5~時の迷い子~

―おまけスキット―


~先王モラセス~

カカオ「先代の王様……確かじいちゃんがダチって言ってた……」
モラセス「そうだ。お前とも子供の頃に何度か会っているぞ」
カカオ「えっ、そうな……んですか!?」
モラセス「妖怪呼ばわりされて怯えられたがな、ふふふ」
カカオ「えっ」
トランシュ「どうせいたいけな子供をわざわざ怖がらせたのでしょう。そういう人だよ、お祖父様は」
カカオ「……」
メリーゼ「けど、なんて隙のない立ち姿……優れた武人だと母から聞いておりましたが……」
モラセス「わかるか。さすがはあいつの娘だな」
ランシッド『何より変人っぷりも一目でわかるけどねー』
カカオ「それは確かに……」
モラセス「なにか言ったか」
カカオ「いっ、いいえ!」
クローテ「カカオ……」


~驚きの未来~

ブオル「いよいよほんとにここが五十年後の世界ってことになっちまったかあ……」
モカ「普通は信じられないだろーね」
ブオル「モラセス王があんなじいさんになってたり、孫が王様やってたり、スタードが世界を救った英雄の一人だったり、おまけに俺の曾孫までいて……」
クローテ「スタードお祖父様からよく話は聞いていました。暁の荒熊……夫婦揃って最強の騎士だったと」
ブオル「そ、そうか? へへへっ」
カカオ「けどクローテとは全然似てねーよなぁ」
ブオル「いやでもスタードやホイップ、フレスの面影はあるぞ。キリッとした目はホイップそっくりだ」
クローテ「そう、でしょうか」
ブオル「そして母親は聖依獣、か……モラセス様、喜んだろうなあ」
クローテ「……」
ブオル「びっくりした事は多いけど、覗き見できて良かった。みんな幸せそうだ」
ランシッド『ちゃんと記憶消して、全部忘れてから帰って貰うからね?』
ブオル「はは、やっぱそうなるよな……」
モカ「なんか利用するだけ利用してポイって感じだねぇ」
ブオル「普通は未来なんて知っちゃいけないんだろうし、仕方ないさ」



~時の調律者~


ランシッド『時の調律者、か……』
カカオ「そういやそんな呼び名もあったんだな」
ランシッド『火の大精霊が“豪腕の焔”、風は“清き風花”……普通は精霊のことそうやって呼ぶんだけど、俺の場合人間だった時の名前が知られ過ぎててねぇ』
モカ「なんか難しい名前の方が威厳ありそーだよね」
カカオ「時の調律者……言いにくいしなんか馴染まねえなあ」
ランシッド『それは君達が呼ばなかったせいだろ?』
メリーゼ「では、時の調律者様」
ランシッド『えっ』
メリーゼ「そうお呼びした方がいいのでしょう、時の調律者様?」
ランシッド『そんなよそよそしいのやだ! お父様って呼んでよメリーゼぇー!』
カカオ「威厳も何も……」
モカ「……ねぇ?」


~小さな英雄~

カカオ「英雄……オレ達が英雄……」
クローテ「舞い上がって調子に乗るなよ、カカオ」
カカオ「わかってるっていうか……オレ、すげえことに首突っ込んでるのかなって」
メリーゼ「今更ですよ」
カカオ「オレはただ、自分の知らないところで大切な人達がどうにかなるかもしれないって思ったら、人任せになんか出来なくて、それで……」
クローテ「バカだな」
カカオ「なっ!?」
クローテ「そんな事、思わない訳ないだろう……自分は未熟だからと誰かに託して、それで安心だなんて出来るはずがない。この世界で起きていることを知ってしまったのだから」
カカオ「クローテ、お前……」
メリーゼ「けど、手が震えてしまうのも事実です。あまりにも重すぎる……」
トランシュ「だから我々が全力でサポートするんだ。小さな英雄の卵をね」
ランシッド『英雄王や時空の精霊のサポートが受けられるんだ。背筋を伸ばして、しゃんと立って』
メリーゼ「お父様……」
カカオ「……こうなったら、やるしかねえ!」
トランシュ「うん、その意気だ」
ランシッド『後先なんて考えず、動いてしまった……か。いつだって、とんでもない事をしちゃうのはそんな奴ばっかりだね、ダクワーズ……』



~伝説のブオル子さん~

ブオル「どいつもこいつもブオル子さんブオル子さんって……」
カカオ「わ、悪かったよブオルのおっちゃん……けど、あれは一度見たら忘れられねーっていうか……」
クローテ「騎士団では伝説になっていますからね」
ブオル「で、伝説……!?」
トランシュ「確か週に一度の夜中、閃きの日から大地の日に日付が変わる瞬間にあの廊下にブオル子さんの亡霊が現れて肖像画の前ですすり泣くって噂が……」
ブオル「そりゃ伝説じゃなくて怪談だ!」
トランシュ「待ってみたけど現れなかったなあ、残念」
メリーゼ「待ってみたんですね……」
トランシュ「涙の理由を聞いてみたくてね」
ブオル「無理矢理女装させられたからでしょう……じゃなくて、そんなもんいませんから!」
モカ「肖像画が飾りっ放しなせいでとんでもないことになってるね」
ブオル「しかも今回の件でまた怪談増えた可能性あるしな。とほほ……」
カカオ「おっちゃん……同情するぜ……」



~るすばんタイム~

カカオ「二人が服を探しに行ってる間、ヒマだなー」
モカ「カカオ兄ちゃん、そわそわして落ち着かないね」
カカオ「そりゃあこんなお屋敷、いつ来ても落ち着かねーよ」
メリーゼ「ゆったりした雰囲気でお庭も綺麗で、お屋敷の皆さんもとても優しげですよ?」
カカオ「メリーゼもクローテも家柄があれだから慣れてるだろうけど、オレはじいちゃんの工房が懐かしいぜ」
ランシッド『モカも何気に王族の血を引いてるし、お城に出入りしてるしね』
モカ「何気にってなにさ」
カカオ「ブオルのおっちゃんもこの家の人だし、元王様な精霊までいるし、なんかフツーの一般人オレだけ……?」
ランシッド『世界的な名工の孫、ってだけでも結構なもんだけどねえ』
カカオ「基準がおかしいんだよな、このメンバーは……」
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