37~信頼の合図~
ひとりでは歯が立たなかった相手も仲間がいれば互いを補って、敵ではなくなる。
刺客を倒したガレは、改めてモカを振り返った。
「……酷い傷でござるな。じきにクローテどのも他の皆もこちらへ駆けつけるでござろう。それまではそれがしの応急処置でガマンを……」
「ありがと。うう、安心したらあちこち痛くなってきた……」
大きな猫のような手から発せられる気功の癒しが、じんわりとしたあたたかさを伴って痛みを取り除いていく。
その感覚に安堵して緩んだのか、モカの口が動く。
「……もしかしたらボクは、ここで死んでたのかもね。アイツが言った通り、人知れず惨めに……」
情けないね、と引き攣った笑みを浮かべる彼女に、ガレは首を横に振った。
「もう誰も死なせない。それがし達はそのために未来から来た……確かにたまたまそれがしが近くにいたことが、今回の結末を変えた要因のひとつかもしれない。けど……」
ガレはモカから視線を外し、さらに下の地面へと向ける。
誘導されて彼女も下を見ると、そこには真新しい焦げ跡が残っていた。
「未来を切り拓いたのは、諦めなかったモカどのが放った先程の雷……それはかつての戦いで、それがしのちちうえがモカどののちちうえに送ったのと同じ、居場所を知らせる“合図”でござった」
だからすぐわかったのでござるよ、とガレは笑う。
「たまたま今回はモカどのが苦手とする戦いでござったが、逆に言えば皆にも、それがしにだって同じようなことは起こり得る。その時に誰かの苦手を補えるのは、モカどのかもしれぬ」
「はは、ガレっちは優しいねえ」
「にゃはは……それがし、小難しい魔術はからっきしでござるゆえ、モカどのには既に補われているのでござるよ」
けらけらと考えなさそうにしてはいるが、この男は無邪気さの奥で意外とよく周りを見ている。
耳障りが良いだけの、その場しのぎの慰めなど吐かないだろう。
「ガレっちがそう言うなら、ちょっと信じてもいい……かな」
嘘のない言葉に、少女は少しだけ救われた心地になった。
「む、みんなも来たみたいでござるな」
足音を察知したのか、ぴこ、と青年の猫耳が動く。
五感の優れたガレには、近づく気配が敵のものではないこともわかっているようだ。
「皆、雷を辿ってここまで来たのでござろう。モカどののお陰でござる」
「ボクの、おかげ……?」
モカがその言葉を反芻していると、彼女の耳にも複数の足音が届く。
ほどなくして集まった仲間達の顔を見て、モカは今度こそ心底ほっとしたのだった。
刺客を倒したガレは、改めてモカを振り返った。
「……酷い傷でござるな。じきにクローテどのも他の皆もこちらへ駆けつけるでござろう。それまではそれがしの応急処置でガマンを……」
「ありがと。うう、安心したらあちこち痛くなってきた……」
大きな猫のような手から発せられる気功の癒しが、じんわりとしたあたたかさを伴って痛みを取り除いていく。
その感覚に安堵して緩んだのか、モカの口が動く。
「……もしかしたらボクは、ここで死んでたのかもね。アイツが言った通り、人知れず惨めに……」
情けないね、と引き攣った笑みを浮かべる彼女に、ガレは首を横に振った。
「もう誰も死なせない。それがし達はそのために未来から来た……確かにたまたまそれがしが近くにいたことが、今回の結末を変えた要因のひとつかもしれない。けど……」
ガレはモカから視線を外し、さらに下の地面へと向ける。
誘導されて彼女も下を見ると、そこには真新しい焦げ跡が残っていた。
「未来を切り拓いたのは、諦めなかったモカどのが放った先程の雷……それはかつての戦いで、それがしのちちうえがモカどののちちうえに送ったのと同じ、居場所を知らせる“合図”でござった」
だからすぐわかったのでござるよ、とガレは笑う。
「たまたま今回はモカどのが苦手とする戦いでござったが、逆に言えば皆にも、それがしにだって同じようなことは起こり得る。その時に誰かの苦手を補えるのは、モカどのかもしれぬ」
「はは、ガレっちは優しいねえ」
「にゃはは……それがし、小難しい魔術はからっきしでござるゆえ、モカどのには既に補われているのでござるよ」
けらけらと考えなさそうにしてはいるが、この男は無邪気さの奥で意外とよく周りを見ている。
耳障りが良いだけの、その場しのぎの慰めなど吐かないだろう。
「ガレっちがそう言うなら、ちょっと信じてもいい……かな」
嘘のない言葉に、少女は少しだけ救われた心地になった。
「む、みんなも来たみたいでござるな」
足音を察知したのか、ぴこ、と青年の猫耳が動く。
五感の優れたガレには、近づく気配が敵のものではないこともわかっているようだ。
「皆、雷を辿ってここまで来たのでござろう。モカどののお陰でござる」
「ボクの、おかげ……?」
モカがその言葉を反芻していると、彼女の耳にも複数の足音が届く。
ほどなくして集まった仲間達の顔を見て、モカは今度こそ心底ほっとしたのだった。