36~王都の再会~
「やあ、待たせてすまなかったね」
英雄王ランスロットことトランシュに呼ばれて会議室に集まった一行は、順番に王の視線を受ける。
トランシュはひとり、ひとりと顔を確認して「……まだ追いついていないようだね」と呟いた。
「追いついていない?」
「ああ、こちらの話だよ。それより、こちらもマンジュからある程度の報告は受けているけど……詳しく話して貰おうか」
カカオ達は今回世界を回って、各地で会った英雄達とそこで起きた事件、過去の次は未来からやって来た仲間がいること、彼らが見た“歪められた未来”……そして、それをもたらしたストーリーテラーこと“テラ”を名乗る人物について報告した。
道化師のような女性の姿をしたテラは、分身に過ぎないという体で二十年前の英雄にして騎士団長のデューと互角かそれ以上の力を有しているらしい……その力を目の当たりにしたクローテとガレの言葉で、さすがのトランシュも険しい表情を見せた。
「そう、か……デュランでも厳しい相手か」
「はい……私はほとんど何もできませんでした」
「相手が悪かった。生きていてくれるだけで充分だよ、ふたりとも」
君たちが倒れたら哀しむ者がいるからね、とトランシュ。
クローテの隣ではスタードが、沈痛な面持ちで彼を見つめていた。
「……なんか、俺の知らない間にいろんなことが起きてるみたいですね」
リュナンがしみじみと呟くと、トランシュはそちらに顔を向ける。
「僕だって消滅しかけたし、君も他人事じゃあないよ。狙われてるうちの一人なんだからね」
「はあ、そう言われても実感がいまひとつ……」
「そんな事はねえだろ。オグマだって消えかけたんだ、その時に何かしら影響がなかったのか?」
ガトーに言われて少し考え、それでようやく「あ」と声を発したリュナンは己の右手を出し、
「そういや少し前にちょっとの間だけ俺の手が透明になったんですよ。指先だけですぐ元に戻ったし気のせいかと思ったんですけど」
そうそう、こんな感じだった。
そんなことを言ってのけた直後、その手を二度見し、
「き、消えてるーーー俺の手ぇーーーー!」
驚きのあまり立ち上がり、左手で右手首を掴み仰け反って叫んだ。
『あー、はいはい。時空干渉時空干渉』
「そら出番だぞカカオ。いってこい」
「ちょっと扱いが軽すぎやしませんかそこのふたり!?」
リュナンが冷めた対応のランシッドとグラッセに向かって喚いている間に、カカオ達はてきぱきと時空転移の準備を始める。
そしてカカオがリュナンの肩をぽんと叩くと、
「必ず助けるから。待っててくれよな、おじさん」
祖父によく似た笑顔を見せ、そしてすぐに仲間達のもとへ戻った。
ランシッドと共に消える彼らの姿をしばらくぽかーんと見つめていたリュナンだったが、
「……なんか、いつの間にか頼もしくなっちゃって、おじさんびっくりだわ……」
「あの子達も成長しただろう? そうやって私も助けられた」
オグマに微笑まれて、おとなしく着席するのだった。
英雄王ランスロットことトランシュに呼ばれて会議室に集まった一行は、順番に王の視線を受ける。
トランシュはひとり、ひとりと顔を確認して「……まだ追いついていないようだね」と呟いた。
「追いついていない?」
「ああ、こちらの話だよ。それより、こちらもマンジュからある程度の報告は受けているけど……詳しく話して貰おうか」
カカオ達は今回世界を回って、各地で会った英雄達とそこで起きた事件、過去の次は未来からやって来た仲間がいること、彼らが見た“歪められた未来”……そして、それをもたらしたストーリーテラーこと“テラ”を名乗る人物について報告した。
道化師のような女性の姿をしたテラは、分身に過ぎないという体で二十年前の英雄にして騎士団長のデューと互角かそれ以上の力を有しているらしい……その力を目の当たりにしたクローテとガレの言葉で、さすがのトランシュも険しい表情を見せた。
「そう、か……デュランでも厳しい相手か」
「はい……私はほとんど何もできませんでした」
「相手が悪かった。生きていてくれるだけで充分だよ、ふたりとも」
君たちが倒れたら哀しむ者がいるからね、とトランシュ。
クローテの隣ではスタードが、沈痛な面持ちで彼を見つめていた。
「……なんか、俺の知らない間にいろんなことが起きてるみたいですね」
リュナンがしみじみと呟くと、トランシュはそちらに顔を向ける。
「僕だって消滅しかけたし、君も他人事じゃあないよ。狙われてるうちの一人なんだからね」
「はあ、そう言われても実感がいまひとつ……」
「そんな事はねえだろ。オグマだって消えかけたんだ、その時に何かしら影響がなかったのか?」
ガトーに言われて少し考え、それでようやく「あ」と声を発したリュナンは己の右手を出し、
「そういや少し前にちょっとの間だけ俺の手が透明になったんですよ。指先だけですぐ元に戻ったし気のせいかと思ったんですけど」
そうそう、こんな感じだった。
そんなことを言ってのけた直後、その手を二度見し、
「き、消えてるーーー俺の手ぇーーーー!」
驚きのあまり立ち上がり、左手で右手首を掴み仰け反って叫んだ。
『あー、はいはい。時空干渉時空干渉』
「そら出番だぞカカオ。いってこい」
「ちょっと扱いが軽すぎやしませんかそこのふたり!?」
リュナンが冷めた対応のランシッドとグラッセに向かって喚いている間に、カカオ達はてきぱきと時空転移の準備を始める。
そしてカカオがリュナンの肩をぽんと叩くと、
「必ず助けるから。待っててくれよな、おじさん」
祖父によく似た笑顔を見せ、そしてすぐに仲間達のもとへ戻った。
ランシッドと共に消える彼らの姿をしばらくぽかーんと見つめていたリュナンだったが、
「……なんか、いつの間にか頼もしくなっちゃって、おじさんびっくりだわ……」
「あの子達も成長しただろう? そうやって私も助けられた」
オグマに微笑まれて、おとなしく着席するのだった。