41~シブースト村のアイドル~
カカオ達は小さな学校の応接室に通された。
廊下にはミレニアや豪腕の焔を描いたのだろう生徒たちの絵が貼り出されており、そのどれもが笑顔でいっぱいであたたかい雰囲気に溢れている。
「慕われているんですね」
「ふふん、シブースト村のアイドルじゃからのう」
臆面もなく言い放つミレニアに「自分で言うのか……」と何人かの心の声がハモった。
「んで、こんな所までぞろぞろと観光ツアーには見えんが……何かあったのか?」
『ああ。話せば長くなるんだけどね……』
ランシッドは皆を代表してミレニアに事情を話した。
「うーーーーむ……」
しばらく黙って聞いていた彼女は腕組みをし、天井を仰ぐ。
「妙な事件が起きとるな、とは思っとった。消えたはずの“総てに餓えし者”の眷属が現れたという噂はこの村にも届いとるからのう」
『ま、この村を襲っても無駄だがな!』
「これ焔、そうやってフラグを立てるでない」
確かに火の大精霊を共にする英雄のミレニアがいれば災厄の眷属も倒せるが、村を守りながらと言うと一人ではできることに限界がある。
そんなことは起きなければ、その方がいいに越したことはないのだが……
「た、大変よ、ミレニア姉さん!」
「どうした、シナモン?」
ロングスカートにピンクのエプロンを揺らしながら、赤みがかった茶髪の女性が騒々しく駆け込んでくる。
嫌な予感というのは、当たらなくて欲しい時に当たるものだ……クローテの長い耳が、外の騒ぎをいち早くキャッチしてぴくりと動く。
「クローテ、まさか今……」
「そのまさかだ。村が魔物に襲われている」
言うが早いかミレニアとカカオ達はガタガタと立ち上がり、すぐさま外へ飛び出した。
「皆の避難は!?」
「大丈夫だ、みんな建物内に逃げた!」
そう答えたのはシナモンと呼ばれた女性と同じ髪や目の色をした、騎士の青年。
ぐるりと己を取り囲む黒い魔物達から決して視線は外さず、いつでも対応できるように剣を構えている。
「カネル、こやつらには……」
「知ってるよ。昔“おめんマン”……グラッセさんが戦ってるのを見てたからな」
この魔物に通常の攻撃は効かない。
カネルの腕には既に、名工の腕輪が煌めいていた。
「何体かは倒せたけど……やっぱ、あのひとみたいにうまくはやれねーな……」
「充分じゃよ。あとはわしらに任せておれ」
数での不利がある中で村人を守りながら奮戦した青年の体はあちこちに傷を負っており、ミレニアはすぐに彼を下がらせる。
後方には先程の門番も、既に負傷して動けずにいた。
「回復します。動かないでください」
「おう、わりーな……新米騎士か? ってその耳と尻尾……」
治癒術を施しに歩み寄ったクローテの容姿に気づいたカネルだったが、
「話は後ほど……今はこの村を守らねばなりません」
「ああ、そうだな」
それ以上は何も言わず、目の前の敵に意識を向けた。
廊下にはミレニアや豪腕の焔を描いたのだろう生徒たちの絵が貼り出されており、そのどれもが笑顔でいっぱいであたたかい雰囲気に溢れている。
「慕われているんですね」
「ふふん、シブースト村のアイドルじゃからのう」
臆面もなく言い放つミレニアに「自分で言うのか……」と何人かの心の声がハモった。
「んで、こんな所までぞろぞろと観光ツアーには見えんが……何かあったのか?」
『ああ。話せば長くなるんだけどね……』
ランシッドは皆を代表してミレニアに事情を話した。
「うーーーーむ……」
しばらく黙って聞いていた彼女は腕組みをし、天井を仰ぐ。
「妙な事件が起きとるな、とは思っとった。消えたはずの“総てに餓えし者”の眷属が現れたという噂はこの村にも届いとるからのう」
『ま、この村を襲っても無駄だがな!』
「これ焔、そうやってフラグを立てるでない」
確かに火の大精霊を共にする英雄のミレニアがいれば災厄の眷属も倒せるが、村を守りながらと言うと一人ではできることに限界がある。
そんなことは起きなければ、その方がいいに越したことはないのだが……
「た、大変よ、ミレニア姉さん!」
「どうした、シナモン?」
ロングスカートにピンクのエプロンを揺らしながら、赤みがかった茶髪の女性が騒々しく駆け込んでくる。
嫌な予感というのは、当たらなくて欲しい時に当たるものだ……クローテの長い耳が、外の騒ぎをいち早くキャッチしてぴくりと動く。
「クローテ、まさか今……」
「そのまさかだ。村が魔物に襲われている」
言うが早いかミレニアとカカオ達はガタガタと立ち上がり、すぐさま外へ飛び出した。
「皆の避難は!?」
「大丈夫だ、みんな建物内に逃げた!」
そう答えたのはシナモンと呼ばれた女性と同じ髪や目の色をした、騎士の青年。
ぐるりと己を取り囲む黒い魔物達から決して視線は外さず、いつでも対応できるように剣を構えている。
「カネル、こやつらには……」
「知ってるよ。昔“おめんマン”……グラッセさんが戦ってるのを見てたからな」
この魔物に通常の攻撃は効かない。
カネルの腕には既に、名工の腕輪が煌めいていた。
「何体かは倒せたけど……やっぱ、あのひとみたいにうまくはやれねーな……」
「充分じゃよ。あとはわしらに任せておれ」
数での不利がある中で村人を守りながら奮戦した青年の体はあちこちに傷を負っており、ミレニアはすぐに彼を下がらせる。
後方には先程の門番も、既に負傷して動けずにいた。
「回復します。動かないでください」
「おう、わりーな……新米騎士か? ってその耳と尻尾……」
治癒術を施しに歩み寄ったクローテの容姿に気づいたカネルだったが、
「話は後ほど……今はこの村を守らねばなりません」
「ああ、そうだな」
それ以上は何も言わず、目の前の敵に意識を向けた。