40~喪失と、怒りと~(スキットなし)
時は少し遡って、魔物に襲われた聖依獣の隠れ里。
「我が槌は焔、万物を焼き尽くす浄化の紅!」
「ひとたび振るえば骨一欠片も現世に遺さず!」
「「消し去れッ!」」
モカとアングレーズの強力な複合術による火炎が魔物の密集する一帯を襲う。
黒い異形……“総てに餓えし者”の眷属達は一瞬の断末魔を残して、炎の中に消えていった。
「どんなもんだい!」
「さあ、早く逃げて!」
「は……はいっ」
アングレーズに促されて聖依獣の少女が逃げようとした先には、もう一体の魔物が回り込むようにして現れる。
「きゃあああ!」
「させぬでござるっ!」
すかさずガレが投げたブーメランが魔物の胴に突き刺さり、動きを止めた。
「遠距離攻撃ならそれがしもできるでござるよ!」
「上出来だ、ガレ!」
少女の避難を横目に見届けながら、クローテが周辺のマナを集める。
「駆け抜けるは疾風の獣、鋭き牙で獲物を切り裂け!」
彼の指先で緑の光が弾けると、巻き起こる風が魔物を四方八方から斬りつける。
ズタズタになった魔物が呻きながら消滅すると、刺さっていたブーメランがカランと落ちた。
「今ので最後かしら?」
「住民の避難も済んだようだな」
辺りを見回せば逃げ遅れた住民は先程の少女で最後のようで、魔物の気配も消え去った。
武器を拾い上げたガレが溜息を吐いた、その瞬間。
ぞくり。
背筋を駆け上がる悪寒が彼の尻尾の毛を逆立てた。
「な、に……」
「ガレっち?」
「皆、逃げるでござるっ!」
振り向きざまに叫んだ迫力に圧されて、仲間たちが身構える。
空間に亀裂が走り、ガラスが割れたようにボロボロと崩れ落ちるとその隙間からぬるっと現れるひとりの女性。
道化師のような奇抜な格好をしており、片方の白目が黒く染まった特徴的な姿はガレとクローテにとって忘れられないものであった。
「お前、は……」
「お久しぶりね、未来の英雄サン達」
クローテの長い、ウサギのような獣耳が恐怖に震えて下を向く。
かつての戦闘で恐怖を刻みつけられた彼の身体は、金縛りにあったように動けなかった。
「……テ、ラ……」
「えっ……」
「こ、こいつが!?」
アングレーズとモカが驚いてテラを見る。
「ここまでヤラれなかったのは大したものだわ。少し甘く見過ぎてたみたいね……」
たった一言発しただけで本能が訴えてくる危険な気配。
これまで戦ってきた相手の誰よりも……今頃聖地でカカオ達と戦闘しているだろう刺客など、比ぶべくもないことは一目でわかった。
身を硬くする彼らを一瞥すると、テラはすうっと目を細め、爬虫類を連想させる笑みを浮かべる。
「ふふ、安心して。今回のゲームはアナタ達の勝ちでいいわ。今日は“オモチャ”を回収しに来たの。それだけよ☆」
テラの視線は、首筋を押さえて睨みつけるガレへゆっくりと向けられた。
「我が槌は焔、万物を焼き尽くす浄化の紅!」
「ひとたび振るえば骨一欠片も現世に遺さず!」
「「消し去れッ!」」
モカとアングレーズの強力な複合術による火炎が魔物の密集する一帯を襲う。
黒い異形……“総てに餓えし者”の眷属達は一瞬の断末魔を残して、炎の中に消えていった。
「どんなもんだい!」
「さあ、早く逃げて!」
「は……はいっ」
アングレーズに促されて聖依獣の少女が逃げようとした先には、もう一体の魔物が回り込むようにして現れる。
「きゃあああ!」
「させぬでござるっ!」
すかさずガレが投げたブーメランが魔物の胴に突き刺さり、動きを止めた。
「遠距離攻撃ならそれがしもできるでござるよ!」
「上出来だ、ガレ!」
少女の避難を横目に見届けながら、クローテが周辺のマナを集める。
「駆け抜けるは疾風の獣、鋭き牙で獲物を切り裂け!」
彼の指先で緑の光が弾けると、巻き起こる風が魔物を四方八方から斬りつける。
ズタズタになった魔物が呻きながら消滅すると、刺さっていたブーメランがカランと落ちた。
「今ので最後かしら?」
「住民の避難も済んだようだな」
辺りを見回せば逃げ遅れた住民は先程の少女で最後のようで、魔物の気配も消え去った。
武器を拾い上げたガレが溜息を吐いた、その瞬間。
ぞくり。
背筋を駆け上がる悪寒が彼の尻尾の毛を逆立てた。
「な、に……」
「ガレっち?」
「皆、逃げるでござるっ!」
振り向きざまに叫んだ迫力に圧されて、仲間たちが身構える。
空間に亀裂が走り、ガラスが割れたようにボロボロと崩れ落ちるとその隙間からぬるっと現れるひとりの女性。
道化師のような奇抜な格好をしており、片方の白目が黒く染まった特徴的な姿はガレとクローテにとって忘れられないものであった。
「お前、は……」
「お久しぶりね、未来の英雄サン達」
クローテの長い、ウサギのような獣耳が恐怖に震えて下を向く。
かつての戦闘で恐怖を刻みつけられた彼の身体は、金縛りにあったように動けなかった。
「……テ、ラ……」
「えっ……」
「こ、こいつが!?」
アングレーズとモカが驚いてテラを見る。
「ここまでヤラれなかったのは大したものだわ。少し甘く見過ぎてたみたいね……」
たった一言発しただけで本能が訴えてくる危険な気配。
これまで戦ってきた相手の誰よりも……今頃聖地でカカオ達と戦闘しているだろう刺客など、比ぶべくもないことは一目でわかった。
身を硬くする彼らを一瞥すると、テラはすうっと目を細め、爬虫類を連想させる笑みを浮かべる。
「ふふ、安心して。今回のゲームはアナタ達の勝ちでいいわ。今日は“オモチャ”を回収しに来たの。それだけよ☆」
テラの視線は、首筋を押さえて睨みつけるガレへゆっくりと向けられた。