42~望まぬ戦い~
ガレの武器は大振りなブーメランだが、かといってそれを放るだけではない。
マンジュの里の長にして英雄のイシェルナが仕込んだ格闘術と気功術、それに精霊を身に宿すことができるという聖依獣の血が成せる技か、体内に溜めたマナをブレスとして吐き出したりもできる。
(まさかこんな日が来るなんて思わなかったが、正直、敵として戦うと厄介な相手だな……)
遠近どちらも隙のない相手に、おまけにこちらは万が一のことを考えると全力を出しきれない。
テラはガレに仲間を殺させるつもりで術を施したのだろうし、失敗しても首の術式を解呪できなければガレ自身が……テラにとってはどちらに転んでも良い“捨て駒”だろう。
「クローテ、あの術式はどうにかできないのか!?」
「わからない……声の方はともかく、見たことのない術なんだ……」
「人を操るなんてろくでもない術、古代の禁呪かあいつ自ら編み出したものか、どのみちどマイナーなもんっしょ」
などと話しているとすかさず攻撃が飛んできて中断させられる。
「……解呪とやらをしようにも、まずはあいつの動きを止めなきゃだね。あんま手荒なことはしたくないけど……」
パンキッドは言いながらガレの攻撃をかわし、相手の隙をうかがった。
何せ状況が状況なだけにその隙も作り出すのが難しい……そんなことを考えていると、
「……」
ぐん、と姿勢を低くしたガレが一気に前衛陣の懐に飛び込み、
「――――!」
カカオ達が反応するより早く、雷のブレスを放った。
「うわあっ!」
「くっ……!」
やはり手加減などしてくれるはずもなく、全身を襲う衝撃にばらばらと吹っ飛ばされ、地を転がる。
「大丈夫か!?」
「……あーもう、慣れない考え事なんかしてるから……クローテ! 小難しく考えるのはアンタに任せるよ!」
治癒術をかけようと駆け寄ったクローテに、負傷したパンキッドはそう言い放つ。
「そんなことを言われてもだな……」
「手足と、ついでにお口も塞げばいいのかしら?」
困惑するクローテだったが、杖を手元でくるりと回しながら微笑むアングレーズに目をぱちくりさせる。
「遠慮はいらないわよ。あたし達は“仲間”なんだから……ガレ君だって、それくらい覚悟できてるわ」
仲間。
彼女の言葉にハッとしたクローテの思考が、霧が晴れたように冴えていく。
「わかった。なら協力してもらうぞ、アングレーズ。やって貰うのは『お前だからできること』……わかるな?」
「あら、強引なリードね。そういうの、嫌いじゃないわよ」
アングレーズは頷くと、一旦後方にさがる。
逆にクローテは……基本的に後衛担当の彼にしては珍しく前に出て、体術の体勢をとった。
(クローテ、どの?)
ガレにとってもそれは意外だったようで、一瞬不思議そうな顔をする。
「お前と組手をするのは初めてだったな、ガレ……少し遊んでやる」
色素の薄い睫毛に縁取られた切れ長の青藍を鋭く細め、クローテはにやりと笑う。
「必ず助けてやる」……そんな決意を呟いて。
マンジュの里の長にして英雄のイシェルナが仕込んだ格闘術と気功術、それに精霊を身に宿すことができるという聖依獣の血が成せる技か、体内に溜めたマナをブレスとして吐き出したりもできる。
(まさかこんな日が来るなんて思わなかったが、正直、敵として戦うと厄介な相手だな……)
遠近どちらも隙のない相手に、おまけにこちらは万が一のことを考えると全力を出しきれない。
テラはガレに仲間を殺させるつもりで術を施したのだろうし、失敗しても首の術式を解呪できなければガレ自身が……テラにとってはどちらに転んでも良い“捨て駒”だろう。
「クローテ、あの術式はどうにかできないのか!?」
「わからない……声の方はともかく、見たことのない術なんだ……」
「人を操るなんてろくでもない術、古代の禁呪かあいつ自ら編み出したものか、どのみちどマイナーなもんっしょ」
などと話しているとすかさず攻撃が飛んできて中断させられる。
「……解呪とやらをしようにも、まずはあいつの動きを止めなきゃだね。あんま手荒なことはしたくないけど……」
パンキッドは言いながらガレの攻撃をかわし、相手の隙をうかがった。
何せ状況が状況なだけにその隙も作り出すのが難しい……そんなことを考えていると、
「……」
ぐん、と姿勢を低くしたガレが一気に前衛陣の懐に飛び込み、
「――――!」
カカオ達が反応するより早く、雷のブレスを放った。
「うわあっ!」
「くっ……!」
やはり手加減などしてくれるはずもなく、全身を襲う衝撃にばらばらと吹っ飛ばされ、地を転がる。
「大丈夫か!?」
「……あーもう、慣れない考え事なんかしてるから……クローテ! 小難しく考えるのはアンタに任せるよ!」
治癒術をかけようと駆け寄ったクローテに、負傷したパンキッドはそう言い放つ。
「そんなことを言われてもだな……」
「手足と、ついでにお口も塞げばいいのかしら?」
困惑するクローテだったが、杖を手元でくるりと回しながら微笑むアングレーズに目をぱちくりさせる。
「遠慮はいらないわよ。あたし達は“仲間”なんだから……ガレ君だって、それくらい覚悟できてるわ」
仲間。
彼女の言葉にハッとしたクローテの思考が、霧が晴れたように冴えていく。
「わかった。なら協力してもらうぞ、アングレーズ。やって貰うのは『お前だからできること』……わかるな?」
「あら、強引なリードね。そういうの、嫌いじゃないわよ」
アングレーズは頷くと、一旦後方にさがる。
逆にクローテは……基本的に後衛担当の彼にしては珍しく前に出て、体術の体勢をとった。
(クローテ、どの?)
ガレにとってもそれは意外だったようで、一瞬不思議そうな顔をする。
「お前と組手をするのは初めてだったな、ガレ……少し遊んでやる」
色素の薄い睫毛に縁取られた切れ長の青藍を鋭く細め、クローテはにやりと笑う。
「必ず助けてやる」……そんな決意を呟いて。