41~シブースト村のアイドル~
小さな、のどかな、穏やかな村。
中央大陸グランマニエの西側にひっそりと存在するシブースト村は、ゆるやかな時の流れが心地よい場所である。
「ここがシブースト村か……」
「のーんびりした、なにもないトコだよ。奥の大きな建物……学校にママがいるんだ」
過去で聖依獣の隠れ里を救ってきたカカオ達は、現代に戻る時にそのまま近くのシブースト村の入口前……人目を避け、少しだけ離れた場所に転移した。
二十年前の英雄の一人でありモカの母親、ミレニアに会うために。
(ガレのこと、テラの動き……気になることは多いけど、オレ達はオレ達のできることを……)
この旅の中でまだ会っていない英雄であるミレニアが次に狙われる可能性は高いが、カレンズ村のようなパターンもある。
『空振りになっても、俺の力で彼女を時空干渉から守れるからね……来て損はないはずだ。少なくとも、個人を直接狙われることはなくなる』
これまでの時空干渉の被害者たちは、時空の精霊の力で守られてこれ以上干渉を受けないようになっている。
ただし……
「個人を直接……じゃあ、間接的には防げないってこと?」
アングレーズの問いに、ランシッドはぐっと一度言葉を止めた。
『まあ……例えば今回の聖依獣の隠れ里みたいに世界全体とか、そういう広い範囲に影響が出るとこまでいくとね』
「あー、そうなるとキリがないねぇ……おじちゃんのチカラも気休めかぁ」
『て、手厳しいなぁ……これでも数少ない、こちらから先に打てる手なんだけど……』
バッサリしたモカの意見に顔を引き攣らせながら、時空の精霊は『さっさと行くよ』と促した。
と、
「おんやぁ、モカちゃんじゃないかい?」
「ホントだ、久し振りだなあ」
村の入口で門番の騎士がふたり、モカの姿に気付いて声をかけてきた。
「そっちはお友達かい? なんだか二十年前を思い出すねぇ」
「そうそう、あの時はミレニアちゃんが彼氏連れて来たーって」
「あはは……ねぇ、ママいる?」
「おう、いるよ。いつもどおり学校に」
「ありがと!」
門番に礼を言うと「こっちだよ」と仲間に示し、足早に歩き出すモカ。
「モカちゃん、人気者ねぇ」
「ママがこの村のアイドルみたいなもんだからね。アイドルで、ヒーロー? 世界を救った英雄ってのとは別でさ」
言いながら村を進んでいくと、広い庭とそこで遊ぶ元気な子供たちの姿。
「ここは昔は孤児院だったんだって。でも、災厄の眷属もいない今、孤児もいなくなったからそのまま学校になったんだ」
きゃあきゃあと楽しげな声、輝く瑞々しい笑顔がこの学校の有り様をあらわしているようだった。
「元気なチビどもだねぇ」
「本当、こっちまで笑顔になっちゃいます」
パンキッドとメリーゼも互いに見合わせ、穏やかに表情を緩める。
ガレのことがあってから萎み気味だった一行だが、子供たちの明るさに癒され、少しだけ元気をもらった。
『……この子達が生きる世界を、未来を守るためにも』
「ええ。ヘコんでばかりじゃいられませんね」
自分の後ろには、彼らの未来がある。
ランシッドとブオルがそう言うと、他の仲間たちも顔つきを変えた。
中央大陸グランマニエの西側にひっそりと存在するシブースト村は、ゆるやかな時の流れが心地よい場所である。
「ここがシブースト村か……」
「のーんびりした、なにもないトコだよ。奥の大きな建物……学校にママがいるんだ」
過去で聖依獣の隠れ里を救ってきたカカオ達は、現代に戻る時にそのまま近くのシブースト村の入口前……人目を避け、少しだけ離れた場所に転移した。
二十年前の英雄の一人でありモカの母親、ミレニアに会うために。
(ガレのこと、テラの動き……気になることは多いけど、オレ達はオレ達のできることを……)
この旅の中でまだ会っていない英雄であるミレニアが次に狙われる可能性は高いが、カレンズ村のようなパターンもある。
『空振りになっても、俺の力で彼女を時空干渉から守れるからね……来て損はないはずだ。少なくとも、個人を直接狙われることはなくなる』
これまでの時空干渉の被害者たちは、時空の精霊の力で守られてこれ以上干渉を受けないようになっている。
ただし……
「個人を直接……じゃあ、間接的には防げないってこと?」
アングレーズの問いに、ランシッドはぐっと一度言葉を止めた。
『まあ……例えば今回の聖依獣の隠れ里みたいに世界全体とか、そういう広い範囲に影響が出るとこまでいくとね』
「あー、そうなるとキリがないねぇ……おじちゃんのチカラも気休めかぁ」
『て、手厳しいなぁ……これでも数少ない、こちらから先に打てる手なんだけど……』
バッサリしたモカの意見に顔を引き攣らせながら、時空の精霊は『さっさと行くよ』と促した。
と、
「おんやぁ、モカちゃんじゃないかい?」
「ホントだ、久し振りだなあ」
村の入口で門番の騎士がふたり、モカの姿に気付いて声をかけてきた。
「そっちはお友達かい? なんだか二十年前を思い出すねぇ」
「そうそう、あの時はミレニアちゃんが彼氏連れて来たーって」
「あはは……ねぇ、ママいる?」
「おう、いるよ。いつもどおり学校に」
「ありがと!」
門番に礼を言うと「こっちだよ」と仲間に示し、足早に歩き出すモカ。
「モカちゃん、人気者ねぇ」
「ママがこの村のアイドルみたいなもんだからね。アイドルで、ヒーロー? 世界を救った英雄ってのとは別でさ」
言いながら村を進んでいくと、広い庭とそこで遊ぶ元気な子供たちの姿。
「ここは昔は孤児院だったんだって。でも、災厄の眷属もいない今、孤児もいなくなったからそのまま学校になったんだ」
きゃあきゃあと楽しげな声、輝く瑞々しい笑顔がこの学校の有り様をあらわしているようだった。
「元気なチビどもだねぇ」
「本当、こっちまで笑顔になっちゃいます」
パンキッドとメリーゼも互いに見合わせ、穏やかに表情を緩める。
ガレのことがあってから萎み気味だった一行だが、子供たちの明るさに癒され、少しだけ元気をもらった。
『……この子達が生きる世界を、未来を守るためにも』
「ええ。ヘコんでばかりじゃいられませんね」
自分の後ろには、彼らの未来がある。
ランシッドとブオルがそう言うと、他の仲間たちも顔つきを変えた。