36~王都の再会~
気さくで親しみやすいトランシュといえども英雄王と呼ばれるだけあってすぐには会える状況ではなく、カカオ達は一旦城にあるというガトーの工房に移動した。
「すっげえ……城にも自分の工房があるなんて、さすがじいちゃん!」
目を輝かせてきょろきょろ見回すカカオの視界には、滅多に主が現れない部屋とは思えないほど手入れの行き届いた作業場が映る。
「昔モラセスに呼ばれてここで仕事してたからな。二十年前にも来たが」
「それが、この腕輪を作った時……か」
グラッセは言いながら、右の袖口から覗く腕輪に視線を落とした。
カカオ達一行の腕にもそれぞれ煌めいているそれは、精霊との繋がりを助け、大精霊の加護を受けた者でなくても災厄の眷属を浄化する力を得られるものだ。
「そうだ、じいちゃん! じいちゃんの腕輪、使わせてもらってるんだ!」
「ああ、聞いてるよ。少しは役に立ったみたいで何よりだ」
しかしガトーの返しに、いや、と首を左右に振るカカオ。
「少し、なんてもんじゃない。じいちゃんが心をこめてつくりあげた腕輪が、大切な人たちを守れる力をくれるんだ」
「カカオ……」
孫にそう言われれば祖父は思わず涙ぐみそうになるが、慌てて己の頬を叩くと大きく息を吐いた。
「……旅をして、ちいと雰囲気変わったかと思ったけど……根っこはおめえのままだな。安心したぜ」
「へへ、当たり前だろ!」
嬉しそうに笑うカカオの表情は旅に出る前と変わらない、大好きな祖父の背中を追いかける時のものだった。
「なるほど、これがいつもカカオが言ってた“じいちゃん”か……」
「只者じゃない気配を感じる。職人として研ぎ澄まされたものがあるんだろうな」
パンキッドとブオルがそれぞれ感想を述べると、ガトーは二人を振り返る。
「そういや見ねえ顔がいるな。つーか、かなり大所帯になったか?」
「道中いろいろあったからな。異なる時代から来た者、旅の途中で出会った者……こいつらは旅立った当初とは比べ物にならないほどの経験を積んだろう」
ガトーの疑問に答えたのはカカオ達ではなく、工房の出入口に顔を見せた老人……先代の王モラセス。
その後ろには杖を片手に、クローテの祖父スタードの姿もあった。
『スタード様ぁっ!』
「おっと」
まず真っ先に、言葉通り飛んできたのは契約精霊の清き風花。
「モラセス様、スタード!」
「スタードじいちゃん! もう体は大丈夫なのか?」
スタードは以前、城下町に突如現れた“総てに餓えし者”の眷属を浄化するため力を使い果たして眠ってしまっていた。
駆け寄るブオルとカカオ、クローテににっこりと笑顔を見せるスタードは、もうすっかり回復したようだ。
「……なんか、やたらと隙のないじいさん達が来たな」
『そりゃあ、かつての英雄と武闘派王だからねえ』
「いろいろと濃いですよねぇ、この空間……」
唖然とするパンキッドに、時精霊やリュナンもただただ苦笑いするしかなかった。
「すっげえ……城にも自分の工房があるなんて、さすがじいちゃん!」
目を輝かせてきょろきょろ見回すカカオの視界には、滅多に主が現れない部屋とは思えないほど手入れの行き届いた作業場が映る。
「昔モラセスに呼ばれてここで仕事してたからな。二十年前にも来たが」
「それが、この腕輪を作った時……か」
グラッセは言いながら、右の袖口から覗く腕輪に視線を落とした。
カカオ達一行の腕にもそれぞれ煌めいているそれは、精霊との繋がりを助け、大精霊の加護を受けた者でなくても災厄の眷属を浄化する力を得られるものだ。
「そうだ、じいちゃん! じいちゃんの腕輪、使わせてもらってるんだ!」
「ああ、聞いてるよ。少しは役に立ったみたいで何よりだ」
しかしガトーの返しに、いや、と首を左右に振るカカオ。
「少し、なんてもんじゃない。じいちゃんが心をこめてつくりあげた腕輪が、大切な人たちを守れる力をくれるんだ」
「カカオ……」
孫にそう言われれば祖父は思わず涙ぐみそうになるが、慌てて己の頬を叩くと大きく息を吐いた。
「……旅をして、ちいと雰囲気変わったかと思ったけど……根っこはおめえのままだな。安心したぜ」
「へへ、当たり前だろ!」
嬉しそうに笑うカカオの表情は旅に出る前と変わらない、大好きな祖父の背中を追いかける時のものだった。
「なるほど、これがいつもカカオが言ってた“じいちゃん”か……」
「只者じゃない気配を感じる。職人として研ぎ澄まされたものがあるんだろうな」
パンキッドとブオルがそれぞれ感想を述べると、ガトーは二人を振り返る。
「そういや見ねえ顔がいるな。つーか、かなり大所帯になったか?」
「道中いろいろあったからな。異なる時代から来た者、旅の途中で出会った者……こいつらは旅立った当初とは比べ物にならないほどの経験を積んだろう」
ガトーの疑問に答えたのはカカオ達ではなく、工房の出入口に顔を見せた老人……先代の王モラセス。
その後ろには杖を片手に、クローテの祖父スタードの姿もあった。
『スタード様ぁっ!』
「おっと」
まず真っ先に、言葉通り飛んできたのは契約精霊の清き風花。
「モラセス様、スタード!」
「スタードじいちゃん! もう体は大丈夫なのか?」
スタードは以前、城下町に突如現れた“総てに餓えし者”の眷属を浄化するため力を使い果たして眠ってしまっていた。
駆け寄るブオルとカカオ、クローテににっこりと笑顔を見せるスタードは、もうすっかり回復したようだ。
「……なんか、やたらと隙のないじいさん達が来たな」
『そりゃあ、かつての英雄と武闘派王だからねえ』
「いろいろと濃いですよねぇ、この空間……」
唖然とするパンキッドに、時精霊やリュナンもただただ苦笑いするしかなかった。