48~亡霊~
――――……なるほど、悪くない作戦かもしれないね。
でも、ちょっとだけ確実性を上げてみようか。
アタシは大丈夫だからそんな顔すんなって……策士は策士らしく、どっしり構えてなよ――――
仲間のひとりを捕らわれて、カカオ達に緊張が走る。
だが、次の瞬間。
「シーフォン、今だよ!」
「みんな、目を瞑れっ!」
パンキッドとシーフォンが叫び、仲間達は咄嗟に目を閉じた。
すると瞼ごしにもわかるほどの強い光が辺りを満たす。
「ぐおおお……っ!」
たまらず黒騎士がパンキッドを放し、光が直撃した目を押さえる。
周囲が落ち着いたところで目を開けたカカオ達に、パンキッドがピースをして見せた。
「成功、だね」
「む、無茶するなぁパン姐……」
「このぐらいしなきゃヤツを嵌めることはできないと思ったからね」
先程シーフォンがパンキッドに耳打ちをしていたが、その内容までは当人達しか知らない。
一歩間違えれば、一瞬遅れれば……シーフォンもそれを承知しているようで、ほんの僅かだが安堵の表情を見せた。
「安心するのはまだ早いぞ!」
この好機を次に繋げなければ、とブオルが斧を構えて駆け出す。
そしていまだ立ち直らずふらついている黒騎士めがけて、渾身の力を乗せた一撃を振り下ろし、頭を覆う兜を叩き割った。
――しかし。
「なっ……!?」
バラバラと落ちる破片が、いやにスローに見えた気がした。
割れた兜の中から見えたその顔、その人物を見て、驚かない者はいなかった。
「う、うそ……」
「こんなことって……」
そこにいたのは、ブオルと全く同じ……強いて言えば、ほんの少し老けて、ほんの少しだけ肉が落ちたような、そんな人物。
「なん、だよ、これ……」
誰よりもその事実に驚き、狼狽えたのは他でもないブオル。
震える手が武器を取り落とし、思わず二、三歩後ずさる。
『馬鹿な……まさか、これは……』
「ラ、ランシッド様……まさかとは思いますが、こいつは、」
未来の俺、なんじゃないか?
そう口にした途端、それまで言葉ひとつ発さず顔色も変えなかった黒騎士がニヤリと口の端を上げ、突然高笑いを始めた。
「ははははは、正解だ! そう……“こいつ”は未来のお前。ブオル・ティシエール……その抜け殻さ!」
「なん……」
同じ顔、同じ声だが中身は完全に別モノ……ちょっと言葉を発しただけでそうとわかる。
そして同時にこれがテラの悪趣味なやり口だということも。
「数年後に戦死したブオルの肉体を回収して再利用したのさ。死んでりゃ意識も何もないんだから、操るのは簡単でいいよなあ?」
『死者を操る……そうか、イシェルナの時空干渉の時と同じ……!』
「お父様、それよりもブオルさんが!」
これまでが嘘のようにイキイキとしだした黒騎士とは対照的に、ブオルからはいつもの明るさも消え、膝をついて項垂れている。
自分はこの時代ではとうに死んだ人間……わかりきっていたことだが、そう遠くない未来の死を形として突きつけられた男の心は粉々に打ち砕かれていた。
でも、ちょっとだけ確実性を上げてみようか。
アタシは大丈夫だからそんな顔すんなって……策士は策士らしく、どっしり構えてなよ――――
仲間のひとりを捕らわれて、カカオ達に緊張が走る。
だが、次の瞬間。
「シーフォン、今だよ!」
「みんな、目を瞑れっ!」
パンキッドとシーフォンが叫び、仲間達は咄嗟に目を閉じた。
すると瞼ごしにもわかるほどの強い光が辺りを満たす。
「ぐおおお……っ!」
たまらず黒騎士がパンキッドを放し、光が直撃した目を押さえる。
周囲が落ち着いたところで目を開けたカカオ達に、パンキッドがピースをして見せた。
「成功、だね」
「む、無茶するなぁパン姐……」
「このぐらいしなきゃヤツを嵌めることはできないと思ったからね」
先程シーフォンがパンキッドに耳打ちをしていたが、その内容までは当人達しか知らない。
一歩間違えれば、一瞬遅れれば……シーフォンもそれを承知しているようで、ほんの僅かだが安堵の表情を見せた。
「安心するのはまだ早いぞ!」
この好機を次に繋げなければ、とブオルが斧を構えて駆け出す。
そしていまだ立ち直らずふらついている黒騎士めがけて、渾身の力を乗せた一撃を振り下ろし、頭を覆う兜を叩き割った。
――しかし。
「なっ……!?」
バラバラと落ちる破片が、いやにスローに見えた気がした。
割れた兜の中から見えたその顔、その人物を見て、驚かない者はいなかった。
「う、うそ……」
「こんなことって……」
そこにいたのは、ブオルと全く同じ……強いて言えば、ほんの少し老けて、ほんの少しだけ肉が落ちたような、そんな人物。
「なん、だよ、これ……」
誰よりもその事実に驚き、狼狽えたのは他でもないブオル。
震える手が武器を取り落とし、思わず二、三歩後ずさる。
『馬鹿な……まさか、これは……』
「ラ、ランシッド様……まさかとは思いますが、こいつは、」
未来の俺、なんじゃないか?
そう口にした途端、それまで言葉ひとつ発さず顔色も変えなかった黒騎士がニヤリと口の端を上げ、突然高笑いを始めた。
「ははははは、正解だ! そう……“こいつ”は未来のお前。ブオル・ティシエール……その抜け殻さ!」
「なん……」
同じ顔、同じ声だが中身は完全に別モノ……ちょっと言葉を発しただけでそうとわかる。
そして同時にこれがテラの悪趣味なやり口だということも。
「数年後に戦死したブオルの肉体を回収して再利用したのさ。死んでりゃ意識も何もないんだから、操るのは簡単でいいよなあ?」
『死者を操る……そうか、イシェルナの時空干渉の時と同じ……!』
「お父様、それよりもブオルさんが!」
これまでが嘘のようにイキイキとしだした黒騎士とは対照的に、ブオルからはいつもの明るさも消え、膝をついて項垂れている。
自分はこの時代ではとうに死んだ人間……わかりきっていたことだが、そう遠くない未来の死を形として突きつけられた男の心は粉々に打ち砕かれていた。