40~喪失と、怒りと~(スキットなし)

 世界を守る結界の巫女カミベルと、聖依獣の隠れ里。
 時空干渉により狙われたそれらを守るため、カカオ達は二手に分かれた。
 そして苦戦しながらもテラの刺客達を倒したカカオ、メリーゼ、ブオル、パンキッドの四人とランシッドは残るメンバーが奮闘しているであろう里へ向かうため、聖地を出た。

 そこは、全てが終わったあとだった。

 里を襲った魔物……災厄の眷属は浄化され消滅したらしく、張り詰めた戦いの空気の余韻を残すのみ。
 立ち尽くす仲間達は腕を武器の重みのままにだらりと下げ、顔は強張っていて。

「ど、どうしたんだよ……もう里は安全なんだよな?」
「クローテ、アングレーズ、モカ……あれ、ガレのヤツがいないぞ?」

 いればすぐわかりそうな目立つ風貌の青年の姿が見当たらない。

 どこか別のところで戦闘があるのだろうか、それにしては他の仲間達が駆けつけようとしないのが不自然だ。
 そう思ったところで、アングレーズが重たくなった口を開いた。

「……聖依獣のみんなは無事よ。怪我人はクローテ君が治療したし、魔物もみんな倒して、里はもう安全」

 なら、どうして彼女達の表情は暗く沈んでいるのだろう……その答えは、クローテからもたらされた。

「ガレが……ガレの奴が、テラにっ……」

 切れ長の青藍の目から、ぽろ、と溢れる透明な雫。
 
 いつも背筋を伸ばし、強がってでもその姿勢を崩さないクローテが、今にも崩れ落ちそうな弱々しさを見せているのはただごとではない。

「ガレに、何があったんだよ……何が起きたんだよ、なあっ」

 衝動にまかせて思わず彼の肩を掴んでしまったカカオだったが、睨む気力もなく項垂れるクローテに気づくとそっと手を放した。

 心臓が早鐘を打つ感覚が全身を駆け巡り、不安を募らせる。

『……場所を変えよう。そこで話してくれないか?』

 他の仲間よりは落ち着いた時精霊の提案にアングレーズが頷く。

「そうね。ここから先はできれば誰にも聞かれない場所の方がいいわ」
『わかった。じゃあ、場所を用意するよ』

 ぽっかりと開いた空間の穴をじっと見つめる彼女の瞳には、この場にはいない青年の背中が映っていた。
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