38~会議室、慌ただしく~
「歴史の改変なんて可能性は山ほどあるし、オレ達はどうしても後手に回りがちだよなあ」
しばらく話を聞いていたカカオが、ふいに口を開く。
彼らの行動は時空干渉が起きてから対処に向かうのが基本形になってしまって、それもたまたま立ち寄った先だからどうにかできたというギリギリさである。
確かにまだカカオ達が会っていない英雄ならもう残り少ないが、カレンズ村の時のような歴史改変、各所で起きている災厄の眷属の出現も対処しなければいけないだろう。
強いて言うならば災厄の眷属の退治はカカオ達以外にも可能だが。
「すごく消極的だけど、後手でも確実に阻止し続けていれば最後には親玉も出てくるんじゃない?」
「それを倒せばいいなんて、簡単に言ってくれるな」
モカの意見に首を左右に振るのはクローテ。
親玉、つまりはテラを倒せれば、確かにそれで終われるのかもしれない。
だが分身ですら今の彼らでまともにやり合えるかもわからないのに、もし本体が現れたら……彼の脳裏には最悪の結末しか浮かばなかった。
と、
「……確実に阻止しながら、親玉を引っ張り出すまでに倒せるだけの力をつける?」
リュナンが零した一言に、ランシッドからはため息が漏れる。
『今考えられるのはやっぱそれかあ……デューが勝てない相手じゃ、それが一番現実的だよね』
「ですよねえ。あのひとが勝てない相手とか、正直戦いたくありませんけど」
たはは、と苦笑いでリュナンも頷いた。
そんな彼らのやりとりを眺めて、父に寄せられた周りの信頼を再認識するモカ。
そんな時だった。
『英雄……英雄達よ……』
ふいに頭の中に響いた声。
カカオ達が思わず一斉に立ち上がり、それが一同に起きていることだとわかる。
「な、なんだあ!?」
「頭の中に声が……!」
しかし彼らとは違い、トランシュやモラセス達は僅かに驚いた顔をしながらも慌てる様子はない。
それどころか、
「この声、懐かしいな……いつ以来でしょうね」
「ふん……健在のようだな、毛玉爺」
落ち着き払ってこんなことを言っているのである。
(む? そういえばこの声、それがしにも覚えが……?)
ガレが首を傾げた時、謎の声は再び発せられる。
『けっ、おめーもまだくたばっちゃいねーよーだな髭爺! らぶりーもふもふむーちゃんは今日も元気じゃよ!』
「ら、らぶりーもふもふむーちゃん……?」
気になるワードにメリーゼが反応する中で声の主は一度大きく咳払いをし、
『……あー、今回はむーちゃんモラちゃんの愉快な寸劇を披露しに呼びかけた訳ではないのじゃよ』
「それくらいわかっている。わざわざ遠方から、俺だけでなく皆に聴こえるように声を伝えてきたのだ……よほどの用だろう、ムース?」
モラセスが天井に向けて発した“ムース”という名前を聞いた瞬間、ガレの中でカチリと音を立てて記憶が繋がった。
「あーっ!」
「なんだ、うるさいぞガレ」
「聖依獣の長でござるよ、クローテどの! 幼い頃ちちうえに連れられて会ったことがあるのでござる! もっふもふでござった!」
聖依獣と人間の間に生まれたガレには僅かに覚えがあったらしく、同じく半分その血が流れるクローテに言うが、彼のほうはわからなかったようで首を傾げた。
するとムースは『そうじゃよ』と肯定し、ひと呼吸おく。
『そんじゃー、わしが何者かわかったところで本題に入るかのー……おぬしらが絶賛頭を悩ませとる、時空干渉についてじゃ』
少しトーンを下げた声で発せられた長の言葉に、会議室の空気が再び引き締まった。
しばらく話を聞いていたカカオが、ふいに口を開く。
彼らの行動は時空干渉が起きてから対処に向かうのが基本形になってしまって、それもたまたま立ち寄った先だからどうにかできたというギリギリさである。
確かにまだカカオ達が会っていない英雄ならもう残り少ないが、カレンズ村の時のような歴史改変、各所で起きている災厄の眷属の出現も対処しなければいけないだろう。
強いて言うならば災厄の眷属の退治はカカオ達以外にも可能だが。
「すごく消極的だけど、後手でも確実に阻止し続けていれば最後には親玉も出てくるんじゃない?」
「それを倒せばいいなんて、簡単に言ってくれるな」
モカの意見に首を左右に振るのはクローテ。
親玉、つまりはテラを倒せれば、確かにそれで終われるのかもしれない。
だが分身ですら今の彼らでまともにやり合えるかもわからないのに、もし本体が現れたら……彼の脳裏には最悪の結末しか浮かばなかった。
と、
「……確実に阻止しながら、親玉を引っ張り出すまでに倒せるだけの力をつける?」
リュナンが零した一言に、ランシッドからはため息が漏れる。
『今考えられるのはやっぱそれかあ……デューが勝てない相手じゃ、それが一番現実的だよね』
「ですよねえ。あのひとが勝てない相手とか、正直戦いたくありませんけど」
たはは、と苦笑いでリュナンも頷いた。
そんな彼らのやりとりを眺めて、父に寄せられた周りの信頼を再認識するモカ。
そんな時だった。
『英雄……英雄達よ……』
ふいに頭の中に響いた声。
カカオ達が思わず一斉に立ち上がり、それが一同に起きていることだとわかる。
「な、なんだあ!?」
「頭の中に声が……!」
しかし彼らとは違い、トランシュやモラセス達は僅かに驚いた顔をしながらも慌てる様子はない。
それどころか、
「この声、懐かしいな……いつ以来でしょうね」
「ふん……健在のようだな、毛玉爺」
落ち着き払ってこんなことを言っているのである。
(む? そういえばこの声、それがしにも覚えが……?)
ガレが首を傾げた時、謎の声は再び発せられる。
『けっ、おめーもまだくたばっちゃいねーよーだな髭爺! らぶりーもふもふむーちゃんは今日も元気じゃよ!』
「ら、らぶりーもふもふむーちゃん……?」
気になるワードにメリーゼが反応する中で声の主は一度大きく咳払いをし、
『……あー、今回はむーちゃんモラちゃんの愉快な寸劇を披露しに呼びかけた訳ではないのじゃよ』
「それくらいわかっている。わざわざ遠方から、俺だけでなく皆に聴こえるように声を伝えてきたのだ……よほどの用だろう、ムース?」
モラセスが天井に向けて発した“ムース”という名前を聞いた瞬間、ガレの中でカチリと音を立てて記憶が繋がった。
「あーっ!」
「なんだ、うるさいぞガレ」
「聖依獣の長でござるよ、クローテどの! 幼い頃ちちうえに連れられて会ったことがあるのでござる! もっふもふでござった!」
聖依獣と人間の間に生まれたガレには僅かに覚えがあったらしく、同じく半分その血が流れるクローテに言うが、彼のほうはわからなかったようで首を傾げた。
するとムースは『そうじゃよ』と肯定し、ひと呼吸おく。
『そんじゃー、わしが何者かわかったところで本題に入るかのー……おぬしらが絶賛頭を悩ませとる、時空干渉についてじゃ』
少しトーンを下げた声で発せられた長の言葉に、会議室の空気が再び引き締まった。