45~異世界に降りた災厄~

 ガレが語ったテラの過去、アングレーズの不吉な予知……いろいろあったが、とりあえずそれぞれ行動を開始することにした。
 ミレニアは村や学校をカネル達に任せ、デューと共に王都へ。
 カカオ達は村近くにある聖霊の森の地下から繋がる聖依獣の隠れ里へ……時空干渉を受けていた過去のそこは一度訪れたが、現代で改めて行ってみて何か情報を得られないだろうかと考えたのだ。

「……で、どうしてお前がいるんだよ?」
「最初から僕は君たちに同行するつもりで追いかけてきたんだ」

 図書室でのしょんぼりはどこへやら。
 森の中を行くカカオ達にしれっとついて来て、ちゃっかりメリーゼの隣にいるシーフォン。
 ついでに背中には宝剣と、剣の石に憑いた精霊王までセットである。

「賑やかなのは楽しいけれど、ホントに危ないでござるよ?」
「その危ない目に遭っていたところを僕に助けられた猫には言われたくないな!」
「にゃうっ!? そ、それを言われるとっ……ていうか、猫ではないでござる!」

 つい最近テラに操られていたガレの繰り糸を断ち切ったのは、精霊王の力を借りたシーフォンその人だ。
 とはいえそれが手放しで同行を歓迎できる理由になるかと言われれば……

「王子、今からでも王都へ帰られては? 王も私の父上も今頃きっと御身を心配して……」
「よそよそしいぞクローテ。今の僕は王都のシーフォン王子ではなく、仲間の一人として扱いたまえ!」

 クローテが本気でそう扱ったらしょっちゅう蹴り飛ばされることになりそうだけどな、とカカオがこっそり呟いた。
 この旅でだいぶ砕けた本当の彼が案外容赦ないことを、騎士団でも主従の一線を引かれていたシーフォンはまだ知らない。

「ボクが言うのもなんだけど、途端に遠足感が増したよね……」
「いい気なもんだね、王子サマは……これも道楽のひとつかい?」
「なんとでも言いたまえ。誰にどう思われようが僕は僕の信念に従って行動する」

 煽られても噛みつかず、真っ直ぐ前を見据えるカーマインのまなざしにパンキッドは「お?」と目を瞬かせた。

『こいつは我が契約者である父親によく似ている。言い出したら聞かないところ、愚直なまでに曲がらぬところがな』
「血筋、ですかねえ……通すと言ったら何がなんでも通すところ、その行動力……モラセス様を思い出しますわ」

 精霊王とブオルはそう言いながらシーフォン達をそっと見守る。

「これから大変だな、メリーゼ……」
「あ、あはは……」

 今後一番シーフォンに構われるであろうメリーゼを気の毒に思い歩み寄れば「そこ! ちゃっかり隣にいるんじゃない!」とすかさず睨まれて、苦笑いするしかないカカオであった。
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