43~祈りよ、届け~
「やった……!」
並外れた身体能力で暴れまわるガレの動きを完全に止めることに成功して、思わずモカが声をあげた。
「ガレにかけられた術を解呪できるまで、まだ完全に安心はできないけどな」
「頼むよ、クローテ……!」
自らに治癒術をかけ、ようやくダメージから回復したブオルと彼に回復してもらったパンキッドが立ち上がる。
自分たちの役目は、解呪に失敗して拘束が解けてしまった場合に真っ先に襲われるだろうクローテを守ること……いつでも駆けつけられるように身構えた。
「いくぞ、ガレ」
「……」
テラの術により頷いて応えることすら自分の意思でできなくなってしまったガレは、ただじっとクローテを見つめ返す。
「届け、我が祈りよ……邪悪なる穢れを雪ぎ、彼の者に安らぎを!」
頼む、元に戻ってくれ。
そんな悲痛な声が聴こえるような詠唱はいくつもの小さな光を呼び、それらはガレの周りに集まり、彼を優しく包む。
「いけるか……?」
光がおさまった瞬間、ガレが大きく息を吐いた。
「……クローテ、どの……」
「!」
「ガレさんの声が……!」
掠れ気味だが、術によって封じられたガレの声が聴こえて仲間達からざわめきが起こる。
だがかけられた術はもうひとつ……むしろ、そちらが重要で。
「ガレ君、体は……」
「まだ、でござる……」
皆、逃げて……ガレがそう言うと、土人形の腕に亀裂が走る。
「クローテどののお陰で少し効力が弱まったようでござるが……まだ、自由には動けぬ……体が、勝手に……っ」
どうにか抵抗しようとしているのだろうか、錆びついた人形のようにぎこちない動きではあるが、ガレの体は弱まり始めた拘束から抜け出そうとしていた。
やがて、決定的な音を立ててゴーレムの腕が完全に崩壊してしまう。
「テラが、言っていたでござる……今のそれがしの体は、繰り糸のついた人形……この体が無事な限り、それがしの意思とは関係なく……」
「ガレ……何が言いたい」
ガレの言葉に、クローテも、皆も、嫌な予感はしていた。
術と本人の抵抗がぶつかり合っている今、すっかりその動きは鈍くなって。
「もう、誰も傷つけたくない……だから、」
「その先を言ったら絶交だ!」
「にゃっ!?」
予期せぬクローテの返しに、ビクッと猫の尾が跳ねて毛を逆立てた。
「……お前、クローテやオレ達に何をさせようとしてるかわかるか?」
「で、でも、カカオどの、解呪の術が……」
「一度でダメならもう一度! 何度だってやってやるよ!」
「そして一人でダメでもみんながいる。そのための俺達だ」
「パンキッドどの、ブオルどの……」
戸惑うガレの周りに仲間達が集まり、ひとりひとり言葉をかける。
時折襲いくる攻撃はきっちりと防ぎ、かわし、誰も傷つけることがないようにして。
「知ってるでしょう? わたし達、とっても諦めが悪いんです」
「まあ、そうじゃなきゃこんな旅やってないよねー」
「言ったでしょ、誰も死なせないって……貴方も、あたしも、みんな含めてね」
『そもそも未来の君がこの時代で死んだら歴史が変わっちゃうよ。そんな真似させると思う?』
「みんな……」
そして、改めて。
「ガレ、お前はどうしたい?」
「それがしは……」
すう、と息をひとつ吸って。
「生きたい……助けて欲しい、でござる……!」
「ふん、やっと言ったな……馬鹿め」
ぽろぽろと涙を零しながら言うガレに、仲間達はふっと微笑みかけた。
並外れた身体能力で暴れまわるガレの動きを完全に止めることに成功して、思わずモカが声をあげた。
「ガレにかけられた術を解呪できるまで、まだ完全に安心はできないけどな」
「頼むよ、クローテ……!」
自らに治癒術をかけ、ようやくダメージから回復したブオルと彼に回復してもらったパンキッドが立ち上がる。
自分たちの役目は、解呪に失敗して拘束が解けてしまった場合に真っ先に襲われるだろうクローテを守ること……いつでも駆けつけられるように身構えた。
「いくぞ、ガレ」
「……」
テラの術により頷いて応えることすら自分の意思でできなくなってしまったガレは、ただじっとクローテを見つめ返す。
「届け、我が祈りよ……邪悪なる穢れを雪ぎ、彼の者に安らぎを!」
頼む、元に戻ってくれ。
そんな悲痛な声が聴こえるような詠唱はいくつもの小さな光を呼び、それらはガレの周りに集まり、彼を優しく包む。
「いけるか……?」
光がおさまった瞬間、ガレが大きく息を吐いた。
「……クローテ、どの……」
「!」
「ガレさんの声が……!」
掠れ気味だが、術によって封じられたガレの声が聴こえて仲間達からざわめきが起こる。
だがかけられた術はもうひとつ……むしろ、そちらが重要で。
「ガレ君、体は……」
「まだ、でござる……」
皆、逃げて……ガレがそう言うと、土人形の腕に亀裂が走る。
「クローテどののお陰で少し効力が弱まったようでござるが……まだ、自由には動けぬ……体が、勝手に……っ」
どうにか抵抗しようとしているのだろうか、錆びついた人形のようにぎこちない動きではあるが、ガレの体は弱まり始めた拘束から抜け出そうとしていた。
やがて、決定的な音を立ててゴーレムの腕が完全に崩壊してしまう。
「テラが、言っていたでござる……今のそれがしの体は、繰り糸のついた人形……この体が無事な限り、それがしの意思とは関係なく……」
「ガレ……何が言いたい」
ガレの言葉に、クローテも、皆も、嫌な予感はしていた。
術と本人の抵抗がぶつかり合っている今、すっかりその動きは鈍くなって。
「もう、誰も傷つけたくない……だから、」
「その先を言ったら絶交だ!」
「にゃっ!?」
予期せぬクローテの返しに、ビクッと猫の尾が跳ねて毛を逆立てた。
「……お前、クローテやオレ達に何をさせようとしてるかわかるか?」
「で、でも、カカオどの、解呪の術が……」
「一度でダメならもう一度! 何度だってやってやるよ!」
「そして一人でダメでもみんながいる。そのための俺達だ」
「パンキッドどの、ブオルどの……」
戸惑うガレの周りに仲間達が集まり、ひとりひとり言葉をかける。
時折襲いくる攻撃はきっちりと防ぎ、かわし、誰も傷つけることがないようにして。
「知ってるでしょう? わたし達、とっても諦めが悪いんです」
「まあ、そうじゃなきゃこんな旅やってないよねー」
「言ったでしょ、誰も死なせないって……貴方も、あたしも、みんな含めてね」
『そもそも未来の君がこの時代で死んだら歴史が変わっちゃうよ。そんな真似させると思う?』
「みんな……」
そして、改めて。
「ガレ、お前はどうしたい?」
「それがしは……」
すう、と息をひとつ吸って。
「生きたい……助けて欲しい、でござる……!」
「ふん、やっと言ったな……馬鹿め」
ぽろぽろと涙を零しながら言うガレに、仲間達はふっと微笑みかけた。