたらし、励みになるか。
逆に言えば、ゴーレムを操れるとはいえ遠距離攻撃を主体とするアングレーズにとっては、前衛で敵を食い止められるブオルの存在が心強いのだが。
「きっと、里のみんなが守ってくれたのね」
「そうかな?」
「えっ?」
ぽつりと零した言葉に予想外のものが返ってきて、アングレーズは目をぱちくりさせた。
「ああ、いや、違うな。きっと守ってくれてる。そう思うよ。けど……」
「けど?」
「ここまで来られたのはアングレーズ自身の力だ。お前さんがずっと努力を重ねてきたから、いろんなものが応えてくれたんだよ。アングレーズは強い。強くなったんだ」
親友の助けになれるほどの力がなかったために、彼女がどこか遠くで命を落としたという話だけを聞かされた少女の頃。
その日からアングレーズは、ひたむきに、激しいほどに強さを求め続けた。
もう、喪いたくないから。
自分の弱さに後悔したくないから。
「おじさま……ごめんなさい」
「え?」
「今だけ、貴方の胸で泣かせて頂戴」
ターコイズの瞳から大粒の涙が溢れ出す。
彼女の頼みを断ることなく、ブオルはその頭を優しく撫でた。
「おじさま、みぃつけた」
「アングレーズ! 良かった、無事だったんだな!」
こんな陰気な場所におよそ似つかわしくない美貌の神子姫が、シャランと装飾品の音をさせてブオルの前に現れた。
踊り子のような衣装もあいまって、ブオルを見つけて微笑むアングレーズの美しさは、この暗闇の中では天の使いが助けに来てくれたような錯覚さえ起こすだろう。
「こんな状況でずいぶん余裕だなあ。もしかして、占いで俺の居場所を見つけたとか?」
「ええ、そうよ」
アングレーズのゆったりした足取りは、まるでこうなることを予知しているようだった。
実際、彼女は抽象的かつ断片的にだが未来を視ることができる一族の生まれであり、旅の中でも幾度かその能力を見せている。
「大きくて、丸くて、ダンディで可愛いくまさんがしょんぼりしてるって……ね?」
「おいおい、そりゃ随分なあれだな」
「うふふ、ちょっとウソ。ホントは光が視えただけよ」
ぴと、と大樹のような大男に身を寄せるアングレーズ。
彼女ほどの魅力的な肢体をもつ美女がどれだけ触れても、親子ほど歳の離れた妻一筋のこの男には全く意味がなく……
(わかってはいたけど……ちょっとだけ、面白くないわね)
アングレーズはそんなことを思いながら、苦笑するのだった。
「さて、アングレーズ。それじゃあ残りのメンバーの居場所はわかりそうか?」
「ああ、ええ。なんとなくだけど……」
ブオルの言葉に目を閉じると、アングレーズの瞼の裏に光が……暗闇に散った、希望の光が輝き始める。
「バラバラだった光がふたつかみっつずつ固まってきているから、何組か合流しているみたい。方向からして全員このまま進んでいけば、どこかで道は交わるでしょうね」
「そうか。そりゃ良かった」
純粋な戦闘能力は高くてもこれといった特殊能力を持たないブオルには、彼女との合流はありがたいことだった。
先の見えない闇の中で、この言葉がどれだけの安堵をもたらし、励みになるか。
逆に言えば、ゴーレムを操れるとはいえ遠距離攻撃を主体とするアングレーズにとっては、前衛で敵を食い止められるブオルの存在が心強いのだが。
「きっと、里のみんなが守ってくれたのね」
「そうかな?」
「えっ?」
ぽつりと零した言葉に予想外のものが返ってきて、アングレーズは目をぱちくりさせた。
「ああ、いや、違うな。きっと守ってくれてる。そう思うよ。けど……」
「けど?」
「ここまで来られたのはアングレーズ自身の力だ。お前さんがずっと努力を重ねてきたから、いろんなものが応えてくれたんだよ。アングレーズは強い。強くなったんだ」
親友の助けになれるほどの力がなかったために、彼女がどこか遠くで命を落としたという話だけを聞かされた少女の頃。
その日からアングレーズは、ひたむきに、激しいほどに強さを求め続けた。
もう、喪いたくないから。
自分の弱さに後悔したくないから。
「おじさま……ごめんなさい」
「え?」
「今だけ、貴方の胸で泣かせて頂戴」
ターコイズの瞳から大粒の涙が溢れ出す。
彼女の頼みを断ることなく、ブオルはその頭を優しく撫でた。