60~終わりへのスタートライン~

~スタートライン~

カカオ「これでようやくスタートライン、か……」
モカ「長っ! 長すぎっ!」
パンキッド「でもこれで、やっと正面からぶちのめせるんだな」
シーフォン「君は表現が野蛮だな」
パンキッド「じゃあ何て言うんだい?」
シーフォン「ブッ飛ばす?」
モカ「似たようなモンじゃん!」
メリーゼ「でも、そうですね……直接刃を交えるということになった、ということは」
クローテ「ああ。今度こそ油断もしてくれないだろう」
アングレーズ「誤魔化しはきかないわね」
ブオル「正真正銘、最終決戦か……震えてくるな」
カカオ「武者震いだろ、おっさん」
ブオル「……ああ。ようやくこの手で決着をつけることができる」
カカオ「気合い入れていくぜ、みんな!」
メリーゼ「ええ!」


~かつてない規模~

カカオ「今の感覚、みんなも感じたのか……?」
アングレーズ「ええ。多くの人はただの立ち眩みとか気の所為に思うでしょうけど、これは……」
モカ「輪郭がぼやけたり、根っこが揺らぐようなこの感じ……忘れもしない、パパが時空干渉受けた時と同じだ」
カカオ「せっかくメリーゼたちを助けられたのに、今度は世界規模かよ!」
クローテ「我々は本当に、とてつもない奴と戦おうとしているんだな……」
アングレーズ「それでも行くしかないわ。後がないのはお互い様よ」
シーフォン「世界規模の時空干渉が行われているこちらと、分身を失ったテラ、か……」
パンキッド「さっさとテラの本拠地を見つけて、やめさせないとね!」
メリーゼ「はい。今はまだ一瞬の揺らぎでも、テラを止めなければ本当に全部消えてしまうでしょうから」
アングレーズ「時間はあるようでない……そんな感じかしらね」


~決戦への“鍵”~

ガレ「まさかここでそれがしが“鍵”だなんて言われるとは……」
ランシッド『ちょっと時間はかかるけど、俺は時空の精霊だ。異空間だろうと必ず探し出してみせるよ』
ガレ「……へへ」
ランシッド『嬉しそうだね』
ガレ「あの時はテラに操られて、皆の足を引っ張ってしまったゆえ……それが役に立てることになって、結果おーらいとはいえ嬉しいのでござるよ」
ランシッド『足を引っ張るだなんて……またクローテに蹴られるよ』
ガレ「へ?」
ランシッド『役に立つどころか、君は立派な仲間の一員なんだからね』
ガレ「えっ」
ランシッド『お互いに助けて助けられて、今の君は対等なんだ。見上げるだけの子供じゃないんだよ』
ガレ「ランシッドどの……」
ランシッド『俺だってそう思ってんだから、もうそういうのはナシね!』
ガレ「にゃ、にゃはは……承知いたした……ごめんなさい」
ランシッド『うむ、よし!』


~いっときの休息~

ブオル「相変わらず広いな、城の大浴場は」
カカオ「いやー、疲れが吹っ飛ぶぜ!」
クローテ「ガレには悪いが……あいつも後で来られるだろうか」
シーフォン「声はかけておいたよ。父上が貸し切りにしてくれたから、ゆっくり浸かるといい。まだ夜は長いしね」
ブオル「ありがたく休ませてもらいますわー……」
シーフォン「……ところで、君たち。今この壁の向こうでは女性陣が入浴中のようだけど」
ブオル「まさか、覗くとか言いませんよね?」
クローテ「そういえば、マンジュの温泉ではモカがこちらを覗こうとしていたような……」
カカオ「嘘だろ、おい……ていうかシーフォン、お前まさか……」
シーフォン「そんな野蛮なことをするはずがないだろう。僕は紳士だぞ」
カカオ「そ、そうだよな」
シーフォン「ちゃんと正面から堂々と『見せてください』とグハッ」
ブオル「どこからともなく洗面器が飛んできた!」
シーフォン「壁を隔ててこの精度、この威力……さすが、だね……」
カカオ「シーフォン!? おい、しっかりしろー!」
クローテ「やれやれ……」


~影が見ていた決意~

イシェルナ「まさかわざわざ一人でマンジュまで来るなんてね」
カカオ「もう一人のオレ……テラと刺し違えたらしいオレも、決戦の前に一人でガレに会いに行ったらしいんです」
イシェルナ「だから自分も同じことをしたの?」
カカオ「だからこそ、です。同じことをしても、今のオレは状況が違うから」
イシェルナ「ガレ君を不安になんかさせないってことね」
カカオ「オレは独りじゃないし、必ず帰る……そのために、ここに来ました」
イシェルナ「未来のガレ君、よく悪夢にうなされるそうね。旅立ったまま帰らなかったカカオ君の夢……」
カカオ「だから、ここで会ったら負けられないでしょう? あいつに二度悪夢を見せる訳にはいきませんから」
イシェルナ「ふふ、そうね。それでこそ……だわ。あー、あたしもあと十年若ければねぇ」
カカオ「え?」
イシェルナ「なーんでもない!」


~覗き見はいけません~

カカオ「まさかここまで情報が早いなんて……」
イシェルナ「マンジュの情報網も優秀だけど、あたしには世界中の影から得られる情報もあるのよ。影って、どこにでもあるでしょ? それなりに疲れるから、使い時は絞るけど」
カカオ「それもそうか……すげえなぁ」
イシェルナ「あたし自身はマンジュから動かなくても、こう見えていろんなものを見聞きしてるんだからね」
カカオ「た、例えば?」
イシェルナ「そうねぇ……男性陣のお着替えタイムとか?」
カカオ「へっ?」
イシェルナ「やーん、カカオ君ってばすっかりたくましくなっちゃって、おねーさんドキドキよぉ」
カカオ「使い時は絞るんですよね!?」
イシェルナ「うふふ、冗談よ」
カカオ「よ、良かったぁー」
イシェルナ「……特に腹筋の引き締まりっぷりとか」
カカオ「じょ、冗談……ですよね?」
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