47~再び、聖依獣の里~
「シブースト村が魔物の襲撃に遭った、だと!?」
巨体のムースも立ちあうため里の集会所となっている広場を借り、一通りカカオ達の事情を話す中でシュクルはさまざまな反応をしながら聞き役に回っていたが、ここに来る直前にあったシブースト村でのことを耳にするなり身を乗り出した。
「それで、村は……シナモン達は、」
『無事じゃなかったらこんな悠長に話してないよ。でも、今後同じことがないとも限らないから一度家族の顔を見に戻るのをおすすめするよ』
最近は時空の壁も不安定になりつつあるしね、とランシッドは言う。
「……ああ、もともとすぐ戻るつもりだった。ミレニアもおらぬのなら、なおさら早く帰らねばな」
と、早々に切り上げてシュクルが立ち去ろうとしたその時だった。
「! これは……」
聖依獣とその血を引く者達が一斉に反応する。
一拍遅れてカカオ達の耳にも、異変が感じ取れた。
ばらばらとした逃げ惑う足音と、悲鳴……尋常ではない異変が里に起きている。
「こりゃ、只事ではないのう……!」
「ああ。行くぞ、みんな! 長老とシュクルさんはここにいてくれ!」
すかさずカカオが飛び出し、仲間たちも続く。
里の中央部に駆けつけると、騒ぎの元凶らしき人物が武器を手に佇んでいた。
「お前か、侵入者は! どうせテラの手下なんだろ!」
テラの手の者ならば、恐らく過去の時空干渉のように空間を抉じ開けて直接この里に来たのだろう……遺跡に隠された厳重な里への扉も、これでは意味を成さない。
「手、下……」
「――ッ!」
声に反応した侵入者は、ゆっくりとこちらを向く。
瞬間、ブオルの全身を言い様のない悪寒が駆け巡った。
(なん、だ、この感覚……)
黒い鎧で全身を覆った相手からは、ブオルと変わらないくらいの巨躯であるという情報しかわからない。
手には到底人間には扱えないサイズの斧槍が、不気味に鈍い光を放っている。
そして、黒い鎧は時折呼吸をするように脈打ち、蠢いているようだった。
「里のみんなに手出しはさせぬでござる!」
「ああ、いくよッ!」
「ガレ、パンキッド! ダメだっ!」
積極的に攻撃を仕掛けるふたりに、ブオルは咄嗟にそう叫んだ。
すると黒鎧は獲物を横に払い、衝撃波だけでふたりを吹き飛ばす。
「がぁっ……!」
「うわっ!」
「二人とも!」
クローテが駆け寄り、迅速に治癒術を施す。
ブオルの声に反応してか受け身をとっていたらしい二人は、すぐには動けないもののダメージを最小限に抑えていた。
「……お父様、この人……」
『ああ、空間を切り離そう。こいつが暴れたら里が壊滅する』
時空の精霊は娘の言葉に頷き、自分達と侵入者を隔離空間で包み込んだ。
(胸がざわつく……この人と戦ってはいけない、そんな気がする……)
桁外れの強さを目の当たりにしたからか、それとも……
メリーゼの胸騒ぎの正体は、まだ誰にもわからなかった。
巨体のムースも立ちあうため里の集会所となっている広場を借り、一通りカカオ達の事情を話す中でシュクルはさまざまな反応をしながら聞き役に回っていたが、ここに来る直前にあったシブースト村でのことを耳にするなり身を乗り出した。
「それで、村は……シナモン達は、」
『無事じゃなかったらこんな悠長に話してないよ。でも、今後同じことがないとも限らないから一度家族の顔を見に戻るのをおすすめするよ』
最近は時空の壁も不安定になりつつあるしね、とランシッドは言う。
「……ああ、もともとすぐ戻るつもりだった。ミレニアもおらぬのなら、なおさら早く帰らねばな」
と、早々に切り上げてシュクルが立ち去ろうとしたその時だった。
「! これは……」
聖依獣とその血を引く者達が一斉に反応する。
一拍遅れてカカオ達の耳にも、異変が感じ取れた。
ばらばらとした逃げ惑う足音と、悲鳴……尋常ではない異変が里に起きている。
「こりゃ、只事ではないのう……!」
「ああ。行くぞ、みんな! 長老とシュクルさんはここにいてくれ!」
すかさずカカオが飛び出し、仲間たちも続く。
里の中央部に駆けつけると、騒ぎの元凶らしき人物が武器を手に佇んでいた。
「お前か、侵入者は! どうせテラの手下なんだろ!」
テラの手の者ならば、恐らく過去の時空干渉のように空間を抉じ開けて直接この里に来たのだろう……遺跡に隠された厳重な里への扉も、これでは意味を成さない。
「手、下……」
「――ッ!」
声に反応した侵入者は、ゆっくりとこちらを向く。
瞬間、ブオルの全身を言い様のない悪寒が駆け巡った。
(なん、だ、この感覚……)
黒い鎧で全身を覆った相手からは、ブオルと変わらないくらいの巨躯であるという情報しかわからない。
手には到底人間には扱えないサイズの斧槍が、不気味に鈍い光を放っている。
そして、黒い鎧は時折呼吸をするように脈打ち、蠢いているようだった。
「里のみんなに手出しはさせぬでござる!」
「ああ、いくよッ!」
「ガレ、パンキッド! ダメだっ!」
積極的に攻撃を仕掛けるふたりに、ブオルは咄嗟にそう叫んだ。
すると黒鎧は獲物を横に払い、衝撃波だけでふたりを吹き飛ばす。
「がぁっ……!」
「うわっ!」
「二人とも!」
クローテが駆け寄り、迅速に治癒術を施す。
ブオルの声に反応してか受け身をとっていたらしい二人は、すぐには動けないもののダメージを最小限に抑えていた。
「……お父様、この人……」
『ああ、空間を切り離そう。こいつが暴れたら里が壊滅する』
時空の精霊は娘の言葉に頷き、自分達と侵入者を隔離空間で包み込んだ。
(胸がざわつく……この人と戦ってはいけない、そんな気がする……)
桁外れの強さを目の当たりにしたからか、それとも……
メリーゼの胸騒ぎの正体は、まだ誰にもわからなかった。