47~再び、聖依獣の里~

 改めて里を見て回ると、聖依獣はさまざまな姿形をしていた。
 ムースはもちろん極端な例だが、大きく分けると彼のように四本足の獣に近い姿をしている者と、カッセのように人間と同じ二足歩行の者。
 細かいところだと耳や尾はウサギのような形をしていたり犬寄りだったり猫のようだったり、四本足は大型と小型がいたり……

「彼らは皆“聖依獣”という括りなのかい?」
「そうじゃよー。ヒトの言葉を理解し、精霊やマナを身に宿す獣……みーんなまとめて“聖依獣”じゃ」

 あまりにもざっくりした分類だが、ムースが言うとなんだかそれでいいような気もする。

「じゃあそれがしやクローテどのは?」
「そりゃあ聖依獣と人間、どっちの仲間でもあるじゃろ。なんだかお得じゃのー」
「どっちの仲間でもある……なんだかあったかい響きでござるなあ」

 見た目も雰囲気もおおらかな長にあてられてふわふわと笑うガレ。
 いつにも増して締まりのない顔だ、と呆れるクローテの視線は、さらに先に気になる人影を捉えた。

「……あれ、人がいる……?」
「お?」

 里の奥に人間の青年がひとり。
 ガレの話ではこの里には聖依獣の仲間と、彼らと縁深き者しか入れないというが……

『あれはもしかして……おーい!』

 ランシッドが声をかければ遠くからでもちゃんと届いたようで、青年がこちらを向く。

「その声は……ランシッドか?」
『やっぱりシュクル! 村にいないと思ったらここにいたんだね』
「シュクル、ってパパとママが言ってた仲間の聖依獣……?」

 こちらまで歩いてきた青年を不思議そうに見上げるモカ。
 向日葵色のふわふわした髪の青年にはガレ達のような獣耳や尻尾もなく、自分達と同じ人間に見えたからだ。
 背丈はカカオとほぼ変わらず、年頃はシブースト村で会ったシナモンやカネルと同じぐらいだろうか。

「これは“人化の術”でござるな。ちちうえもたまに使う、人間の姿になる術でござる」
『本来のシュクルはアレだもんねえ。今のこの姿とは全然結びつかないよ。けどシュクルは人間のシナモンと同じ目線で生きるためにわざわざ……』
「わぁーっ! う、うるさいうるさい! なんだこやつらは!?」

 ランシッドが言いかけた言葉に反応し、目を輝かせたのは恋話好きのアングレーズ。
 しかし必死で遮るシュクルによってその詳細を聞くことは叶わなかった。

「よく見ればランシッドに清き風花……それに、他の連中もどこかで見たような……?」
『そりゃあそうさ。ガトーの孫に俺とダクワーズの娘、他にもよく知った人達の関係者ばかりだからね』
「なに、こやつらが!?」

 改めてまじまじと一行を見るシュクルに、ランシッド達はこれまでの経緯を説明することとなった。
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