44~命は続く~
「ガレの奴、気がついたってさ」
カネルからの伝言を仲間に伝えに来たブオルは、そこにいたカカオとメリーゼと共に安堵の顔をした。
「良かった……」
「ガレもみんなも疲れてるだろうし、話すのも出発するのも明日になってからだな」
テラが何を企みいつ仕掛けてくるかわからない今、本当はそんな猶予はないのかもしれないが、ここしばらくの気がかりだったガレの救出に成功したのだ。
ほんの一時でも心と体を休め、切り替える時間は必要だろう……ブオルはここに来る前にデューやミレニア達と話して、そう決めていた。
「じゃあ、今夜はみんなそれぞれ自由時間だな」
「そうね。わたしは近くの森でもう少し鍛錬を……」
「おいおい、お前もちゃんと休めって」
すぐさま剣を取ろうとするメリーゼに、カカオとブオルが顔を引きつらせる。
休もうと言ったそばからこれか、という気持ちと、彼女らしいなと思うのと半々で、複雑な想いの入り混じった笑みだった。
だが、
「……休める時に休む、というのもわかるんですけど……あんなことがあったからか、じっとしていられなくて」
左右で色が違う少女の瞳は、不安に揺らいでいた。
『メリーゼ、また何か良からぬものでも視えたの?』
「いえ……」
父である時精霊に問われ、メリーゼは否定に首を振る。
「具体的に何か視たという訳ではないのですが、妙に胸がざわつくんです。少し体を動かしたら、吹き飛ばせるかなって思って……」
『やれやれ、そういう気晴らしの仕方はダクワーズにそっくりだね』
実際、確実にテラとの直接対決の時は近づいているのだろう。
時空を司るランシッドの影響を一番受けているメリーゼは、もしかすると何らかの気配を感じ取っているのかもしれない。
はあ、とカカオの口から溜息が零れた。
「しかたねーな。だったら明日に影響しない程度に付き合ってやるよ」
「カカオ君……」
「じっとしていられないのは、オレも同じだからな」
ブオルがちらりと視線をやれば、いつもなら真っ先にふたりっきりだなんてとんでもないと首を突っ込んできそうなランシッドが、じっと黙ってふたりを見つめていた。
口出しこそしないが眉間に寄せたシワと尖らせた口が『悔しいけど、こういう時はカカオに任せるのが一番だから』と語っている。
『あんま夜更かししないでよね』
「オレがついてるから大丈夫だって」
そんなやりとりを交わして、カカオとメリーゼは村近くの森へと向かっていった。
若い男女がふたりきりで夜を過ごすというのに、あまりにも色気のないやりとりでブオルは思わず笑ってしまう。
大丈夫だろう、いろんな意味で。
「……頼もしい若人たちですね」
『ああ。二十年前を思い出すよ』
しみじみと語るランシッドにとって、まるで昨日のことのように思い出せる時間。
だが、ブオルにとっては……
「俺が死んだ後の未来、か……」
『ブオル……?』
どうして自分はそんなことを口にしたのだろうか。
己の発言にキョトンとしたブオルは、乾いた笑いでごまかした。
カネルからの伝言を仲間に伝えに来たブオルは、そこにいたカカオとメリーゼと共に安堵の顔をした。
「良かった……」
「ガレもみんなも疲れてるだろうし、話すのも出発するのも明日になってからだな」
テラが何を企みいつ仕掛けてくるかわからない今、本当はそんな猶予はないのかもしれないが、ここしばらくの気がかりだったガレの救出に成功したのだ。
ほんの一時でも心と体を休め、切り替える時間は必要だろう……ブオルはここに来る前にデューやミレニア達と話して、そう決めていた。
「じゃあ、今夜はみんなそれぞれ自由時間だな」
「そうね。わたしは近くの森でもう少し鍛錬を……」
「おいおい、お前もちゃんと休めって」
すぐさま剣を取ろうとするメリーゼに、カカオとブオルが顔を引きつらせる。
休もうと言ったそばからこれか、という気持ちと、彼女らしいなと思うのと半々で、複雑な想いの入り混じった笑みだった。
だが、
「……休める時に休む、というのもわかるんですけど……あんなことがあったからか、じっとしていられなくて」
左右で色が違う少女の瞳は、不安に揺らいでいた。
『メリーゼ、また何か良からぬものでも視えたの?』
「いえ……」
父である時精霊に問われ、メリーゼは否定に首を振る。
「具体的に何か視たという訳ではないのですが、妙に胸がざわつくんです。少し体を動かしたら、吹き飛ばせるかなって思って……」
『やれやれ、そういう気晴らしの仕方はダクワーズにそっくりだね』
実際、確実にテラとの直接対決の時は近づいているのだろう。
時空を司るランシッドの影響を一番受けているメリーゼは、もしかすると何らかの気配を感じ取っているのかもしれない。
はあ、とカカオの口から溜息が零れた。
「しかたねーな。だったら明日に影響しない程度に付き合ってやるよ」
「カカオ君……」
「じっとしていられないのは、オレも同じだからな」
ブオルがちらりと視線をやれば、いつもなら真っ先にふたりっきりだなんてとんでもないと首を突っ込んできそうなランシッドが、じっと黙ってふたりを見つめていた。
口出しこそしないが眉間に寄せたシワと尖らせた口が『悔しいけど、こういう時はカカオに任せるのが一番だから』と語っている。
『あんま夜更かししないでよね』
「オレがついてるから大丈夫だって」
そんなやりとりを交わして、カカオとメリーゼは村近くの森へと向かっていった。
若い男女がふたりきりで夜を過ごすというのに、あまりにも色気のないやりとりでブオルは思わず笑ってしまう。
大丈夫だろう、いろんな意味で。
「……頼もしい若人たちですね」
『ああ。二十年前を思い出すよ』
しみじみと語るランシッドにとって、まるで昨日のことのように思い出せる時間。
だが、ブオルにとっては……
「俺が死んだ後の未来、か……」
『ブオル……?』
どうして自分はそんなことを口にしたのだろうか。
己の発言にキョトンとしたブオルは、乾いた笑いでごまかした。