46~想い出の地の奥で~
遺跡を奥まで進むと、そこには煌々と光を湛えるマナの泉が湧いていた。
「これは……」
「シーフォンとパンキッドは見るの初めてか? マナスポットっていう、濃いマナが噴き出る地点だ」
「書物で読んだことはある、が実際には……美しいものだな……」
素直な感想を述べたのはつい最近まで王都を離れたことがなかったシーフォン王子だ。
可視化されるほどの濃度のマナは、魔術以外では滅多に見られない。
それがここでは常に辺りを漂っていて、遺跡の背景も相まって幻想的な光景を作り出している。
『シーフォンの場合すぐ身近にあるんだけどね』
「そうなのかい?」
『城の地下の大空洞、あそこはマナスポットであると同時に精霊王の住処でもある。大精霊はああいうマナの濃い場所に住むんだよ』
遠い遠い子孫に説明するランシッドの後ろで、精霊王が何やら誇らしげに胸を張って腕組みをしている。
「パンキッド、クリスタリゼの霊峰は覚えてるだろ?」
「あのめちゃめちゃ寒い山? あっ、確かあそこは氷の大精霊の住処なんだっけ?」
「あそこは見たまんま、氷のマナが強く出ている場所だからな。一番奥に行けばマナスポットもあるってオグマさんが言ってた」
それぞれに思い浮かべやすい場所、わかりやすい例に軽く触れたところで、ガレが小さく咳払いをした。
「ここのマナスポットにはもうひとつの“顔”があるのでござるよ」
「顔?」
すると彼は赤銅色の猫目をそっと伏せ、マナスポットに手をかざす。
そして小声で何やら唱えると、溢れる光がその色を変えた。
「……これでよし。それじゃあ皆、それがしの後に続いて!」
「へっ、後にって?」
言うか早いかガレはマナスポットに勢い良く飛び込み、光に吸い込まれるように消えてしまう。
「あっ、おい、ガレ!?」
しん、と嘘みたいに静まり返ったマナスポットからは、大柄な青年の気配はまるで感じられない。
この得体の知れないモノに飛び込むのか……一同は誰ともなしに顔を見合わせた。
「この先に聖依獣の隠れ里が……母上の故郷があるんだな……」
そう言って進み出たのは、聖依獣の母をもつクローテ。
一瞬緊張に身を固くしたものの、意を決してガレの後を追った。
「……ガレもクローテも行ったんだ。よぉし!」
ぐっと拳を握りしめてパンキッドもマナの泉に身を投じると、一人、また一人と続いていく。
全員の背を見送って最後に残ったのは、最年長のブオルだった。
『ブオル……アングレーズの予知が引っ掛かってる?』
進むのが怖いのか、とランシッドが尋ねる。
それにブオルはいえ、と首を左右に振り、
「気にならないと言えば嘘になりますけど……俺の体格でここ通れるのかなって」
『…………』
つっかえちまったら嫌だなあ、と微妙な大きさのマナスポットを見つめて笑う。
僅かに引き攣った口元を、ランシッドは見逃さなかった。
「これは……」
「シーフォンとパンキッドは見るの初めてか? マナスポットっていう、濃いマナが噴き出る地点だ」
「書物で読んだことはある、が実際には……美しいものだな……」
素直な感想を述べたのはつい最近まで王都を離れたことがなかったシーフォン王子だ。
可視化されるほどの濃度のマナは、魔術以外では滅多に見られない。
それがここでは常に辺りを漂っていて、遺跡の背景も相まって幻想的な光景を作り出している。
『シーフォンの場合すぐ身近にあるんだけどね』
「そうなのかい?」
『城の地下の大空洞、あそこはマナスポットであると同時に精霊王の住処でもある。大精霊はああいうマナの濃い場所に住むんだよ』
遠い遠い子孫に説明するランシッドの後ろで、精霊王が何やら誇らしげに胸を張って腕組みをしている。
「パンキッド、クリスタリゼの霊峰は覚えてるだろ?」
「あのめちゃめちゃ寒い山? あっ、確かあそこは氷の大精霊の住処なんだっけ?」
「あそこは見たまんま、氷のマナが強く出ている場所だからな。一番奥に行けばマナスポットもあるってオグマさんが言ってた」
それぞれに思い浮かべやすい場所、わかりやすい例に軽く触れたところで、ガレが小さく咳払いをした。
「ここのマナスポットにはもうひとつの“顔”があるのでござるよ」
「顔?」
すると彼は赤銅色の猫目をそっと伏せ、マナスポットに手をかざす。
そして小声で何やら唱えると、溢れる光がその色を変えた。
「……これでよし。それじゃあ皆、それがしの後に続いて!」
「へっ、後にって?」
言うか早いかガレはマナスポットに勢い良く飛び込み、光に吸い込まれるように消えてしまう。
「あっ、おい、ガレ!?」
しん、と嘘みたいに静まり返ったマナスポットからは、大柄な青年の気配はまるで感じられない。
この得体の知れないモノに飛び込むのか……一同は誰ともなしに顔を見合わせた。
「この先に聖依獣の隠れ里が……母上の故郷があるんだな……」
そう言って進み出たのは、聖依獣の母をもつクローテ。
一瞬緊張に身を固くしたものの、意を決してガレの後を追った。
「……ガレもクローテも行ったんだ。よぉし!」
ぐっと拳を握りしめてパンキッドもマナの泉に身を投じると、一人、また一人と続いていく。
全員の背を見送って最後に残ったのは、最年長のブオルだった。
『ブオル……アングレーズの予知が引っ掛かってる?』
進むのが怖いのか、とランシッドが尋ねる。
それにブオルはいえ、と首を左右に振り、
「気にならないと言えば嘘になりますけど……俺の体格でここ通れるのかなって」
『…………』
つっかえちまったら嫌だなあ、と微妙な大きさのマナスポットを見つめて笑う。
僅かに引き攣った口元を、ランシッドは見逃さなかった。