45~異世界に降りた災厄~
歴史に介入する能力を得た“テラ”は、過去に戻って英雄になるはずだった者達を倒した。
そうしてその世界を滅ぼすと、英雄が存在する別の世界に目をつけ、同様に壊していった。
過去を弄られてしまっては成す術もなく滅ぼされた世界も多く、自らの力の強大さもあってテラは次第に物足りなさをおぼえ始め……
「そこで、時空の精霊がいて最近英雄が現れたばかりのこのアラカルティアに目をつけた……か?」
ブオルが確信半分の憶測を呟くと、ガレも頷いた。
「ここでなら、もう少し長く遊べるかもしれない……そう思ったテラは“やり過ぎない程度に”この世界に手を出し始めたのでござる」
「な……なんだよ、それ……」
やり過ぎない程度に、すぐに終わってしまわないように、様子を見ながらやり方を変えて。
こちらからしてみれば一歩間違えれば世界が滅ぼされてしまう状況で、自分たちが必死に抗って打開していったというのに。
前々からふざけた態度ではあったが、本当に遊びのつもりだったとわかったカカオの胸中には怒りの炎が渦巻いていた。
「オレ達を……このアラカルティアや他の世界を、なんだと思ってやがる……くそっ、ふざけやがって!」
「カカオ君!」
衝動的に机に叩きつけそうになった右手は、すかさず隣にいたメリーゼの両手が受け止める。
そのままその手をカカオの胸に押し当て、メリーゼは優しく微笑みかける。
「……あなたの手は素敵な作品を作り上げる手なんだから、こんなことで傷つけちゃだめよ」
「メリーゼ……」
ぐ、と口を引き結んだのはシーフォンだった。
以前の彼ならば大好きで追いかけてきたメリーゼが他の男に親しげにしているところを見れば問答無用で引き剥がしただろう。
けれどもカカオとメリーゼの間にあるもの……恋愛感情を抜きにした、心の繋がりの深さや積み重ねてきたものを感じ取ってしまったから。
(……そうか、いきなり現れたのは僕の方だったのか)
そんなしょんぼりした王子の顔で、その場の何人かも何となく彼の心情を察し、ちょっぴり同情した。
「……それで、ガレといったね。君が連れ去られた場所はテラの居城なんだろう? 他に何かわからなかったかい?」
気を取り直して話題を戻したシーフォンに、ガレは大きな猫の手を口元に置いて考え込む。
「むう……周りは真っ暗だったし、ずっと檻の中で行動も制限されていたゆえ……」
「そっか、ガレっち何気にテラに急接近してたことになるんだね」
「空間転移ではどうやって行くのかもわからず……役に立てず申し訳ござらぬ」
猫耳をぺたんと寝かせ、眉根を寄せるガレだったが、
「無事生きてこの話を持ち帰ってくれたんだ。充分だろ」
桁違いのとんでもない奴の所に連れて行かれて、あんなことがあったというのに、またこうして皆と話ができる。
それってすごいことなんだぞ、と頬杖をつきながらデューは笑った。
そうしてその世界を滅ぼすと、英雄が存在する別の世界に目をつけ、同様に壊していった。
過去を弄られてしまっては成す術もなく滅ぼされた世界も多く、自らの力の強大さもあってテラは次第に物足りなさをおぼえ始め……
「そこで、時空の精霊がいて最近英雄が現れたばかりのこのアラカルティアに目をつけた……か?」
ブオルが確信半分の憶測を呟くと、ガレも頷いた。
「ここでなら、もう少し長く遊べるかもしれない……そう思ったテラは“やり過ぎない程度に”この世界に手を出し始めたのでござる」
「な……なんだよ、それ……」
やり過ぎない程度に、すぐに終わってしまわないように、様子を見ながらやり方を変えて。
こちらからしてみれば一歩間違えれば世界が滅ぼされてしまう状況で、自分たちが必死に抗って打開していったというのに。
前々からふざけた態度ではあったが、本当に遊びのつもりだったとわかったカカオの胸中には怒りの炎が渦巻いていた。
「オレ達を……このアラカルティアや他の世界を、なんだと思ってやがる……くそっ、ふざけやがって!」
「カカオ君!」
衝動的に机に叩きつけそうになった右手は、すかさず隣にいたメリーゼの両手が受け止める。
そのままその手をカカオの胸に押し当て、メリーゼは優しく微笑みかける。
「……あなたの手は素敵な作品を作り上げる手なんだから、こんなことで傷つけちゃだめよ」
「メリーゼ……」
ぐ、と口を引き結んだのはシーフォンだった。
以前の彼ならば大好きで追いかけてきたメリーゼが他の男に親しげにしているところを見れば問答無用で引き剥がしただろう。
けれどもカカオとメリーゼの間にあるもの……恋愛感情を抜きにした、心の繋がりの深さや積み重ねてきたものを感じ取ってしまったから。
(……そうか、いきなり現れたのは僕の方だったのか)
そんなしょんぼりした王子の顔で、その場の何人かも何となく彼の心情を察し、ちょっぴり同情した。
「……それで、ガレといったね。君が連れ去られた場所はテラの居城なんだろう? 他に何かわからなかったかい?」
気を取り直して話題を戻したシーフォンに、ガレは大きな猫の手を口元に置いて考え込む。
「むう……周りは真っ暗だったし、ずっと檻の中で行動も制限されていたゆえ……」
「そっか、ガレっち何気にテラに急接近してたことになるんだね」
「空間転移ではどうやって行くのかもわからず……役に立てず申し訳ござらぬ」
猫耳をぺたんと寝かせ、眉根を寄せるガレだったが、
「無事生きてこの話を持ち帰ってくれたんだ。充分だろ」
桁違いのとんでもない奴の所に連れて行かれて、あんなことがあったというのに、またこうして皆と話ができる。
それってすごいことなんだぞ、と頬杖をつきながらデューは笑った。